#1046 雪合戦ガチ? 相手にセレスタンがいる。
「雪合戦やるぞーーー!」
「「「「おおー!」」」」
3日目の最終日は雪合戦から始まった。
昨日のスキーから帰ってきた後一狩り行って、翌朝。
朝温泉という贅沢を満喫して朝食を取り、腹ごなしにしようと思ったのが雪合戦だった。
1日目から要望もあったしな。
やっぱり雪があってメンバーがこんなにいたら雪合戦したくなるよね。
寒いの苦手な人や、投げるの苦手な人は観戦席で応援してもらう。
雪合戦に参加したのは男子全員と女子は25人だった。
合計で31人。人数が奇数だったのでニーコを巻き込んで32人にした。
16人ずつで分ける。チーム戦だ。
「ねえ勇者君聞いていいかい? なんでぼくがここにいるんだね? そしてなんでぼくが王なのかね?」
「大丈夫だ。ニーコなら生き延びてくれるさ!」
「そうじゃないんだよ勇者君!?」
ニーコには特別に雪合戦の王になってもらった。
さて、再度ルール説明をしなくては。
「ルールは簡単! 雪玉を投げて相手の体にある的に当てるだけ! 当たった人は退場だ! そして王冠を被る敵の王を最初に退場させたチームの勝ち!」
ちなみに的は普通に温泉街で売ってた。
雪合戦する学生向けのグッズだそうだ。そして雪合戦用の施設まであるのだからすごいんだぜ。
的は胸と背中に1枚ずつ貼り、さらに1枚を左か右、どちらかの腕の付け根部分、ショルダーの位置に付ける。3つの的のうちどれかに当てられたら退場だ。
なお、しゃがんで胸の的をかばうのは有りだが、仰向けに寝転んで背中の的を狙わせないのは反則退場となる。滑って転んで背中を地面に着いても退場なので注意。
そして王である人は王冠を頭に被る。ダミーは不可。王冠を被った人が退場する、または王冠が外れたら試合終了。
スキルや魔法の使用は不可、タックルやその他技の掛け合いも不可。ちゃんと雪玉で攻撃しましょう。
そんな感じのことをルール説明する。
「では審判のシエラ、合図をお願いします!」
「始め」
「早っ!」
シエラに振ったらいきなりの試合開始だった。
「「「いっくよーー!!」」」
「「「おおーー!!」」」
「「「「みんな頑張れー」」」」
そして雪合戦が始まった。
観戦組の声援を受けて雪玉が交差する。
「覚悟しなさい。この私が直々に倒してあげ、きゃう!」
「「ラナ様ー!?」」
「ピー、ラナ殿下退場よ」
「そんな、嘘よ! もうゼフィルス! 次は負けないんだからね!」
やっべ、適当に投げた雪玉が見事にラナの胸の的に直撃してしまった。
まあ、こういうこともあるよ。ごめんなラナ。
「勇者君勇者君! 僕狙われまくってるんじゃないかな!? 早く、早く助けておくれ!?」
「安心してくれニーコ、そう簡単にはニーコをやらせはしないさ! ニーコは俺が守る!」
「「「…………」」」
「おおっと、ゼフィルスチームの動きが少し悪くなった! その隙にラナ殿下チームが攻勢を掛けるーー!!」
「おおおお!?!? 負けるかー!!」
いつの間にか実況者がいた。サトルだ。おかしい、サトルはゼフィルスチームだったはずだが。見ればショルダーの的に雪の塊が……。速攻で退場してしまったらしい。
そして俺は1人ニーコを背中に庇いながら雪玉を応戦していた。
パンチやキックで雪玉を迎撃! ま、負けるかーー!!
「こっちもどんどん攻撃だ! 王を狙え!」
「王のセレスタンさんが全部打ち落としてくるんだよー!」
「遠距離では歯が立たないんじゃないかなこれ!?」
近くにいたノエルとシャロンがセレスタンの迎撃能力に悲鳴を上げる。
って向こうの王はセレスタンかよ! 誰だセレスタンを王にしたのは!
