#1054 手紙には2時間後にギルドバトルするとあって?
こんにちは。3学期も選択授業で教師をすることになったゼフィルスです。
教えてほしい内容はこれまで通り〈育成論〉。俺の〈育成論〉を教師の卵に教えることになりました。
つまり来年度は、新入生がLV初期の状態から教師の卵(孵化済み)たちが〈育成論〉を新入生に教えてくれるということだ!
何それ素晴らしいな! 〈育成論〉がどんどん広まっていくぜ!
これで俺も来年こそは〈育成論〉の任期が外れるだろう。
〈育成論〉を学園中に広めるという俺の狙いが、まさに大成功した形となる。
断るなんて選択肢は全く無かった。
フィリス先生にオーケーを出し、今週の金曜日から授業をすることになった。
ヘッドハンティングされた3年生は、来年度に新入生へ教えることになる授業を現1年生に習うことになるのだが、心が折れないことを祈る!
「たっだいまー」
「待ってたわゼフィルス。これが届いていたの。急いで確認してもらえる?」
「お?」
昼食を取って意気揚々とギルドハウスへ入るとシエラに早速捕まって何かを差し出された。手紙らしい。俺宛だ。ちなみに封はすでに解いてあった。あ、もう読んだ後なのね。もう一度宛名を読む。……俺宛だよな?
とりあえず俺もペラリと開いて読むと、差出人は〈ギルバドヨッシャー〉だった。
内容は。
「練習試合の申し込み……そういえば冬休みが終わるまで保留にしていたんだった」
「忘れてたの!?」
ラナが目を丸くして驚いていた。
「あのゼフィルス殿がこんな大事なイベントごとを忘れるだなんて」
「まさか、偽者でしょうか?」
エステルとシェリアが物騒なことを言っていた。
本気でそう思っていないことを祈る。
いや、問題はそこではなかった。
「試合日時は――今日の15時!? あれ? 話し合いじゃなかったっけ? それにもうアリーナの申し込みも終わってんの!?」
「そう、話したはずなのですけどね」
思わずリーナに振ると、リーナも困ったように片手を頬に添えて溜め息を吐いていた。
遡ること数日前。あれ? 十数日前かな? まあいい。
とにかく俺たちはある理由で〈ギルバドヨッシャー〉との練習試合を保留にしていた。
要は俺たちが〈ギルバドヨッシャー〉に勝ってしまうと、どこからもギルドバトルをしてもらえないんじゃないかという懸念からだ。
それに冬休みは多くのメンバーが帰省するため、そのメンバーを蔑ろにしてお楽しみをすることはできないという理由もあった。そのため冬休みが明けたらまた話し合おう、と確かオスカー君に伝言を伝えていたはずだが。どこかでねじ曲がったか。
手紙にはすでに練習試合の日時が決まっており、後2時間で試合が開始されると書いてあった。
進みすぎ!
「ゼフィルス様」
「おおセレスタン良いところに、何かこれの理由とか知ってるか?」
「実は昨日にはすでにギルドハウスへ届いておりました。届いた日付を見るにどうやら金曜日には届いていた模様です」
俺は手紙のスタンプを見る。確かに3日前のスタンプだった。
俺たち〈エデン〉が2泊3日の旅行に出かけた日だ。あの日に届いていたのか~。
「中を拝見することは憚られましたので、今日お伝えするつもりでした。申し訳ありません」
「いや、昨日は旅行帰りだったし、急な面会もあったからな。仕方ないさ」
昨日帰って来て早々バタバタしていた。仕方ない。
しかし、手紙はすでに開けられているよな?
