#1032 帰省組の帰還! ラナがプンスコモードに!!
「みんなただいまーー!! 私が帰ってきたわよ!!」
「おかえりラナ! 元気そうでなによりだ」
「ラナ殿下、おかえり。帰省は楽しめたの?」
「全然楽しくもない公務ばっかりだったわ! ちょっと聞いてよシエラ、夜会に参加したら、来年〈エデン〉でお世話になりたいって子が凄く多くてね!」
「その話詳しく!」
ラナたち一行が帰ってきた。
他にもレグラムとオリヒメさん、リカ、ノエル、シャロンが帰ってきたので久しぶりにメンバーが全員揃うな!
馬車で帰ってきたラナたちを、所謂〈馬車駅〉でお出迎えしてみんなで一緒に寮へと向かう。帰省メンバーが貴族組しかいないので貴族舎を目指す形。
俺とシエラが付き添いを買って出て、他のメンバーはギルドハウスへと向かってもらい、後で合流する予定だ。
しかしその前にとても重要な発言がラナの口から飛び出したので詳しく聞いてみる。
王族が参加するパーティってことは貴族の子息と息女しかいないだろう。そこでなんだって?
「そうだ! 思い出したわ! ゼフィルス、聞いたわよ! どういうことか説明して!」
「あれ!? パーティの話は!?」
しかし、話を聞く前にラナが何かを思い出してプンスコモードになってしまう。
「〈キングアブソリュート〉と〈霧ダン〉を合同攻略したって話よ! もー! 私がまだ攻略してないのになにお兄様と攻略してるのよ! まったくもー! しかもその後他のギルドも誘って仲良く〈岩ダン〉まで攻略したそうじゃない! もー!」
「耳が早いな!?」
どうやら俺が合同攻略したという話は学園外、しかもラナの実家である王城にまで轟いているようだった。いやぁ、すっかり有名人になっちまったぜ。
「もー! ゼフィルス聞いてるの! もー! もー!」
おお、ラナが牛みたいに! なんだか前にもこんな光景を見た気がする。
エステル。そんな和んだ表情をしていないでなんとかしてくれ。
「シエラもよ! ちゃんとゼフィルスの首に鎖を付けておいてって約束したじゃない!」
「あれって物理的に本気だったの!?」
驚愕の事実が判明した。
「ごめんなさい。ちょっと目を離した隙に大事になってたの」
シエラがジト目で見てきます。ありがとうございます!
「なんだか私たちが帰省している間に少し変わったかしら?」
「学生たちが慌ただしい感じがするな」
「私たちが空けていたのは2週間弱ほどだったはずですが、何かあったのでしょうか?」
「お、おう、それなんだが――」
道すがら不思議そうに辺りを見渡す帰省組が感想を漏らす。
これはちょうど良いと俺はその話に乗っかりにいった。
ラナは知っていたようだが、レグラムやオリヒメさんは知らなかったようなので最近の事情を掻い摘んで話すことにした。
「――という感じでどこもかしこも大騒ぎって感じだ」
「もー、全部ゼフィルスのせいじゃない!」
「ということは、あの〈岩ダン〉の攻略法を教えてしまったのか?」
「それは大荒れになりますわね」
「おう! ばっちり五段階目ツリーの宣伝もしておいたぜ」
ラナから鋭いツッコミ、レグラムの言葉に頷くと、さもありなんとオリヒメさんが口元に手を添えて笑っていた。俺は親指を立ててキラリとした。
「ずるいわ! もーなんで私が居ないときにそんな楽しそうなことをしちゃうのよ!」
ラナはこれでもお兄ちゃんっ子だ。ユーリ先輩と俺たちが一緒に遊んだと知って羨ましかったのだろう。
しかし、仕方なかった。まずはユーリ先輩に先駆者として立ってもらわないと、色々面倒を押しつけられないじゃないか。またラナがこの時期にユーリ先輩より先に行くと王位継承の時に面倒なことになる可能性があるのだ。
それはユーリ先輩の意見とも一致している。ユーリ先輩は卒業と同時にいろんな面倒事を持っていくつもりなのだ。
「全てはラナが学園で自由に過ごすために必要なことだったんだ。許してほしい」
「む! もー! もー!」
しかし、ラナの機嫌は直らなかった。
だがラナも分かっているのだろう。それ以上は言葉を継げずもーもー言うだけになってしまった。
どうやら言葉だけでは足りないらしい。
仕方ない。後でアレを渡してご機嫌を取るか!