「このままじゃ決着が付かないぞ!」
「では、俺が右側から攻めよう」
「強襲部隊の編成だね! それ乗ったよ!」
「わたくしも参りますわ!」
強襲を提案したのはレグラムだ。それに乗ったのはルキアとリーナ。
「重要そうなところを叩きます。指揮官メルトさんと補給のハンナさんを退場させるのですわ」
「よし。頼んだぞリーナ、レグラム、ルキア」
「行ってきますわ!」
「任せるがいい」
「オッケー! 負けないよー!」
「リカ、カルア、アイギス! 正面からいって囮役を頼む」
「ふむ、しかし敵の攻撃が思ったより凄まじいな」
「全部避ける?」
「アレを掻い潜るですか」
「向こうにはハンナがいるからな。雪玉作製能力が高いのか? どんどん作っている様子だ。故に攻撃を攪乱する役割がいる」
「なるほど。引き受けよう。全て叩き落とす」
「ん!」
「頑張りますね!」
「おおっとゼフィルスチームに動き有り! 攻めに出ましたー! 先頭はカルアさん! 足の速さと身軽さで攻撃を躱しまくる! 続いてはリカさん! 刀は持っていませんがそれでも防御力は健在! 全ての雪玉を叩き落としているー! 攻撃はアイギスさん! リカさんとのコンビネーションが強いぞー!」
「正面のあれは囮だ! 本命は左方から来るレグラムたちだぞ! 迎え撃て!」
「では私たちがお相手します!」
向こうの指揮官メルトの声がここまで聞こえる。
レグラムたちの攻撃が看破されたか。エステル、シズ、パメラが派遣されていた。だが問題無い。
「よし、攻撃の圧力が減った、今のうちに距離を詰めるぞ! 討ち取ってやれ!」
「アイサー! エリサちゃんにお任せだよ!」
「姉さま、お覚悟ください」
「ってフィナちゃん!? いつの間ふぎゃーー!?」
「伏兵がいたか!」
こっそり仕掛けるはずだったエリサがフィナにやられていた。速攻だった。
こんなに接近されるまで気が付かないとは。やはりフィナの格好が白くて小さいからか!?
「ニーコ君、その王冠もらったー」
「カイリ君か! なんの、僕はまだやられるわけにはいかないのだーー。というか勇者君助けて!?」
「もちろんだ! ニーコはやらせないぜカイリ!」
「わ、私も守ります!」
エリサを退場させたフィナが素早くニーコへ駆けてくるとカイリがニーコに接近、俺とラクリッテがその間に入る形で射線を切るが、ニーコの後ろから新たにラウが接近していた。足速いな!
「これで、俺たちの勝ちだ!」
「残念なのです! そうはさせないのです!」
「くっ! なに! うおお!?」
「討ち取ったりーなのです!」
「たはは~。まだ私たちが残ってるんだよ」
「防御なら任せてね~」
ラウの接近はかなりのスピード技だった。タイミングもかなりバッチリ。
だが、フィナとカイリの強襲にも動じず待機を命じておいたルル、ミサト、トモヨがラウを呑み込んだ。
さすがに三方向からの攻撃には対応できず、ラウが退場。
ノエルとシャロンでフィナに対応。ラクリッテがカイリを対応。そして俺は、さらに攻めてきた仲良し3人組の対応だ。
「ゼフィルス君、覚悟してね~!」
「ゼフィルス君を討ち取っちゃうのは私たちだよ~!」
「これだけ近づければ防げないでしょう!」
ピンチ! こっちからも攻撃か! さすがはメルト。
ニーコを後ろに庇いながら三方向から狙われる俺。だが、大丈夫、俺が狙われているなら問題無い! ここだ! 秘技マ◯リックス避け!
「「「な、避けた!?」」」
「ギリセーフ! そして反撃だ!」
投げてくるタイミングも同時の仲良し3人組。投げるのが同時なら全力回避で避けられる。
思いっきり体を後ろに倒したスウェーで避ける。背中が地面に着かないよう右手を下に突いて雪に手を突っ込み、グッと握って雪玉作製。
「ニーコ!」
「あいよー!」
そのままニーコと反撃。
「うきゅ!?」
「あわ!」
「や、やられた!?」
おお、やればできるもんだな!?
結構無茶したつもりだが、なんかイケるような気がしたのでやってみたら出来た!
俺の右手の雪玉とニーコの左右の雪玉がサチ、エミ、ユウカの胸に当たって退場。
ニーコはDEX値高いからな、これだけ近ければ利き腕じゃなくても当たるんだ。
「「「うっそ、やられちゃった!」」」
「反撃の時間だー! 攻めるぞ!」
「うぉーいえー! 王が攻めちゃいけないなんてルールはない!」
「ええ!? そんなの有り!?」
カイリの声を背中にニーコと突っ走る。
「ここでカウンターだー! ゼフィルスさんが勝負に出たー! 一気に距離を詰めて行くーー!」
盛り上がってきた!
向こうのチームは素早いカルアを止められずハンナが退場。補給を絶つことに成功し、エステル、シズ、パメラをレグラム、ルキア、リカで止めている状態。
カルアはそのままカタリナ、フラーミナ、ロゼッタを相手に引きつけている。
残りはメルトとセレスタン。そしてそこへ俺とニーコが突っ込む。
走っている最中に雪玉確保。
「メルト、覚悟しろ!」
「ゼフィルスよ、今回は俺たちが勝つ!」
「メルト様、後ろへ」
「頼むセレスタン」
げっ、王のセレスタンが前に出てきちゃった。
王を盾に俺たちを攻撃するつもりかよメルト!
しかし、近距離ならいくらセレスタンでも避けきれないだろ!
