#990 上級職ランクアップ! トモヨ編!
「次は誰にする?」
「トモヨさんで」
「え、ええ!? 私まだ落ち着いてないよ!?」
セレスタンの〈上級転職〉が終わって聞くと、カタリナがスッとトモヨを差し出した。
トモヨがあわあわしているが、俺は一つ頷いてトモヨを誘う。
「じゃあ、トモヨ、前に出てきてくれ」
「わ、わあ~。本当に?」
「おうよ。しっかり良いのに就かせてやるぞ」
「た、頼もしい!」
トモヨは〈新学年〉組ではないのでセレスタンの次に長く今の職業を務めていた。順番的にもトモヨが妥当な所だな。
トモヨも同じことを考えていたのか、少し緊張している様子だがしっかり前に出てきた。
うむ、その方が良いぞトモヨよ。
何しろ後ろの3人は高の上。つまり〈上級転職〉すると、な。
次のトモヨがやりにくくなるだろう。
その意味でもトモヨはさっさと〈上級転職〉しておいたほうが良い。
「よ、よろしくお願いします!」
「おうよ!」
ピンと背筋を伸ばして立つトモヨに任せろと請け負う。
あまり下を見ないようにしなければ。トモヨはエステルと同じくらい胸が大きいのでピンと背筋を伸ばしたりすると色々危ないのだ。
気をつけよう。
「トモヨに求めているのはタンクだ」
「はい!」
「【堅固盾士】から高位職の上級職になるルートは三つ、【ハイガーディアン】、【シールドマスター】、【アルティメット・イージス】だ。正直どれも強いが、トモヨは希望はあったりするか?」
「え、えええ?」
俺は逆にトモヨに聞いてみた。
トモヨは貴族の姫ではないので割とどれを選んでも構わない。
正直【ハイガーディアン】も【シールドマスター】も【アルティメット・イージス】もどれも違ってどれも良いという感じなので、強い弱いというよりもプレイヤーの力量や好みで選ぶことが多かったのだ。
ちなみに俺は【シールドマスター】か【アルティメット・イージス】推しだな。
【ハイガーディアン】は地味なスキルが多い堅実な職業だ。
それはそれで良い。悪くはない。
だが、【シールドマスター】や【アルティメット・イージス】のスキルは派手で見ていて気持ちが良いので俺好みだった。もちろん性能面でも。
選ぶとすればどちらかだったな。
「はい! ゼフィルス先生、これは何が違うの?」
「うむ。一つずつ説明して行くとだな――」
久しぶりのゼフィルス先生の出番だ、俺はトモヨに説明していく。
盾にも色々ある。得意不得意もある。
無難は【ハイガーディアン】。所謂初級者用の安定型だ。挑発スキルを大量に持っているためヘイト稼ぎが優秀。とりあえず挑発スキルを連打しておけば壁になる職業という認識だ。パッシブでステータスを上げるスキルも充実しているのでVITとRESに振りまくって棒立ちで出しておけば良しという優しい設計になっている。
【シールドマスター】はシエラの【操聖の盾姫】の下位互換。
自在盾が無い【操聖の盾姫】みたいなもんだ。
防御スキルが充実していて優秀な玄人向け。遠距離に対抗出来なくもないが、やはり一番得意なのは近距離盾。特に物理ボスにめっぽう強い。
盾を活かしたスキルが多く、盾職と言えばこれだという動きをするため盾好きの一定層から人気が高かった。
そして最後の【アルティメット・イージス】は堅い。硬いでもあるが堅い。
その最も代表的な部分が状態異常の『無効』系を多く取得する部分だろう。
耐性では無く、無効だ。状態異常に対し、圧倒的に強いタンク、それが【アルティメット・イージス】だ。
防御スキルや挑発スキルの面で他の2職より劣るものの、ノックバックやダウンにも強い耐性を持ち、崩れないタンクとしてとても優秀で人気が高かった。
防御スキルの見た目も派手で遠距離攻撃に対抗したものが多く、味方に被害を出しづらかったのも人気理由だな。
そんな感じに説明する。
「ううーん、なるほど。そう聞くとやっぱり【アルティメット・イージス】が良さそうかな。私にあっている気がする」
「本当に良いのか?」
「はい! 状態異常の無効は魅力的! 【シールドマスター】はシエラさんと被るし、【ハイガーディアン】は合わない気がするので、私は【アルティメット・イージス】の道を選ぶよ! お願いしますゼフィルス先生!」
「良い返事だ! なら、始めるか!」
なんだか1学期の時トモヨが生徒だった頃を思い出すノリで進行。
【アルティメット・イージス】は上級職、高の下だ。
なので条件はあまり多くない。
〈心〉系だけ必要なので〈守りの心〉を渡し、続いて装備を変更する。
「全部の状態異常に対応した装備?」
「そうだ。まあ上級ダンジョンの防具なら簡単に揃うな。んじゃ、俺とセレスタンは外に出ているから」
【アルティメット・イージス】は〈ダウン〉以外の全ての状態異常の『耐性』スキルを持つ装備を着用するのが条件だ。上級の装備なら余裕だな。
ちなみに〈ダン活〉では〈即死〉も状態異常の一種だ。食らうと死亡ではなく戦闘不能になるからだな。
耐性スキルのLVは特に気にしなくていいので適当な装備をトモヨに渡し、男衆は測定室から出てトモヨが着替えるのを待つ。
「どうぞ~」
「おう、開けるぞ?」
「はい、入っていいですよ」
どうぞと言われても再度確認、これ紳士の義務。
中に入るとアーマー系で身を包んだトモヨがいた。
「うーん、これ、可愛くないね」
「男女共用タイプの装備だからな」
フルプレートでは無いが、ほぼ全身鎧だしな。
女子の物はとある部分のサイズが合わないんだ。すまん。パーツ系の装備で許してほしい。
トモヨに〈上級転職チケット〉を持たせて〈竜の像〉をタッチしてもらう。
「あ、あった!」
「間違えないようにな」
「はい!」
トモヨは一度止まって深呼吸すると、恐る恐る【アルティメット・イージス】をタップした。
他の一覧がフェードアウトして消え【アルティメット・イージス】だけが残ってトモヨの上に輝く。
「おめでとうトモヨ。これでトモヨも上級職だ」
「「「「トモヨ(さん)おめでとうございます!」」」」
「みんなありがとうー!」