「そして先ほどシエラ様の〈学生手帳〉へアリーナ使用の通知が届いたことでこの手紙が怪しいとなり、急遽こうして封を開けさせていただきました」
「なるほど、そういう流れか」
アリーナを使用するときは学園に申請が必要だ。
アリーナでの練習はかなりためになるが、利用には利用料が掛かる。そのため申請制となっていた。
また人気なために予約がかなり先ということも珍しくなく、さらにギルド対ギルドの合同試合の場合は人が集まる日の選定もしなくてはいけないため、予約が1ヶ月後ということもある。
すると中にはうっかり申請したことを忘れてしまう学生も出てくるため、試合開始3時間前には通知がギルドマスターとサブマスターの〈学生手帳〉へ送られてくる仕組みとなっている。
俺の〈学生手帳〉を見ると、確かに未確認のメッセージが届いていた。
サブマスターであるシエラがこれを確認し、俺宛だった手紙の封を開けたのが一連の流れだったようだ。
ちなみに他の相手と一緒にアリーナの利用を申請する場合は、そのギルドの参加するという表明書が必要なのだが、これは俺が〈ギルバドヨッシャー〉で宴会に参加したときにポロッと書いた気がする。
うん、あの時はやる気満々だったからな。〈エデン〉がAランクギルドになった暁には練習ギルドバトルをするって表明書に書いたな。うん。
「それで、どうするのよゼフィルス。ギルドバトルするの? しないの? するの?」
ラナ、「するの?」が2回あったぞ?
むっちゃしたいらしい。
しかし確かに、前は躊躇したが、今なら問題無い。
学生向けの五段階目ツリー開放ダンジョンの解放も広め、冬休みから帰って来た学生たちの度肝を抜いているからだ。
このまま学生が上級職となり、五段階目ツリーを開放していけば、きっと〈エデン〉にも挑みに来てくれるだろう。(願望)
また、今日は冬休みが明け、学園へ久しぶりに登校する日。俺たち〈エデン〉のようにギルドで集まったり、友達と再会を楽しんだりして俺たちの練習試合なんて見ない人も多いと思われる。
というか練習試合が行なわれることを知らない可能性もあるな。
何しろ〈エデン〉もつい今さっき知ったくらいだし。注目度は低いのかもしれない。
あまり見られないというのであれば今日という日にギルドバトルするのはありと言えるだろう。
この試合の影響は低いと思われる。
そこまで考えて俺は決定した。
「まあ、確かに急なお誘いではあるが、せっかくアリーナまで押さえてくれているというのだから〈エデン〉も参加するか!」
「そうこなくっちゃね!」
「はいはいルルも参加したいのです!」
「私も参加するわ!」
「姉さまたちが参加するなら、私も参加します。今度こそ」
俺が提案するとメンバーがすごい勢いで乗ってきた。
どうやら〈エデン〉のギルドメンバーは最初から乗り気だったらしい。
ギルドバトル、やりたい気持ち。よく分かる!
「それで、練習試合ってどのくらいやるの? 場所はどこなの?」
「手紙によると場所は第三アリーナ、時間は3時間取ってあるみたいで、50分の試合を3回やるみたいだな。人数は〈20人戦〉〈25人戦〉〈30人戦〉でやると書かれている」
〈ギルバドヨッシャー〉の計画がすごい一人歩きしている!
ちょっと、待たせすぎてしまったようだ。なんか色々な決めごとを向こうに任せすぎて悪い気すらしてきた。
「いや、多分これも向こうが好きでやってるんだろうなぁ」
〈ギルバドヨッシャー〉、我慢させすぎて大爆発した感じが伝わってくるかのようだ。
もしかしたら五段階目ツリー開放ダンジョンの解放も関わっているのかもしれないな。
急遽決まった〈ギルバドヨッシャー〉の練習試合だが、メンバーの中に辞退や異議を申し立てる者は無し。
さすがは〈エデン〉のメンバーたちだ。
オーケー〈ギルバドヨッシャー〉。
じゃあ〈エデン〉との練習ギルドバトル、やろうか。
後書き失礼いたします。
祝! 〈ダン活〉小説6巻発売!
電子書籍の方も今回は先行では無く、本日午前0時より配信されています!
Web版には無かったギルドバトルのオリジナルイメージ図も記載!
さらに今回の挿絵は和み度Maxです! 癒されてください。
ご購入お待ちしております!