「五段階目ツリーの開放ダンジョンの解放、それで学生たちがこんなに活気づいているのか」
「良い空気だよね~。私たちも五段階目ツリー早く行きたいよ~」
「すごく分かる! 自分にどんな可能性があるのかすっごく知りたいよね!」
リカが納得したように微笑み、ノエルとシャロンがテンションを上げながらキャッキャしていた。
なにしろ五段階目ツリーと言えばほとんど未知の領域。
中級上位で育成出来るのはLV15までなのだ。
上級ダンジョン入ダンの機運が高まって、Aランク以上のギルドはさらにLVを上げてきてはいるものの、それでも〈霧ダン〉ではLV25が限界。
それが〈岩ダン〉ならLV30まで育成可能なのである。
さらに言えば攻略難易度が低い〈岩ダン〉という新しいダンジョンが発見されたことでさらに熱を帯びている。
学園は今、とても良い空気になっていた。
話はラナたちが居ない間の〈エデン〉の活動にシフトしていき、情報の共有を行なう。
「今後はAランクギルド以上を中心に上級ダンジョンへどんどん挑戦してもらうよう調整していてな」
「Bランクギルドでも相応の実力を持っているギルドは上級ダンジョンに挑む許可は下りるとのことよ」
「そうなると今度は〈上級転職チケット〉や〈心〉〈結晶〉〈宝玉〉が足りなくなってきてな。また何人かに〈エデン〉から〈上級転職チケット〉を供与して、特に〈採集課〉のモナたちを上級職にしてアイテムを発掘してもらったりと支援したり――」
ここ数日で起こったことにラナたちは驚いたり、羨ましがられたり、苦笑されたりした。
そんな感じに2週間の積もった話を消化していると時間が過ぎるのは早いもので、貴族舎に到着。
一旦荷物を整理したり一息付いた後再集合する。
すると、ラナがエステルを伴って俺の部屋にやってきた。実は俺が呼び出したのだ。
「もー、ゼフィルス。私はまだ怒っているのよ」
「機嫌を直してくれラナ。実はラナにプレゼントがあるんだ」
「……プレゼント?」
プレゼントという言葉にピクッと反応するラナ。
以前ラナが牛になった時はエステルがぬいぐるみをプレゼントして解決した。
俺もそれにあやからせてもらおう。
「実はユーリ先輩と一緒に〈霧ダン〉を攻略したときにドロップしてな。ユーリ先輩と俺からのプレゼントだ」
そう言って高そうな木製の平たい箱をテーブルに置く。
「お兄様とゼフィルスの……あ、開けても良いのかしら?」
「どうぞどうぞ」
「じゃあ、ありがたく開けさせてもらうわね」
俺はエステルに視線を送るがエステルは一つ頷くだけだ。
これで正解らしい。
「わ! 綺麗~。これは体装備ね!」
「名称は〈聖の装束〉。あの〈白の玉座〉と同じ【大聖女】用の専用装備だ!」
「ええ!? これが〈聖の装束〉なの!? あの【大聖女】の伝説の専用装備の!?」
箱を開け、中身を取り出して見ていたラナが目を見開いて驚いた。
ユーリ先輩もそうだったが、ラナも〈聖の装束〉は知っていたらしい。
それじゃあ驚くよな。俺も驚いたもん。
だが、ここでドロップしたのはほんとラッキーだった。
「これはラナの魔法『プレイア・ゴッドブレスLV10』を使うための専用装備でもある。強いぞ。だからどうか許してくれ」
「う、そ、そうね。こんなに良い装備をプレゼントしてもらったんだもの。その、ゼフィルス、ありがとね」
「おう。それを着たラナが見れるのを、楽しみにしているな」
「も、もうゼフィルスったら……。もう集合時間だからまた後でね! 後で見せてあげるわ!」
こうしてラナの機嫌は直った。顔を真っ赤にして照れているラナがグッド。
エステルがラナの後ろで何度も頷いていたぞ。エステル的にもとてもグッドだったらしい。
ふう。〈聖の装束〉には感謝だぜ。
ラナの言うとおり時間になったので再集合し、俺たちはギルドハウスに向かうことにした。
「わ~、私たちが居ない間にだいぶ変わったわね!」
「大繁盛ですね」
「お店の中、すごく広くなってるデース」
「これは、なるほど商業スペースの他にレジへ並ぶ専用レーンを新しく作ったのですか」
新しい〈エデン店〉はラナたちが帰省した後に改装したからな。
リニューアルした〈エデン店〉を見てラナが店を冒険したり、エステルとパメラがそれに微笑みながら付いていったり、シズが店を細かくチェックしたりしていた。
まあ、見たい気持ちは分かるのだが、みんなが待っているのでほどほどにしてもらい、俺たちは大ホールへと進んだ。
ラナたちが居た頃よりだいぶ小さくなった大ホールだ。半分くらいかな。これくらいのほうが落ち着くよな。でもぬいぐるみが日に日に増えてきているんだよなぁ。
そして大ホールに入ると、
「「「「帰省組おかえりなさい~」」」」
〈エデン〉〈アークアルカディア〉メンバー全員が出迎えてくれた。
もちろん食事付きの打ち上げだ! 3日前には出来なかった宴会を今始める!
なにしろたった2週間と言えど積もる話がたくさんあるんだ、積もりまくりだ。
だが、ただ情報共有するだけではつまらない。ということで〈エデン〉恒例の打ち上げをしながら語ろうじゃないか!
