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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第二十章 〈学園出世大戦〉勃発、Aランク戦〈拠点落とし〉!

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#945 Sランク戦〈獣王子ガルゼ〉VS〈悪食のロデン〉




 Sランクギルドバトル――〈拠点落とし〉〈30人戦〉。

 各30人のメンバーたちが争いポイントを取り合う〈拠点落とし〉が、ついに始まった。


 第一アリーナのフィールドにはそれぞれ東西南北に拠点があり、四つのギルドがそれぞれに配置されている。

 いくつもの障害物が置かれ――いや、もはや第一アリーナのフィールドに関しては障害物にあらず。

 ただの壁、登ることも出来ない不可侵エリアとそれ以外の道のようになったフィールド。


 第一アリーナではこれまでの〈拠点落とし〉のフィールドとはガラリと雰囲気が変わり、マスに障害物が置かれているのではなく、フィールド全体に被さる障害物に一部通れる道が敷いてある、迷路型フィールドが主流となっている。そしてちょっとした空間、広場は全てデカマスだ。


〈防壁〉の設置は自由、〈地雷罠〉も自由。待ち伏せ、強襲、なんでも出来る。

 故に非常に難易度の高いフィールドだ。


 それに――Sランク戦〈拠点落とし〉初参加となる〈カオスアビス〉がまず食われた。


「ああああっとーー! 〈カオスアビス〉のアタッカー陣に大打撃ーー!! 〈獣王ガルタイガ〉による罠に引っかかったーー! 地雷で吹き飛び浮き足立ったところに容赦なく攻め込み討ち取っていく〈獣王ガルタイガ〉のメンバーたちーー!」


「さすが、傭兵業を営むギルドです。なんと鮮やかな罠からの襲撃でしょうか。次々〈カオスアビス〉のメンバーたちを討ち取っていきます」


 そう実況席から解説するのは人気実況者、キャスとスティーブンだった。


 彼、彼女らの言うとおり、試合開始から12分、状況が大きく動いた。

 最初に激しくぶつかったのは〈カオスアビス〉と〈獣王ガルタイガ〉。


「なんとなんと! 〈カオスアビス〉の12人いたアタッカーが軒並み倒されたーー!? 生き残り皆無って〈獣王ガルタイガ〉強すぎーー!?」


「〈獣王ガルタイガ〉は14人の構成でしたが、2人しか欠けていません。さすがですね」


「会場は大きく盛り上がって〈獣王ガルタイガ〉コールが鳴り響いています!」


「〈獣王ガルタイガ〉の強さばかり気を取られていますが、これは〈カオスアビス〉の未熟だった点も大きいでしょう」


「ほう、スティーブン君、というと?」


「〈カオスアビス〉は去年発足したばかりで今年からAランクギルド入りしてきました新進気鋭のギルドです。その構成員は2年生が主で、今回〈30人戦〉ということで1年生の高位職を多く導入してきました。つまり全体的な経験も少なければレベルの平均値もAランクギルドにしては低すぎるのです」


「さすがはスティーブン君! わかりやすい解説! 確かに〈カオスアビス〉は〈獣王ガルタイガ〉と比べて明らかに熟練度の低さが目立ってたね!」


「〈獣王ガルタイガ〉が強すぎるというのもあります。今年は〈獣王ガルタイガ〉を発足したガルタイガ氏の息子さんが最上級生の年。ギルドメンバーの気合いが例年とは比べものにならないほど高いのです。私が学生の時〈獣王ガルタイガ〉はここまで強力なギルドではありませんでした」


「ってやっぱり〈獣王ガルタイガ〉が強いってことじゃんスティーブン君!」


 一周回ってやっぱり〈獣王ガルタイガ〉が強すぎたという話に帰ってきてキャスが思いっきりツッコミ会場を沸かせる。

 スティーブンの言った通り、〈カオスアビス〉はAランクになって〈30人戦〉に出場するにあたり、1年生を追加で5人投入してきた。所謂(いわゆる)数合わせである。


 それに〈カオスアビス〉も初参加ということで優勝はそもそも狙っておらず「Sランク戦の感覚を掴むこと」という目標を掲げていたというのも大きいだろう。

 何が何でも優勝する、という覚悟と気合いが足りていないので簡単に蹂躙されてしまったのだ。


「〈カオスアビス〉はどうなるのかーー! まだギルドマスター〈悪食のロデン〉は倒れていません! 彼はこの状況を巻き返せるのかー!」


「〈獣王ガルタイガ〉、〈カオスアビス〉の拠点へ仕掛けます! 先頭は、なんと〈獣王子ガルゼ〉! ギルドマスターが先陣を切る!」


 ここで試合がさらに大きく動く。

〈獣王ガルタイガ〉が〈カオスアビス〉の拠点に23人で攻め込んだからだ。


〈拠点落とし〉は基本ポイント制で、防衛モンスターを倒せばそのコスト分の数値をポイントとして入手出来る。

 しかし、拠点を落とされたらその時点で退場。負けが決定してしまう。

〈獣王ガルタイガ〉は防衛モンスターのポイントなんて目もくれず、拠点を狙って攻めてきたのだ。

〈カオスアビス〉は全力で迎撃するしかない。


 これが試合開始23分のこと。


「ああああーーっと! 〈悪食のロデン〉と〈獣王子ガルゼ〉の一騎打ちだーー! ここまで有利な状況でなぜ一騎打ちーー!!」


「これだから〈獣王ガルタイガ〉は人気があるのです。一騎打ちや決闘はいつの時代もギルドバトルの花形。圧倒的有利な〈獣王ガルタイガ〉ですが、これを呑むのです。観客席が盛り上がっていますね。今回は〈悪食のロデン〉相手ですが、〈獣王子ガルゼ〉はどう立ち向かうのか、注目です」


