#991 上級職ランクアップ! ロゼッタ編!
「次は誰が行く?」
「私でお願いいたします」
「ロゼッタだな。了解」
トモヨの着替え中にじゃんけんか何かで決めたようで、次は【姫騎士】のロゼッタだった。
前に出るロゼッタと入れ替わるトモヨ。
「頑張ってねロゼ」
「頑張る必要は、多分無いと思いますよ?」
そんな会話が2人の間で交されていた。
「さてロゼッタ、前に大面接で伝えていたとおり、【天守護の騎士姫】に就いてもらうということで大丈夫か?」
「もちろん大丈夫です。よろしくお願いいたします」
ロゼッタの上級職は大面接時に話してあったのでスムーズだ。
ギルド〈エデン〉にはロゼッタを含め【姫騎士】が3人もいた。
姫の【騎士】ルートが【姫騎士】しか無かったので仕方ないところ。
そして【姫騎士】は上級職になるとき細かくばらける。そこで個性を伸ばすのだ。
そして今までエステルが【戦車姫】、アイギスが【竜騎姫】に〈上級転職〉している。アタッカー【騎士】枠はもう十分だろう。
ロゼッタに就いてほしい職業は【騎士】系のタンク【天守護の騎士姫】だ。
アタッカーの【姫騎士】からがっつりタンク系に転換し、メインタンクでありながらアタッカーもこなせ、自己回復まで使えるようになる優良職。
〈乗り物〉の〈馬車〉〈戦車〉にも適性があり、〈イブキ〉を十全に使用出来る適性を持っている。
さらにはエステルの『戦車スラスト砲・解禁』とは別の戦車スキルも保持している。ギルドバトルでは猛威を振るっていたためゲーム〈ダン活〉でもかなりの人気を誇っていた。
ロゼッタもタンク枠として育成してきたので問題無いとのこと。
なら、早速〈上級転職〉してしまおう!
「まずは〈天槍の宝玉〉だ。なぜ〈天剣〉じゃないんだ、と思うかもしれないが、【騎士】系は〈天槍〉なんだよなぁ」
「?」
ロゼッタの武器は片手剣に大盾だ。槍では無い。でも使うのは〈天槍の宝玉〉だ。不思議だろう?
そう思って振ったのだが、ロゼッタは首を傾げただけだった。げふんげふん。
ま、まあ。騎士は〈天槍〉が当り前だよな。
「いやなんでもない」と誤魔化してから〈天槍の宝玉〉をロゼッタに渡す。
「んじゃ、これを使ってくれ」
「あ、ありがとうございます。こんな貴重な物を」
「うーん、そうなんだよな。結構貴重なんだよなぁ〈天槍〉……」
恐る恐るという感じでロゼッタが〈天槍の宝玉〉を受けとる。
〈天槍〉は【騎士】系の上級職、高の上に就くために必要な〈宝玉〉だが、この世界ではかなり知られているらしく俺はこれを四つしか確保出来なかった。どこを探しても見つからなかったんだ。
最初にエステル、次にリカへ使って、アイギス、ロゼッタで使い切り、ついに無くなってしまった。
できれば来年の新入生用にストックが欲しいが、現在学園では〈心〉〈結晶〉〈宝玉〉の価値が爆上がりして、さらにどこも売り切れ状態。
〈心〉系はまだソフィ先輩が生産しているので流通しているが、〈結晶〉と〈宝玉〉に関してはもう店売りではまったく見なくなってしまったほどだ。
おかげで〈天槍の宝玉〉が手に入る見込みが無い。これもなんとかしたい。
ま、貴重だからといって使わない理由にはならない。
「問題無いから使ってやってくれ」
「は、はい!」
〈宝玉〉の中でも〈天槍〉は使いどころがハッキリしている分価値が高い。というかこの世界では一番高い〈宝玉〉と言えば〈天槍〉のことを指す。
それは〈心〉〈結晶〉〈宝玉〉の中で最も価値が高いものでもあり、いくら騎士爵の姫であっても躊躇してしまうらしい。
かなり緊張の色を滲ませたロゼッタが〈天槍〉の宝玉を見つめるがなかなか踏ん切りが付かない様子だ。
「頑張れロゼー」
「「「頑張れー」」」
「は、はい! つ、使います。――トモヨさんの言っていたことは本当でした。頑張ります」
みんなの応援に押され、ようやく踏ん切りが付いたロゼッタが〈天槍の宝玉〉を使用する。
サーッと光る粒子に溶けた宝玉がスッと使用者の体に吸い込まれていく姿はいつ見ても幻想的だ。
しかし、使った本人であるロゼッタは楽しむ余裕が無さそうだ。
「ああ。使ってしまいました。ドキドキが治まりません」
「大丈夫だって。エステルやリカ、アイギスも使ってるんだぞ?」
「それは大丈夫の理由にならないかと思いますよ?」
何やら疲れたような声色で俺にそう返すロゼッタ。
なぜか〈上級転職〉の最初の段階ですでに摩耗している様子だ。
まあ、〈天槍〉の今のお値段を知っていれば分かりみかもしれない。
もしかしたら騎士的な理由もあるのかもしれないな。
「まあまあ、じゃあ続いての条件だ。〈「天」と名の付いた盾を装備する〉だな。これは俺が前に使っていた〈天空の盾〉を貸そう」
「……ありがとうございます」
天と名の付く盾って上級装備がほとんどなのだが、初心者ダンジョンで簡単に手に入る方法が見つかってからは満たすのが楽になったんだよなぁ。
またステータスでは〈350以上のVIT値と650を超えるHP〉が要求されるがこれもクリア。
【姫騎士】は特殊でステータスの制限が〈STR+5〉だけなのでVITやHPへ意識してステ振りしていかなければタンクが出来ない。これ、要注意な。
「これで準備完了だ。この〈上級転職チケット〉を持って〈竜の像〉へタッチしてみてくれ」
「行きます」
左手が盾で塞がっているので右手でチケットを受け取ると、ロゼッタはそのまま〈竜の像〉にタッチした。そして出るジョブ一覧を見てロゼッタの目が輝く。
「! ありました【天守護の騎士姫】です!」
「よーし、タップだ!」
「はい!」
ロゼッタが【天守護の騎士姫】にタップするとクローズアップし、次いで覚醒の光が発生する。
「「覚醒の光!」」
「本当に出た!」
カタリナとフィナの声がハモり、トモヨのビックリした声が部屋に響いた。
どうやらみんなも〈エデン〉では覚醒の光が起きやすいという話を聞いていた様子だ。
当の本人であるロゼッタは一番落ち着いていた。
ビックリしすぎて逆に冷静になってしまったのかもしれない。
「【天守護の騎士姫】は覚醒の光が発生すると聞いたことがありましたが、本当だったのですね」
なるほど、どうやらロゼッタは最初から知っていた組だったらしい。
でも驚いていないわけでは無いようだ。
「ロゼ~こっち向いて~」
「はい」
覚醒の光に包まれて少し浮いた状態のロゼッタが顔だけカタリナに向けて手を振っていた。できれば笑顔が欲しいな。
そうこうしている間に光が収まっていき、ロゼッタの足が地に突く。
「お、終わってしまいました。貴重な体験でした」
「良かったなロゼッタ。そしておめでとう。これでロゼッタは【天守護の騎士姫】だ」
「はい。ありがとうございます」