「というわけで今回の音頭は簡素に行くぞ! これから帰省組おかえりなさい、そして合同攻略お疲れ様パーティを開催する! かんぱーい!」
「「「「かんぱーい!!」」」」
ジョッキを掲げて乾杯。
3日前から準備していたのでもう豪華なパーティとなっていた。
年始で〈芳醇な100%リンゴジュース〉を飲みきったが、ちゃんと補充しに行ったからな。
ラナにたっぷりと注いであげるのだ。
「美味しいわ!」
ラナの機嫌は順調に回復している。
ラナの膝には〈幸猫様〉がお座りになって癒し中だ。
今日だけは特別に許可しよう。
〈幸猫様〉にも苦労をかけます!
そして帰省組を回りながら色々と話を聞いていった。
積もった話は俺たちだけではない。向こうもたくさんある。
ラナはとにかく公務が忙しかったとぼやいていた。
今日帰ってくるため、かなりスケジュール増し増しで公務をこなしたらしい。
なにやら「早く帰るための理由が出来たのよ」と不穏な雰囲気を出し始めたのでさらに〈芳醇な100%リンゴジュース〉を注ぐと元気になった。そして全力で話を逸らした。
「明後日からは温泉だな!」
「楽しみね! でも明日くらいはゆっくり休むわ」
「そうだな。ラナたちはゆっくり休むと良い」
明後日の10日はみんなで〈秘境の温泉ダンジョン〉、通称〈秘境ダン〉に行く予定だ。
今回は全員参加出来そうでよかったぜ。
ただラナはお疲れのようなので明日はゆっくりするそうだ。ユーリ先輩も忙しそうで会えないみたいだしな。それがいいだろう。
「こ、これが、上級ぬいぐるみなのか!?」
「愛! フラーラお姉ちゃんに上級職になってもらったのです!」
「あの〈天道のぬいぐるみ職人・フラーラ〉先輩をか!? なんということだ。まさか〈エデン〉の専属に!?」
こちらではリカがルルの見せる上級ぬいぐるみに色々やられていた。
上級ぬいぐるみは普通のぬいぐるみと見た目はあまり変わらないが、魔力が混ざり使用感が違うらしい。
抱きしめたときの肌触り、もふもふ感が段違いだというのだ。人形ならば人の肌感とほとんど変わらず温度も人肌だという。ぬいぐるみもぬくぬくらしく、この時期はとてもありがたがられていた。
ああ、もちろん武器としても優秀だぞ。
「ん! ん!」
「ああ。カルアも撫でさせてほしい。ああ、至福。幸せを感じる」
ぬいぐるみにメロメロなリカにとうとうカルアが頭をぐりぐりしながら突撃して撫でられてた。リカの表情はとても幸せそうだった。
レグラムとオリヒメさんは上級職【ウラヌス】と【ネプチューン】に就いた報告に帰ったところ、それはそれはお祭りのような騒ぎになったらしい。
2人で仲むつまじく、いつも一緒にいて過ごしたらしい。
「少しでも離れますとお互い悪い虫が寄ってきますから」
「ああ、そうなんだ……オリヒメさんも大変だな」
「うふふ、私はずっとレグラム様の横にいる理由が出来て嬉しかったですけどね」
オリヒメさんは相変わらず大物。
レグラムもシャキッとした顔つきだが、こっそり聞いたところ「少しプライベートな時間が欲しかった」と小さな声で教えてくれた。今はゆっくり羽を伸ばしてほしい。
ノエル、シャロンはいくつかのパーティに参加、そのうち何度か顔を合わせる機会もあったそうだ。
と、そこまで話したところでシャロンが思い出したようにポンと手を打った。
「あ、そうそう、夜会で〈エデン〉のことがすごい話題になってたんだよ」
「あの五段階目ツリーのスキルもそうだけど、全員上級職っていうのがもうね! すごい話題を呼んでたんだ~」
どうやら貴族界隈でも〈エデン〉の話はかなりホットな話題だったらしい。
「あ~、それでねゼフィルス君、何人か〈エデン〉に取り次いでほしいって子がいるんだ」
「来年ここに入学を希望している貴族女子だよ! 男子もいた!」
「なに! そうだ! その話を詳しく聞きたかったんだ!」
さっき聞きそびれてどっかいった話が帰って来た!
おかえり!
「いったいどんな子なんだ? どこの家の子? 何人だ? 性格はどんな感じだ?」
「ゼフィルス君の食いつきがすごいんだよ!?」
「一応期待しないでねって言っておいたんだけど、必要無かったかな? えっと、説明していくね――」
ノエル、シャロンがとても有益な情報を仕入れてきていたりした。
夜会、侮りがたし。
セレスタンを呼んで取り次いでほしいと言ってきた子の名前をメモってもらう。
…………かなりの数だな。来年の入学数は倍という話だからな。
むむむ、悩ましい。とても悩ましいぞ!
「では、こちらで調べておきます。それと、入学を希望しても必ず希望通りとは参りませんから、学園に入学出来る人物はこの半分くらいでしょうね」
「半分!」
世の中は残酷だ。しかし、致し方なし。
セレスタン頼むぞ、しっかり調べておいてくれ!




