#1026 徘徊型戦!来たれ学園トップの五段階目ツリー!
――――徘徊型ボス〈アーシーゴーレム〉。推奨LVは上級職の25。
最初〈エデン〉のみで〈岩ダン〉を攻略したときは良いところ無しで蹂躙されてしまった、超巨大ゴーレムだ。しかし、こいつはただのゴーレムではない。というかゴーレムかどうかも怪しい。
ゴーレムと言えば人型をイメージするが、〈アーシーゴーレム〉は完全に人型とは無縁の形をしている。言うなれば大地そのものだ。
大地が盛り上がり、俺たちを襲ってくるのである。
大地の津波に呑み込まれれば大ダメージに加え〈拘束〉状態になることもあり、そうなるとなにも出来ずに負けることもある。〈岩ダン〉最強ボスの一角だ。
大地が相手なので決まった形が無く、急所も無い。
普通ならば「これどうやって倒すの?」状態だが、〈ダン活〉にはHPがある。
HPさえゼロにすれば勝てるのだ。
こいつの攻略法はとにかく動き回りながら大地に攻撃しまくる、である。
〈アーシーゴーレム〉は、質量はとんでもないがアホみたいにデカいので動きが遅いのだ。
周りのモンスターも〈アーシーゴーレム〉が動き出すとみんな大地に呑み込まれてしまうので、トレインの心配はなく、ダッシュしながら攻撃して仕留めるのが攻略法。
「ガル、バフを掛けるわよ。『ニャーファイト』! 『ニャープロテクト』! 『ニャーヘイスト』!」
「ガーハッハッハ! 腕が鳴るぜ『超進化』!」
「ガルゼ先輩、こいつは遅いからとにかく動きながら攻撃した方がいいぞ」
「おう、情報感謝だ!」
ライオン顔に進化したガルゼ先輩がライオンの顔のままニコっと笑ってお礼を言ってきた。
んー、何度見てもシュール。
「徘徊型――まるで大地だな。僕も行く、ソトナは離れていてくれ」
「はい。回復は任せてください」
「頼む。来い! 我に仕える英雄たちよ! ――『黄金宮』!」
ユーリ先輩が【英雄王】の五段階目ツリースキルを発動する。
それは召喚。
黄金の宮殿が召喚され、ユーリ先輩の背後に現れた。
続いて宮殿の扉が開かれると、そこから多くの人間の兵が現れる。
「これが、伝説の黄金宮。王に従う英雄たちを呼ぶスキル」
ユーリ先輩が自分が呼び出したスキルを見て様々な感動を秘めた言葉を漏らした。しかしそれも一時のこと、一転してキッと正面へ向きなおる。
「我に続け! あの徘徊型ボスを討ち滅ぼすのだ!」
「「「「「おおおおおおお!!」」」」」
それは英雄戦争。数十の英雄たちがユーリ先輩に従い大地がうねる〈アーシーゴーレム〉へと突撃していく。黄金の盾と鎧、そして武器を装備した英雄たちが大地を蹂躙する。
これでスキルLVが1だっていうんだから末恐ろしいんだぜ。LVを上げて人数が増えたらマジで戦争になっちまう。
「なんだありゃ。ユーリ殿下はまたやべぇスキルに目覚めてやがんな! 俺も続くぜ――『エンペラーバスター』!」
大地を周り込むように走っていたガルゼ先輩が止まり、拳を溜めたかと思うと、それを放った。『エンペラーバスター』は『獣王バスター』の上位ツリー。
山をも吹き飛ばすのではないかというエネルギーの暴力が隆起した大地を抉りとった。
さらには反撃にと隆起した大地が襲ってくるも。
「ぬ? 『獣王に引き裂けぬ物は無し』! ガオオオオオ!!」(ブチンッ!!)
両手を強化するスキルを使い、ブチンッブチンッと引きちぎり始める。
あれ、防御スキルなんだよなぁ。攻撃が来たらブチンと引きちぎるのだ。
相手からしたら「えええええ!?」である。どんな防御スキルだし!
「ほほう、ガルゼも中々パワーアップしておるのじゃ。妾も続くぞ、ふむ、あそこなら誰もおらんしデカいのをお見舞いしても大丈夫じゃろう――『七尾解放・妖炎津波』じゃ!」
ヨウカ先輩の職業は【大妖怪九尾】。
火系統を操る上級職、高の上だ。
解放する尻尾の数で威力が大きく変化する魔法を持つほか、炎を自由自在に操る術に長ける。強大な魔法使い系職業の一角だ。
ヨウカ先輩の尻尾がさらに六尾増えたかと思うと、文字通り山をまるごと燃やすような迫力の炎の津波が大地に放たれる。特大の範囲攻撃だ。
そこら中に立っていた岩も次々炎に飲まれ、辺りは一瞬で火の海と化す。
「ゴオオオオオオ!!」
〈アーシーゴーレム〉は五段階目ツリーの連打を受けて大地を揺らし、雄叫びを上げながら反撃してくるが。
「ふむ。相手は巨大な大地、相手にとって不足は無い。『竜王の構え』! ――は! 『竜爆緋閃剣心』!」
構えを取ったキリちゃん先輩がスッと目を瞑ると、次の瞬間にはカッと目を見開き横一閃! 真っ赤な一閃が光ったかと思うと、隆起した巨大な大地が一瞬で刈りとられていた。
さらに刈りとられた部分が爆発を起こし、光に還っていく。
「ふむ。思った以上に強力な。これが五段階目ツリーなのか」
キリちゃん先輩自身も驚く威力。
本来切断はほとんどのボスでは不可能だが。〈アーシーゴーレム〉は大地そのものなため、燃やし尽くすや切断などが可能であった(ドロップは増えない)。それにしても一撃でそれを成すとは、さすがは竜の名を持つ【紅の竜峰将】。かっこいい!
