#993 上級職ランクアップ! フィナリナ編!
〈上級転職〉も4人が終わり最後に残ったのはフィナだった。
「よろしくお願いします、教官」
「こっちこそ、よろしくな」
フィナは相変わらず教官呼びだ。2学期は俺の生徒だったからな。
冬休みに突入してしまったことで俺の任期も終わり、選択授業は無くなってしまったのでフィナはとても残念がっていた。
珍しくエリサに甘えていたからな。
横に並んだエリサの首元に頭を寄せてくっついていたのを見たときはびっくりしたものだ。
ちなみにその時のことはフィナにはバレていない。エリサが人差し指を当てて「しー」としたのでそのまま退散したからだ。こっそり覗いていたかったが我慢した。
しかし選択授業が終わってもフィナの教官呼びは変わらず。
どうも教官呼びが定着したようだ。1年生のテスト勉強も教えたのが良かったのかな?
エリサとフィナは新学年で3組に入るほど勉強が出来るのだが、本人は1組に入りたいらしくテスト期間中に勉強を教えてほしいとやって来たので了承した形だ。
今度のクラス替えは俺たちが2年生に上がったときだ。
この時〈新学年〉と1年生は合流する手筈になっている。
エリサが「一緒のクラスになりたいじゃない。もちろんフィナちゃんも一緒よ?」「分かっています姉さま。私たちは一緒に1組に入りますから」と俺に宣言。珍しくエリサと意見が揃っていたのを覚えている。
「本当に待たせたな。エリサを先に上級職にさせてしまったし」
「大丈夫です。姉さまのAランク戦での活躍は私も嬉しかったですから」
「……今日はエリサに対して素直なんだな?」
フィナがエリサを褒めるのが珍しくついそんなことを聞いてしまう。
「私はいつも素直ですよ。ただ褒めると姉さまは調子に乗るので本人が居ないところで褒めています」
「本人も褒めてあげて?」
エリサはいつも涙目だよ?
あまりにもエリサが哀れでついそんなことを言ってしまった。
「……考えておきます」
「おう。あともう少しエリサを大事にしてやってくれ」
「私は姉さまを大事に思っていますよ? ただ大事にするかは別の話です」
「どういうこと!?」
いや、多分可愛い子には旅をさせろ的な意味だろう。フィナは姉に厳しいな~。
いかんな。フィナとこうして1対1で話すのは久しぶり? もしかして初めて? いつもエリサが一緒にいたし。そのためか話が弾んで脱線してしまう。
「こほん。じゃあ始めよう。フィナに就いてほしいのは【アークエンジェル】の上級職。【ミカエル】だ」
「【ミカエル】。最も有名な天使の名ですが。職業だったのですか?」
「【ミカエル】の力が宿った職業。みたいな感じだな。【アークエンジェル】ルートは枝分かれが多いが、その中でも最強の職業だ」
フィナが静かに驚いている。
「天使」カテゴリー最強の一角である【ミカエル】は上級職、高の上。
非常に強力なスキルや魔法、回復を使える王道にして最強、オールマイティで様々なポジションで活躍出来る単純に強いを体現した職業だ。
またレグラムとは違った飛行技も使えるようになるため、活躍出来る場所が広く、飛行モンスターにも対処出来るのが魅力的。
一点特化型ではないものの、攻撃、防御、回復と、どこをやらせても強いのでゲーム時代はかなり人気の職業だった。
ちなみにフィナはタンクのポジション。回復も使えるので半端ない防御力を持ち、攻撃力も備えているため俺と同じくオールポジションで活躍することが出来る。そういう風に育てていた。
「今までとポジションは同じだ。単純に今のまま強くなると思ってくれ。エリサのように派手な活躍は難しいが、強大な相手に対して非常に頼りになる。ボス戦の主軸としても扱われるな」
「……なるほどです」
「ただ戦闘には大きな変化がある。それが空中戦だ。戦い方は三次元の空中戦が多くなる。空中戦を教えてあげられる人がいないだろうから自力で練習するしかないが、頑張ってほしい。俺も戦闘のやり方は教えるから」
「またシエラさんが聞いたらツッコまれるような話ですね。ですが教官は私の生涯の教官です。ご指導のほどよろしくお願いします」
「はは、指導しなくても問題無いくらい【ミカエル】は強いんだけどな」
【ミカエル】はフィナの戦闘のやり方に合っていると思う。
だからこそ選んだとも言えるけどな。
【ミカエル】の戦い方は特殊で先ほども言ったような三次元の動き、空中戦を得意としている。
ただ、アタッカーだけだと勿体ない。いやそれでも十分強いんだが。