 スティーブンの言葉数が増える。

 その解説通り、観客席の大歓声に包まれながら一騎打ちが始まった。


 他のメンバーはそれぞれ拠点を落とすために奮闘したり、拠点を守ったり、防衛モンスターを撃破したりと戦闘を始めるが、誰も〈悪食のロデン〉と〈獣王子ガルゼ〉の邪魔はしない。


 スティーブンの言うとおり、決闘や一騎打ちは尊ばれているためだ。

 特に〈獣王子ガルゼ〉の心意気は凄い。普通ならばリスクの塊である一騎打ちはこの状況では受けないだろう。しかし、一騎打ちを買った。


〈獣王子ガルゼ〉の自信に一切の陰り無し。


 そして戦闘が始まる。


「〈悪食のロデン〉――なんとか黒き闇に引き込み状態異常をプレゼントしようとしているが、〈獣王子ガルゼ〉はそれをものともせずに吹き飛ばしていくー! やはり火力! インパクトが段違いだー!!」


「〈悪食のロデン〉も学園に2人、いえ、今は3人と言われていますが、大罪職の持ち主の1人です。その実力は非常に高く、〈獣王子〉の職業(ジョブ)には格でまったく劣りません。ですが、そこを習熟度や装備、そして圧倒的な経験で〈獣王子ガルゼ〉が勝っているのでしょう!」


「うわ! あれを防いじゃうの!? 今絶対当たったと思ったのに――〈獣王子〉って上に目が付いてるの!?」


「闇食らいがそこら中から襲いかかっていますが、全部余裕で吹き飛ばしていますね。あれをなぜ素手で掴む事が出来るのでしょうか? 普通は逆に掴まれて引き込まれるはずなのですが。さすがは〈獣王子〉。む、そろそろ〈獣王子〉仕掛けるようです。みなさん見逃してはいけません!」


 全ての闇を素手と咆哮で吹き飛ばしたガルゼが拳を引き締めて構えを取り、力を溜める動作をしたと思うと、そのままミサイルのように一瞬の跳躍でロデンに躍りかかったのだ。

 ロデンもそれを読んでおり、闇の巨大(あぎと)を繰り出す。

 それに応えるかのようにガルゼもスキルエフェクトに輝く右拳を繰り出した。


 顎と拳が激突し、強い衝撃波をまき散らす。


 結果、相殺。


 お互いにダメージを受ける形で弾ける。そこでいち早く動いたのはもちろんガルゼ。

 ロデンも一拍遅れて動いたが、迎え撃つために放った最高の攻撃『アバドン』を簡単にブチンッと引きちぎられて突破されてしまったことに動揺したのが勝敗を分けた。


 次にガルゼが選んだのは予備動作の少ない、純粋なスキル無しのパンチだったのだ。故に速く、ロデンの防御がまったく間に合わなかった。


「じゅ、〈獣王子〉のパンチが直撃――!?」


「ここでスキルを使用しない肉弾戦ですか!? 一歩間違えば〈悪食〉の闇に呑まれる可能性もあるこの状況で、最もスピードの速い一撃を放つため生身での攻撃です! さすがは〈獣王子〉! その度胸は最強! Sランク級です!」


「スティーブン君がどんどん熱くなっていってるよーー!! ってあ!?」


「こ、ここで大技炸裂です! 〈獣王子〉の『百烈獣牙』が刺さりましたーー!!」


「そこから流れるように『獣王バスター』! これは決まったかー! ああ! 〈悪食のロデン〉、退場です!」


「クリーンヒット!! 決まりましたーーー!!」


 勝利の女神は〈獣王子〉に微笑んだ。

 決着した瞬間、会場からだけじゃなく、現在拠点攻めの真っ最中である〈獣王ガルタイガ〉のメンバーたちまで歓声を上げる。


 それによって〈カオスアビス〉のメンバーは士気を低下させ次々と討ち取られてしまい、試合開始から33分、とうとう〈カオスアビス〉が最初の脱落ギルドとなった。





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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[良い点] 一騎討ちは確かに戦場の華であり、ガルゼ先輩がカッコいいのも確かですが···ギルドの勝利を第一に考えるならナンバーワンの戦力が消耗するのは悪手ですよね。 ゼフィルスが千剣フラカルを推したのは…
[一言] Sランク戦をAランク戦より先にやるってそれ前座では…… まぁ実際エデンよりレベルも低くて5、6ツリに向けてスキルポイントを残してもいないであろう育成失敗集団だからなぁ
[一言] 本編に関係が無くても、 Sランクギルドバトルのフィールドイメージ図を見たいところ。
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