#1062 新たなギルドバトル特化型ジョブ現る。
「いいぞカイリ、エステル! 完っっっ璧なブロックだ!!!! これで決めるぞ!!」
「『ギルドコネクト』! Bチームはそのまま〈南東の3〉を陥落後、〈ギルバドヨッシャー〉の本拠地へ向かってくださいまし。また、追いかけてくるであろう部隊に気をつけてください。彼らは戻ろうと思えばマス取りしなくても真っ直ぐ本拠地へ向かうことができますわ」
〈エデン〉の本拠地では相変わらず〈竜の箱庭〉を俯瞰するゼフィルスとリーナが指示を出しまくっていた。
グッと握りこぶしを作り「うおっしゃー」とテンションの上がるゼフィルス。仕掛けていた作戦が大成功したのだ。この機を逃すまいと一気に攻めに出る。
ゼフィルスは作戦を立案、リーナが『ギルドコネクト』『ギルドチェーンブックマーク』『投影コネクト』などで指示を出す。
カイリとエステルがタイミングバッチリで6時の方角にマスを敷き分断すると、一度〈中央巨城〉へと戻し1マス隣にズレ、タイミングを計ってもう一度6時の針にマスを敷く。
保護期間は2分で明ける。
一回敷いた程度ではほんのちょっとしか分断出来ないので、横にズレて何度も道を敷くのを繰り返すのだ。
そうすることで「保護期間が明けた、押し通る」「残念、また保護期間だ」という状態を作り、何度も相手の進攻を阻害することが出来る。
〈中央巨城〉の天王山を利用した戦術だ。
天王山を抑えておくとこういう時に非常に便利に使える。
〈ギルバドヨッシャー〉が本拠地へ戻るには一度大きく〈中央巨城〉より北を回らなければならず、しかしそれも別のメンバーがブロックするという状況が出来上がり、主力であるインサー先輩たちを完全に封じ込めていた。
厄介な【道案内人】の分断スキル『道を敷く導きの手』も使えないほど、そこら中を保護期間にしまくっている。
多人数というものを上手く使っていた。
これだから〈クロスキャッスル〉フィールドはやっかいであり、面白いのだ。
十数人という大型戦力を運用し一つのエリアを攻略する際、人数という戦力が固まっているため様々な戦略を練ることが可能。特にどのタイミングでばらけさせるかは、プレイヤーの力量がものを言う。
上手く相手を封じ込めたときは〈ダン活〉でも大いに盛り上がった。上手く相手を封じ込める動画も何本も上がっていてゼフィルスはそれも全て見てものにしていた。
「北東の〈ギルバドヨッシャー〉がBチームを追いかけていますが、うわ、すごいですわね。こうブロックするんですの?」
「一番観客席との間隔が狭まるのが東西南北の巨城地点。ここで保護期間を敷いて客席を繋げるのがテクニックだ。覚えておくと良いぞ。ここで〈中央巨城〉にも繋げるのがポイントだな。天王山も上手く使う」
〈南東の3〉へ向かうBチームを追いかけて〈ギルバドヨッシャー〉のBチームも走ってくるが、それを〈エデン〉が天王山から3時の方角に保護期間を敷き、また分断。
南東エリアの孤立化を実現させてしまう。
「なるほど、これで〈南東の3〉を落とす時間を手に入れましたわ。保護期間が切れる前に落とせれば――そのまま本拠地陥落も夢ではない?」
「おうよ。またAチームに〈南西の0〉の攻撃を指示。同時にいつでも白本拠地に戻れる準備をしておく」
ゼフィルスもまだ気を抜いていない。全力で戦術を展開し、今まではほとんど使ってこなかった天王山の利便性もフルに使って〈ギルバドヨッシャー〉の相手をしていた。それほど〈ギルバドヨッシャー〉が優秀だということだ。
「〈南東の3〉、落ちましたわ! そのままBチーム、〈ギルバドヨッシャー〉の本拠地へ進みます! 追っ手は、まだ遠い? 行けますわ!」
「さて、このままストレートに落とせればいいが、〈ギルバドヨッシャー〉の本拠地に残っている1人が要警戒だな。1人で大人数の攻撃を防ぎ時間を稼ぐ職業っていうのはあったりするからなぁ。俺の予想通りなら、あの職業系が控えているはず」
Bチームの攻撃についに〈ギルバドヨッシャー〉本拠地の近くにある巨城〈南東の3〉が陥落、舞台はそのまま赤本拠地へと移っていく。この状態でもインサー他、〈ギルバドヨッシャー〉のメンバーは追いつけていない。戻るにはもう少し時間が掛かるだろう。
だが、1つだけ懸念点があった。それは〈ギルバドヨッシャー〉の本拠地に残っているメンバーがいること。人数は1人。
僅か1人の本拠地の守り。
普通なら一蹴するような戦力だが、ゼフィルスは知っている。1人で本拠地への攻撃を持ちこたえる職業たちが存在することを。
そして、ゼフィルスの懸念は大当たりした。
「赤本拠地の隣接マス確保! 集まったメンバーが本拠地に攻撃を開始! ですが、これは!? 『状況把握』!」
「!! やっぱり【キーパー】系か!」
ストレートに赤本拠地の隣接マスを確保できたところまではよかったが、やはりゼフィルスの予想通り、本拠地にはとある職業持ちが控えていた。
攻撃がいくつも弾かれ、半分以上が本拠地に届かなかったのだ。
すぐにリーナが看破系スキル『状況把握』を使い相手のスキルを看破する。
〈竜の箱庭〉に現れたのは10もの巨大な手。それが本拠地を守るように展開していた。
そして〈エデン〉上級職の〈四ツリ〉スキルが半分以上10もの巨大な手に弾かれたのである。
「あれはなんですのゼフィルスさん」
「あれは【キーパー】の上級職、【ジャイアントハンドキーパー】だな。下級ユニークスキル『城を守りしキーパー』と上級ユニークスキル『十点ハンド』は相手の攻撃に対し、自陣の本拠地を守るときのみに絶大な効果を発揮する。ギルドバトル専用職業だ」
それは【道案内人】などと同じくギルドバトルでのみ強みの出る、城を守ることに特化した職業だった。
「単純に相手の攻撃を巨大な手を召喚して防ぐというものだが。本拠地を守っているときは術者へのフィードバックダメージをゼロにする他、ステータスを大幅アップ。ユニークスキルによって召喚された十のジャイアントハンドが硬すぎてなかなか突破出来ないという、超やっかいな特性を持つ」
要はむっちゃ硬いキーパーである。
しかし、弱点が無いわけでも無い。というか強い割に15人の攻撃のうち半分近くを本拠地に通してしまっていることからも分かるように、【キーパー】では完全に攻撃を防げないのだ。ここらへんがノーカテゴリーの実力の低さを物語っている。
しかし、ノーカテゴリーの強みはその制限無く増やせる数だ。
完全に防ぎたければ2人以上の【キーパー】を配置すればいい。ゴールを2人のキーパーが守っているとかヤバい。しかし、相手が1人なら全然やりようはある。
「ここは、カタリナの魔法の出番だな。リーナ、ギルドコネクトを頼む。対象はカタリナ、ロゼッタ、フラーミナ。それとカルアとセレスタンにもだ。作戦を伝える」




