#114 今日のダンジョンアタックは休み。でも行く!
翌朝土曜日。
今日はフリーだ。
というのも昨日のうちに目的だった素材が全部回収し終え、それだけに留まらずマリー先輩のギルドをパンクさせてしまったからだ。
またダンジョンに行って大量に素材を卸したら今度こそマリー先輩が鬼になりそうだ。それはそれで見てみたいが、さすがに自重する。
リアルだとこんなことがあるんだな。
ゲームだと売りたい素材数をクリックして一瞬で精算されてミールになる仕様だったから新鮮だ。
そのため今日は、今までダンジョンアタック優先で滞っていたあれやこれやを片付けていこうと思う。ダンジョンアタックタイムは一旦終了だ。
新メンバー勧誘の件もラナ、シエラ、エステルに聞いたら今日空いているとの事なので午後に面接も入れる。
その時ラナが「実はもう一人増えるかも知れないわ。いい?」と聞いてきたので新たに5人、メンバー候補の面接が待っている。こりゃ、早めにEランクまで上がって上限人数を増やしておかないとすぐ一杯になるな。
とりあえず午後の予定は決まったので、午前中は何をしようか。
そうだ。ダンジョンアタックをしよう!
「どういうこと??」
ハンナからツッコミが飛んだ。
「ゲーマーたるもの、ダメと言われても時には突き進まなければならない」
「???」
まあ、なんとなくかっこよさそうな言葉を並べたけど、ただの冗談だ。
俺は現在貴族舎の自分の部屋にいる。そして、朝からハンナが朝ご飯を共にしにやってきて今に至る形だ。
俺の分も当然とばかりに作ってきてくれたので一緒に食べる。
うん、今日もハンナの手作りが美味い!
「それで、今日はダンジョンお休みって話だったでしょ? 行くの?」
「行くよ?」
当然だ。
現に、シエラ、ラナ、エステルの姫組メンバーはカルアとリカを手伝いに行ってそのまま初級下位に行ってくるらしい。手伝いというか、アドバイス役だけどな。
なら、俺が行ったって良いはずだ。
ダンジョンアタックタイムは終了だと言ったな、あれは嘘だ!
「MPポーションを昨日使いすぎて残り少なくなっただろ? だから補充に行こうかと思ってな」
「少ない、と言っても良いのかな? まだ150本近くあるよ?」
小狼の周回で200本以上使ったけどな。
俺から言わせてもらえればMPポーション150本なんて吹けば飛ぶような量でしか無い。
しかし、補充するにもミールは節約しておきたい。
ということで今日は〈魔力草〉集めだな。
「俺は今日〈草原〉行ってくるけど」
「私も行っても良い?」
「ま、ハンナならそう言うと思ってた」
ということで午前中はハンナと一緒に〈草原〉に行く事になった。
「ゴブッ!?」
「『アイスランス』! 『フレアランス』!」
「ゴブゥ…」
ハンナのランス系に次々と吹っ飛ばされていく〈並ゴブリン〉たち。
いやぁ、ハンナ強くなったなぁ。
ステータスの【INT】は変わりないけど武器と中級魔法が威力高いのでゴブリンも一撃で倒せる。
さらに散々素早い〈ウルフ〉系を狩ったからか、ゴブリンだと足止めしなくてもほとんど外さなくなったなハンナ。いやぁ、こっちも成長が著しい。
「ラスト! 『アイスランス』!」
「ゴビュッ!?」
最後の〈並ゴブリン〉も余裕で仕留めたハンナがスッキリした顔で振り返った。
「お疲れハンナ。上手くなったな!」
「うん! ありがとうゼフィルス君! なんかね、すごく手に来るの、その、手応えが!」
「ふ、ふうん…。よかったな?」
「うん! ゼフィルス君、もうちょっとやらせてもらってもいいかな、なんか今、すごく良い感じなの!」
「そっかぁ。じゃあ俺は予定通り〈魔力草〉集めに行ってくるから、頑張ってな」
「ありがとう!」
前回と正反対になった。
今、俺がポーター役。なんでこうなったんだ?
何故かハンナは耀くような笑顔で格好良く魔法を放ち、ニヨニヨしながら手をニギニギしている。なんか、手に返ってくる手応えがお気に召したらしい。
「帰ったらスライムにもやってみようかな」
ボソっと小さく呟かれたセリフが一瞬の静けさの中、俺の下まで届いた。
哀れスライム。叩くだけに飽き足らず、魔法というバリエーションが増えたらしい。
俺は〈魔力草〉を採取しながら、再び南無と呟くのだった。