#1033 上級職ランクアップ! ルドベキア編!
「今日はルキアの〈上級転職〉をしたいと思う!」
「よろしくお願いねゼフィルスさん!」
1月9日。
帰省組も帰ってきたので明日からはギルドメンバーで旅行だ!
ただ、その前にしなくてはいけないことがある。
それがルキアの〈上級転職〉だった。
ついでに装備も上級装備にしたい。
なにしろ今回行くエクストラダンジョンは難易度が高い。慎重を期すためには〈上級転職〉と装備変更が必要不可欠だ。
本当はラウも〈上級転職〉してもらう予定だったが、ラウの望む【獣王】の特殊条件が今は満たせないので保留にするしか無かった。
まあ、ラウだってLVカンストしているし、前衛だからVITも高い。上級装備に換装してもらえばすぐ近くには俺たちもいるし、大丈夫だろう。
ルキアはLVカンストに届いたしなにも問題無いので〈上級転職〉してもらう。前から約束していたしな。
「ってそっか、今日は私1人なんだ」
「ん? どうかしたのか?」
「いんや、〈エデン〉の〈上級転職〉ってなぜか複数人でやるって聞いてたから」
「ああ。だが他のメンバーはすでに〈上級転職〉済みだからな」
「そ、そうだったね。私とラウ君以外全員上級職のギルド……。改めて〈エデン〉ってとんでもないギルドだよ」
「大丈夫大丈夫、すぐ慣れるって。ルキアもその仲間入りだしな」
「慣れるのかなぁ」
なんだか慣れたくないなぁと言わんばかりのルキア。大丈夫だ。気が付いたら慣れているさ!
今日はルキアの〈上級転職〉の日だ。
本当はもっと前からルキアはLVがカンストしていたのだが、俺がなかなか空いている時間を確保出来なかった関係で旅行の前日になってしまった。
まずはルキアを連れて交換所へと向かう。
【タイムラビット】の時も時計が五つ必要だったが、今度のやつも個数がいるのだ。
「〈時〉か〈駆〉の文字が使われている装備5種類が条件なんだが、これが割とネックでな。頭、体①、体②、腕、足で五つという限定なんだ。つまり武器と盾、アクセは無しな」
「け、結構厳しい縛りだね」
「装備の強さはどうでも良いから安物でもいいんだが、さすがに〈エデン〉でも一式は持っていなくてな。新しく作るのもなんだし、そんな時に頼りになるのが交換所だ」
「お、覚えておくね」
交換所は学園に売買されたものも揃っている。というか運営が学園なので大抵のものは在庫があるのだ。交換所に置かれているのは質や等級の高い物ばかりだが、取り寄せをお願いしておけばここに無いものでも持って来てくれる。しかも、お手頃なんだ。
前にも言ったが学園は安く買い取り高く売るをモットーにしている。だが、交換所はQPで交換する関係上、学生へのご褒美の面が強く、安く交換できるのだ。
まずは店員さんに「取り寄せをお願いしていた者です」と言って割符を渡す。
「少々お待ちください」
「手慣れてるねぇ」
「ここには何度もお世話になっているしな。よく来るんだよ。みんなの〈上級転職〉とかでな」
「ああ、うん。納得したよ。〈エデン〉って30人以上上級職がいるもんね」
「専属契約を交している上級職も含めれば40人以上だな」
「お待たせいたしました。こちらでお間違えないですか? こちらの〈解るクン〉で確認をお願いします」
「では失礼して。―――うん。どれも大丈夫だ。〈疾駆シリーズ〉5点。確かに確認しました」
「ありがとうございます。ではこちらに〈学生手帳〉を翳してください」
〈交換所〉は割とハイテクだ。『鑑定』用アイテムの〈解るクン〉に加え、〈学生手帳〉から入金するための機械まで備え付けられている。
これに俺の〈学生手帳〉を翳すとピロリン♪と鳴って入金が完了した。
〈疾駆シリーズ〉は中級下位級だが、〈上級転職〉のためだけに使うなら問題無い。終われば新しい上級装備にチェンジしてもらう予定だ。
「それじゃ、このまま測定室に行こうか」
「着替えはどうするの?」
「測定室は個室だからそこで着替えてくれ。もちろん俺は外に出ているからな」
「了解~。なんだか心の準備が完了する前に気が付いたら〈上級転職〉してそうだよ~。みんなの言っていたことは本当だった」
装備を受け取った俺とルキアはその足で職員室に向かい測定室の鍵を借りて、隣の測定室に入室する。
「わ。〈竜の像〉」