【ミカエル】を使うならやっぱりタンクだ。なんと盾タンクに加え空中移動の避けタンクまで兼任出来、さらにはアタッカーとして敵のHPを削りながらヘイトを稼ぐことも可能、さらに天使特有の自己回復が使えるので硬く戦線から崩れないというとんでもない職業だ。避けタンクは装甲が紙なので当たると弱いのが標準なのに、当たってもへっちゃらだというのだからとんでもない。
基本は避けタンクをしながらのアタッカー。しかし、攻撃を受けても崩れないタンク。
この対応力の異常な高さが【ミカエル】の最大の魅力だ。
というわけでフィナには是非この戦い方を身に着けてもらいたい。
「フィナは【ミカエル】に就いてもらえるということで大丈夫か?」
「はい。私の〈上級転職〉は全て教官にお任せします。【ミカエル】も強そうですし、否はまったくありません」
「そう言ってくれると嬉しいぜ。じゃあ、フィナに渡すのはこれ〈天聖の宝玉〉だ」
「ありがとうございます、教官」
【ミカエル】は当然のように〈天聖〉を使う。
〈天聖〉の数も残り少ない。だけどどこにも売ってないんだよなぁ。なんとかしないと。
俺が渡した〈天聖の宝玉〉をフィナがクールに受け取る。
他のメンバーが戸惑いを見せていたのに、反応がちょっと寂しい。
いや、逆にフィナらしいか。
「〈天聖の宝玉〉、使います」
すぐに〈天聖〉を使うと、粒子になってフィナの体に入り込んでいく。
フワッと長い金髪が浮き、光の粒子を受け入れるフィナの様子は、幻想的ですごく綺麗だ。後ろで見守る女子も騒いでる。
「終わりました。教官」
「じゃ、次だが【ミカエル】と言えばやはりこれ、天秤だ」
「天秤ですか?」
重さを量るアレだ。
アイテムの天秤も存在するが、これはただのインテリアアイテムだな。
銀色に装飾された天秤を渡すと、首を傾げながらも受け取るフィナ。
「後はもう条件を満たしているから〈上級転職チケット〉を持ってタッチするだけだ。これ、チケットだ」
「はい。ありがとうございます。教官」
〈上級転職チケット〉を渡すとそれもクールに受け取るフィナ。
さっきから言葉が堅い。クールだと思っていたけどこれはもしかして緊張しているだけか?
表情とか変わらないから分かりにくいけど、フィナも〈上級転職〉に緊張しているようだ。
「フィナ、リラックスだ。落ち着いてタッチすれば良い」
「あ……はい。気をつけます……」
つい頭を軽くポムポムしてしまった。フィナの頭がちょうど良い位置にあるのでつい。
はっ! 視線を感じる。特にカタリナがとても羨ましそうに見ている気がする。
いや、カタリナはそんな視線はしないだろう。気のせいだと思う。
そっちを振り向けないので〈竜の像〉の方へ向く。
フィナは幸いにも俺のポムポムで緊張が解れたのか、いつも通りクールに〈竜の像〉へと近づいていった。
そしてタッチ。
「! ありました【ミカエル】です」
「よし、タッチだ」
「はい」
フィナが【ミカエル】をタップすると他のジョブ一覧が消え、【ミカエル】の文字がフィナの上で輝いた。
そして起こる薄緑色のエフェクト。覚醒の光だ。
「「「わあ!」」」
カタリナ、ロゼッタ、トモヨが感嘆とした声を上げる。覚醒の光は何度見ても良いものだ。
覚醒の光の中で少し浮き、髪や制服がフワッと揺れているフィナは、なぜか俺のことをジッと見つめてこう言った。
「教官、どうですか? 何か一言お願いします」
もう完全に緊張が解けたようだな。いつものフィナが戻ってきたようだ。
ご要望とあらば答えよう。
俺はフィナの要望に答えた。
「とても可愛いぞ、フィナ」
「! ありがとうございます、教官」
まるで人形のようなフィナが可愛い。もうむっちゃ可愛い。
エフェクトが終わり、光が収まり出てきたフィナは、少し顔が赤かった。
そんなフィナにお祝いの言葉を贈る。
「おめでとうフィナ。これでフィナも上級職だ」
「はい。ありがとうございます教官。これからもよろしくお願いします」
後書き失礼いたします! お知らせ!
〈ダン活〉のグッズタペストリーが先日完売いたしました!
まさか売り切れるとは思っておらず、とてもビックリいたしました!
購入してくださった皆様、ありがとうございます!
また「再販はいつになるのか」について要望がありましたのでこの場を借りてお答えいたします。
出版社の担当者さんにお聞きしたところ、
「再版を現在検討中です。詳細が決まりましたらまたお知らせいたします」
とのことでした。
こんなに早く売り切れるとは完全に予想外だったらしく。当初は再販未定とのことでしたが、前向きに検討中とのことです。ただ少し時間が掛かるとのことでした。
また、決まりましたら後書きか近況ノートでお知らせいたします!
今後も〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!




