#961 結論!攻めて来ないなら攻めればいいじゃない!
場所は〈エデン〉拠点。
〈中毒メシ満腹中〉を下し帰還した俺たちは、クールタイムが明けるのを待ちつついつ襲撃が来ても対処出来るように待ち構えていた。
〈竜の箱庭〉に映るのは活発に動き出した他のギルドたち。
だが、しばらく経っても〈エデン〉は平和だった。
「誰も攻めて来なーい! なぜだー!」
「なぜだ、ではないゼフィルス。わかりきったことだろう」
「たはは~、私が他のギルドだったら間違いなく避けるかな~」
俺の嘆きに即座にメルトがやれやれと首を振り、ミサトが苦笑する。
そう、なんと残念な事に〈拠点落とし〉が開始されてもう40分が経つのに未だにどこからも襲撃が無いのだ。
俺とラナはワクワクしながらリーナの〈竜の箱庭〉を眺めていたというのに、だーれもラナの宝剣の範囲内に入ろうとしない。おかしいな。
いや、斥候と思わしき人たちは入ってくる。まあすぐにズドンして終わるのだが。
あれ? もしかしてそれが原因か?
「ゼフィルスはなんで首を捻っているのかしら?」
「まあ、ゼフィルス殿ですから」
シエラが若干ジト目、エステルも苦笑していた。
シエラ、もうちょっとしっかりジト目ください!
「くっ! このままでは〈エデン〉は攻められもせずに試合が終わってしまう! それでいいのか!?」
「? いいんじゃないの?」
「カルアの言うとおりだな。普通は攻められないに越したことはない。それに〈エデン〉の点はトップ。ここでこうしていても間違いなくAランクギルドの仲間入りを果たせるだろう」
俺の熱く迸る言葉にカルアが純粋に首を傾げ、リカがうむと頷いた。
そんな~。
まあ、確かにこのまま何もしなくても勝てちゃうのがなぁ。いや、そんなのつまらん!
というかそれじゃあ1位取れないし!
「いやいやみんな、考えてみてくれ。Aランク戦だぞ? 本当にこのまま終わっていいのか? つまんないだろ?」
「ギルドの重要な出世が掛かっているこの〈学園出世大戦〉で、つまんないだろと言えるのはゼフィルスくらいだろうな」
「うふふ、ですが言いたいことは分かりますわね。私もレグラム様の活躍、見たいですし。このまま終わってしまうのは少し勿体なく思います」
「おお! だよなだよなオリヒメさん! というわけだ」
「どういうわけよ」
「つまり、攻めて来ないのなら俺たちが攻めれば良いじゃないか、ということだ!」
俺の説得にレグラムがフッと笑みを浮かべ、オリヒメさんはニコニコレグラムに熱い視線を送りながら俺の意見に同意してくれる。
さすがはオリヒメさんだ。
しかしシエラのジト目が深まった。――やったぜ!?
「うーん、私はAランク〈拠点落とし〉って初めてだし、もうちょっと活躍したいわ! ご主人様が行くなら付いていくわよ!」
「私も! ミーちゃんたちをもっと遊ばせてあげたいかも!」
お、〈アークアルカディア〉から昇格初参戦組のエリサとフラーミナは暴れたい様子。
「私も行くよ~」
「うんうん。役に立つよ~」
「もう少し活躍したい気持ちはあるね」
同じく仲良し3人組も賛同する。俺もサチたちには是非活躍してほしいと思っている。
「私も出たいわ! やっぱり待っているだけじゃダメよ。私も攻めるわ!」
「守りの要のラナが出ちゃうの!?」
はい。ラナも出陣です。ってちょっと待とうか。
「拠点の守りはどうするんだ?」
「そんなの、シャロンたちに任せるわ。十分でしょう?」
「いや、超遠距離攻撃はどうすんだよ」
「待ってても来ないもの! 山の中心部は躱されちゃうし。というか斥候を残さず倒しちゃうから誰も来ないのよ!」
「ラナだって楽しく斥候狩りしてたのに!?」
そう、ラナの宝剣の射程はピラミッド山の中央に届く。
だが、中央の5×5まで山の谷を進む関係上、宝剣は直線でしか放てない。東西に行かれたら狙えないのだ。
ピラミッド山の中心部は結構人が出入りしていると〈竜の箱庭〉に映っているのに、狙えないのでラナはやきもきしているのだ。
開けたところでは無類の強さを発揮する宝剣も、狭ければ力を発揮できない。
「というわけで〈白の玉座〉はタバサに任せるわ」
「え? 私? 使って良いの?」
「もちろんよ。元々タバサが使っていたんでしょ? それに、中央のデカマス山は私よりもタバサの召喚の方が相性が良いわ」
「なるほど。ラナにしては良いアイディアだ」
「ちょっとゼフィルス!」
「げふんげふん。それでどうだ? タバサ先輩、〈白の玉座〉、使ってみないか?」
「……もちろん。任せて。全力で支援するわ」
「決まりだな」
実に良い。
ラナの発言には驚いたが、理にかなっている。
正直このフィールドで東西からの侵攻が無いならラナよりタバサ先輩の方が相性が良い。
〈白の玉座〉を巡っては割とデリケートな自覚があっただけに、あっさり手放したラナは大物だと感じた。
タバサ先輩も感慨深そうにラナが退いた後の〈白の玉座〉を眺め、腕置きの部分を優しく撫でてからゆっくりと腰掛けて装備する。
長年連れ添った相棒が戻ってきたような。そんなじんわりした様子がタバサ先輩から感じられる。
それを見て、ラナはなんだか優しい瞳をしていたのが印象的だった。
まさかラナ、最初からタバサ先輩に〈白の玉座〉を預けるつもりだったのか?