「キリちゃんだけ良い格好はさせないよ~! 見よ! 私の新技! 千剣の形態変化だ――『零千』!」
カノン先輩がそのスキルを唱えると、空に集まった千の剣がとある形に合体する。
その姿は戦闘機。ご丁寧にプロペラの部分まで剣で表現されている。
「いっけー!」
剣プロペラが回転すると、高速で飛ぶ『零千』。
そしてドドドドッと音がすると、零千の機銃っぽいところから剣が発射されていた。高速で大地に無数の剣が突き刺さりまくる度に大地が吹き飛び〈アーシーゴーレム〉のHPも削れていく。
すんごい威力だ!
ちなみにダンジョンの地面は破壊不能オブジェクトで吹き飛ばないので、今吹き飛んでいるのは全部〈アーシーゴーレム〉の一部だ。
「ゼフィルス、見てないで私たちも行くわよ。あのままだとハクやソトナ先輩が逃げ切れ無いわ」
「おっとそりゃマズいな。あれ攻撃の範囲が広すぎるんだよ。シエラ、あっちでいいか?」
「ええ、道を開いて。ゼフィルス」
「任せとけ! 『フルライトニング・スプライト』!」
「行くわ――『完全魅了盾』! 『聖四方盾』!」
今回、俺たちは援護に回る。
五段階目ツリーに至ってみんなウキウキが止まらない様子だからな。
つい攻撃に傾倒しがちになっている。
実に楽しそうだ。フォローは任せとけ!
俺が攻撃して雷の花火を咲かせ周囲の大地を抉ると、シエラがそこに走って大地に盾を突き立て強制的にタゲを取る。続いて自分を中心とした四方を守る五段階目ツリーを発動。
〈アーシーゴーレム〉が周囲への攻撃をやめ、シエラに集中攻撃を加えるが、シエラは立っているだけでその攻撃を防いでいく。シエラを中心とした四方を守る四つの小盾が強い。
「今だ! たたみ掛けていくぞ!! 『太陽の輝き』! 『陽光剣現』! ―――『サンブレード』!!」
「おっしゃあああ! 『破獣王咆哮』! ガオオオオオ!!」
「ありがたく行かせてもらおう。――『英雄オーバー』! 『王剣閃』!」
シエラが完全にタゲを奪っているうちにたたみ掛ける。
ガルゼ先輩がまた吠えると咆哮を発射。周りの大地が吹き飛んでいく。むちゃくちゃかっこいい。
ユーリ先輩は次の攻撃の威力を特大上昇させる『英雄オーバー』を使って、五段階目ツリーの特大の一撃を放つ『王剣閃』でぶった切った。
「ゴオオオオオオ!」
〈アーシーゴーレム〉も反撃に大地を揺らし、大地の津波を起こし、隆起した岩で殴ってくる。強敵、のはずだ。しかし、結果はボコボコ。
〈アーシーゴーレム〉は四段階目ツリーを前提にしてあるボスだからな。
大きすぎて動きが遅いので五段階目ツリーでの対処が間に合うと防がれ、こうなってしまうのだ。
そういえば前回の〈アーシーゴーレム〉もこんな感じに常にボコボコにして倒したっけ。
あの時はラナが大地を宝剣で縫い止めたんだ。大活躍だった。
それからも五段階目ツリーのオンパレードで攻撃。
シエラとミミナ先輩、ソトナ先輩と俺がフォローする中、他の6人が攻撃を叩き込みまくり、反撃もあって一部危ないこともあったものの順調にHPを削りまくって、とうとうその時を迎える。
「トドメだ! 『グランドクロス・ゼロ』!」
最後のトドメを刺したのはユーリ先輩だった。
複数の『グランドクロス』が「ズダダダンッ!」とヒットし、〈アーシーゴーレム〉はHPをゼロにしてその動きを停止したのだ。
「ゴ……オオ…………オ?」
そして大地そのものが光に包まれたかのような膨大なエフェクトを発生させて〈アーシーゴーレム〉は消えていった。
大地から溢れた光の奔流が収まると、ユーリ先輩の前には〈金箱〉が残されていた。
「うぉしゃああああ!」
「おお! 〈金箱〉だ!」
「〈金箱〉じゃねぇか!!」
もの凄くテンションが上がった。
徘徊型の〈金箱〉だぞ! テンションが上がらないわけが無い!
見ろ、ユーリ先輩もガルゼ先輩もむっちゃテンション上がってる!
そして中身は―――まさかの〈フルート〉。
……あ、あれ!?
ちょ、ちょっと遅かったんじゃないかな?
レベル上げ周回終わっちゃったぞ!?
でも〈フルート〉だから許す!