「そういえばルキアは〈金色ビースト〉にいたんだったな。〈竜の像〉が苦手とかそういうのあったりする?」
〈金色ビースト〉は〈転職〉でやらかしたギルドだ。もしかすれば〈竜の像〉が苦手とか、恨み辛みとかあるかもと聞いてみたが、ルキアは首を振る。
「んん、大丈夫。〈転職〉の時に見たっきりだったから懐かしいだけだよ」
「久しぶりのご対面というわけか」
「ゼフィルスさんはしょっちゅう対面しているみたいだけどね」
「おう。いつもお世話になってるんだ」
「ああ、うん。普通に答えられると困っちゃうね。どれだけお世話になってきたのかな?」
さて、落ち着いてきたようなのでそろそろ〈上級転職〉をしてもらおうか。
「まずはルキアに〈疾駆シリーズ〉へ着替えてもらうぞ。予定通り、ルキアに就いてほしいのは【先駆の時兎】だ」
「うん。大丈夫だよ」
――【先駆の時兎】。
上級職、高の上。「兎人」カテゴリーで最高の職業の一つだ。
その能力はサポート、支援系。そして妨害系だ。また回復も出来る優良職。
【タイムラビット】の上位互換で主にスピード面を司り、味方の素早さを上昇させることはもちろん、スキルの速度まで上昇させてしまう超効果を持っている。さすがにルルのように2回行動レベルまではできないものの、【先駆の時兎】が居るだけでボス戦が格段に早く終わるのだ。ゲーム時代、周回にとても重宝した職業だった。
さらにその能力は発動しているスキルや魔法を対象にして発動することもできる。
相手が攻撃してきた魔法の速度を遅くしたりすれば簡単に回避も可能だ。
色々な面で役に立つ職業だった。
さらに五段階目ツリー、六段階目ツリーへ進むと効果がとんでもないものに進化していくのだが、これはまた今度話そう。
選択肢には他に【ギャンブラー】に近い【ギャンブルバニー】などの職業にも〈上級転職〉可能だが、ルキアも最初から【先駆の時兎】一択だったのですぐに決まった。俺もこっちが良かったのでホッとしたよ。
早速その発現条件である装備、さっき交換所で交換した〈疾駆シリーズ〉へと着替えてもらった。
もちろん俺は着替え終わるまで外で待機だ。
「い、いいよ~」
お声が掛かったので入室です。
「入るぞ――ありゃ」
ルキアを見ると、〈疾駆シリーズ〉はサイズ調整とかしていないのでちょっとぶかぶかな上、一部がとても窮屈そうだった。この〈疾駆シリーズ〉は男女共用だったのだが、色々合わなかったらしい。そういうこともある。
「まあ、少しの間だから我慢してくれ。悪いな」
「別に大丈夫だよ。ふふ~ん、もっと見る?」
「遠慮しておこう。なんか後が怖そうだからな」
「うふふ。じゃあ、この後もお願いね」
「おう。じゃあ次にこの〈天杯の宝玉〉を使ってもらえば準備完了だ」
「〈宝玉〉! えっと、使わせてもらうね」
モナやソドガガが頑張っているとはいえまだまだ〈宝玉〉は高価だ。
ルキアはひゃーひゃー言いながら使っていた。
「じゅ、準備出来たよ~」
〈宝玉〉の粒子がルキアに吸い込まれていき準備が完了する。
他にも高難易度なとあるクエストのクリアなどが条件に組み込まれているのだが、そっちは冬休み中の時間を使い一昨日なんとかクリアしたようだ。
これで条件は満たせているはずだな。
「よし、じゃあこれが〈上級転職チケット〉だ。これを持って〈竜の像〉へタッチしてみてくれ」
「はいよー」
少し堅い動きでルキアが〈竜の像〉に触れると、ジョブ一覧が現れた。
「あ、ある! 【先駆の時兎】あるよ!」
「よし、タッチだ!」
「うん!」
ルキアがそれにタッチすると【先駆の時兎】がクローズアップしてルキアの上に輝いた。
続いて恒例の――〈覚醒の光〉。
「ふ、ふわわわ!」
「大丈夫かー」
「うん。ビックリしただけだよ。それにしても、すごいねこれ! ふわふわする~」
「気持ちいいだろう」
ルキアがきゃっきゃきゃっきゃとゆっくり回転しながら楽しんでいた。フワッと浮く感覚がお気に召したらしい。
しかし、その光も次第に収まっていく。
「はぁ~~。貴重な体験した~。これは〈ユートピア〉のみんなにも自慢しなきゃだね!」
「おう、どんどん自慢していいぞ。それとルキア、〈上級転職〉おめでとう。これでルキアも【先駆の時兎】だ」
「うん! ありがとう!」
 