ふ、ならラナの行動に敬意を払わなくては。ラナが出撃するのを許可しよう!
「よし、攻めに出たい人が順調に増えているな!」
「やっぱりこうなるのね。分かっていたけど」
シエラが仕方ないわねといった様子で言う。
「やっぱダメかシエラ?」
「ダメじゃ無いわよ。ゼフィルスがやりたいなら、それをサポートするのがサブマスターの私の役目よ」
「おお!」
「確かに、今の戦力なら多少抜けてもかなりの間持つし、自由行動も有りだと思うわ」
シエラ! 俺はシエラを信じてた!
ふははは! サブマスターのシエラとギルドマスターの俺が「うん」と言えばそれはもう決定よぉ!
「でも条件があるわ。それはやり過ぎないこと。無駄に恨みを買うことになるわ」
「ん? ああ、そうだな。やり過ぎないように平等を意識しよう!」
シエラの提案に俺は頷く。
確かに、すでに勝ち抜きが決まっているギルドに落とされたら悔しいより恨みの方が強くなるかもしれない。
1人狙いダメ、みんな平等にアタックを仕掛ければ、なんで俺だけとはならず、いいぞもっとやれと好印象も植え付けられて恨みも軽減できる。
その辺を注意しなさいとシエラは言っているのだ。
俺は頷いてからメンバーたちに振り返る。
「聞いたなみんな!? これから攻めに出るぞ! 最低限のメンバーはここに残って防衛、そしてグループを作って攻めに出る! あ、攻める人は順番だからちゃんと交代もあるので防衛担当になった人も安心してほしい。では、決を取るぞ! まずこのまま防衛に専念したい人ー!」
というわけで遊びに――ではなく攻めに出ることは決定。
もちろん希望者のみだ。
とはいえほとんどの人が攻めに出ることを希望し、防衛に専念したいと言ったのはシエラ、リーナ、タバサ先輩、シャロン、ラクリッテだけだった。
後の20人はローテーションを組んで攻めに出るとしよう。
う~ん、5人1チームが慣れているし良いだろうか。
という提案の元、俺たちは5チームに分かれ、シエラチームが防衛確定、他4チームで攻めに出ることにしたのだった。
まずは、3チーム出ようか。
もちろん俺のチームは確定な!
Aチーム:ゼフィルス【救世之勇者】、アイギス【竜騎姫】、ノエル【声聖の歌姫】、エリサ【睡魔女王】、フラーミナ【傲慢】
Bチーム:ラナ【大聖女】、シズ【戦場冥王】、パメラ【ナンバーワン・くノ一】、レグラム【ウラヌス】、オリヒメ【ネプチューン】
Cチーム:メルト【賢王】、ミサト【色欲】、エステル【戦車姫】、ルル【プリンセスヒーロー】、シェリア【エレメンタラーハイエルフ】
Dチーム:サチ【神装剣士】、エミ【神装本士】、ユウカ【神装弓士】、カルア【スターエージェント】、リカ【先陣の姫武将】
Eチーム:シエラ【操聖の盾姫】、リーナ【姫総帥】、タバサ【メサイア】、シャロン【難攻不落の姫城主】、ラクリッテ【ラクシル・ファントム】
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