「ここからならどうだ!」
3メートルも無い距離での雪玉攻撃。しかし狙い外れてセレスタンの腕に当たる。迎撃したんじゃない。この距離で躱された!?
「体を少しズラすだけです。どうということはないですよ」
俺のさっきのマ◯リックス避けと同じ理屈か! 的に攻撃してくるのなら攻撃のタイミングで横にズレるだけでいいと!?
瞬間、セレスタンが再び横にズレたかと思うとその後ろから雪玉が迫っていた。メルトの攻撃だ。セレスタンで射線が塞がれていたはずなのに、セレスタンが横にズレたおかげで射線が空いたんだ。いやいやいや、メルトが投げたのいつ分かったんだよセレスタン! 背中で感じ取ったのか!?
「うおおお!? あ、あぶねぇ!?」
しかし、的では無くお腹に命中。メルトは魔法使いなのでコントロールが悪かった模様。
「僕の番だね!」
「やったれニーコ!」
合図でセレスタンのように横にズレる俺とニーコの雪玉攻撃がメルトを襲う。
「ダメです」
しかしセレスタンに却下された、なんか手刀で二つとも叩き落とされる。これどんな王?
これどうやって倒せばいいんだ?
そう思ったところで視界にあるものを捉えた。あれを利用すれば!
「ニーコ、こっちだ!」
「逃がしはしません」
「ニーコ、あれでメルトを狙え!」
セレスタンが追いかけてきた。
俺がニーコとの射線に割って入ってセレスタンを迎撃する。
いくらセレスタンと言えど近すぎればやられる危険があるためその場で睨み合い。俺の手にはまだ雪玉が1個残っている。
「ふっ!」
メルトの雪玉がニーコに向かうが、俺もバックステップとサイドステップで射線を切って攪乱する。セレスタンが踏み込もうとすれば雪玉を投げる動作で牽制だ。
するとすぐにニーコからアクションが起こった。
「うおおりゃああ! 雪玉大放出だーー!」
「! あれは、ハンナ女史の雪玉か!」
そう、メルトの言うとおり、ニーコに託したのはハンナの雪玉工場だ。
こんもりと積み上がった雪玉の山がそこにあった。ハンナがマジ優秀。錬金してないのになんでこんなに雪玉作るの速いの? 見てたけど、なんだかおにぎり作るノリでポンポン作ってたんだ。だが、今回は助かった。
ニーコはそれを腕いっぱいに抱きメルトとセレスタンが居る方に放り投げてきたのだ。
大量の範囲攻撃。とはいえ狙いは付けられていないのでこれで退場させるのは無理だろう。ということで、俺が最後の雪玉を使う。狙いはメルトの、足だ!
「うおっりゃー!」
さすがのセレスタンといえど大量の雪玉が投げられているところに俺の雪玉も対処するのは難しく、狙い通りメルトの足に命中した。
「!! うおっ!?」
「ピー、メルト退場よ」
視線が上に向いている所への足攻撃。これにメルトはバランスを崩し転倒。運良く背中が着いたので退場だ。
「さあ、セレスタン。勝負だ!」
ニーコはすでにダッシュで逃げている。
俺の方がAGIは高いのでセレスタンを追わせることもない。
「受けて立ちましょう」
なんと初の俺VSセレスタン戦が勃発した。
しかし結局勝負は決まらず。
追いかけてきたルル、ミサト、トモヨ、ラクリッテが加わって五方向から攻撃して、なんとかセレスタンを討ち取ることに成功した。
「おや、当たってしまいましたか」
「マジギリギリだったぜ」
セレスタン、どんな回避性能持ってるんだよ。しかし、ようやく決着は付いた。
「試合終了よ」
「ゼフィルスチームの勝利だーーーー!!」
「「「「おおおおー!!」」」」
審判シエラの声と、いつの間にか実況が似合うサトルの声が響いた。
ゼフィルスチームと応援席から歓声が上がる。
しかしあれだな。
雪合戦ってこんなにガチなものだったっけ?
後書き失礼いたします。
雪合戦チーム分け。
・ゼフィルスチーム
レグラム、サトル、エリサ、ノエル、シャロン、リカ、カルア、ルキア、ニーコ、ルル、トモヨ、ミサト、リーナ、アイギス、ラクリッテ
・ラナチーム
セレスタン、メルト、ラウ、エステル、シズ、パメラ、ハンナ、サチ、エミ、ユウカ、フィナ、カイリ、カタリナ、フラーミナ、ロゼッタ
・観戦席
シェリア、タバサ、オリヒメ、アルル、アルストリア、シレイア、マリア、メリーナ
・審判
シエラ
ちなみにゼフィルスの『超反応』は発動せず。
『超反応』は『直感』が仕事しないと発動しない効果なのですが、『直感』は危険が一定値を超えないと(HPバリアが仕事するレベルなど)発動しないのですよ。
雪合戦程度だと『直感』が働かない感じです。
『超反応』無双はならず。




