#944 第一アリーナに行こう。ドキドキの観客席。
それからもフィールドの説明と注意点を上げていき、メンバーにしっかり通達して理解を得ると、とうとう拠点配置場所の話へと移る。
先ほども言ったがフィールドには先生方が決めた拠点を建てるための候補のマスが18箇所すでに決められており、俺たちBランクギルドはクジを引いてその候補のどこかに拠点が配置される仕組みとなっている。
このクジはクラス対抗戦の時とは違い、前もって引かされる。
Aランク戦は企業や大手のお偉いさんが多く観戦する関係上、盛り上がりや人気取りのための開戦直前のくじ引きはしない。あれを開戦直前に引くのは観戦者に興味を持ってもらいたいからだが、Bランクギルドともなればすでに興味の対象内なのでその場でクジを引くよりも、前もって拠点の位置を決めておき、作戦を練ってきてもらった方が受けが良いのだ。
これは俺が今朝7時に行って引いてきた。時間が早いが、これは仕方ない部分がある。
この時間に引かないと作戦を練る時間が足りないらしい。9時からはSランク戦があるため、その後にクジを開始すると、下手をすれば観戦に夢中になるあまりクジを引きに来ないギルドが出ることもありうるとのことだ。そのため朝の7時に引くことにしたのだとか。ちなみに引く順番は早い者順だ。
そして俺が引いたのは、またまた1番だった。
さすがだ。やっぱり勇者は1番じゃないといけない!
まあ、順番じゃ無くて今回決めるのは位置の話だけどな。良い位置お願いします!
とはいえどの辺になるか、このフィールドを見た時点で大体察しているんだけどな。
そしてその位置だが、
「これは、〈エデン〉の位置がバレバレですわね」
「完全にバトルロイヤル風だな。全部敵でどこから攻撃されるか分からない厳しいフィールドだし、仕方ない部分もある」
リーナの呟きに俺は同意する。でも俺のせいじゃないよ? フィールドが厳しいのがいけないのさ。
「確かに、これはどこの位置でも厳しいですわね。さすがはAランク戦に使われるフィールドですわ」
俺の言葉にリーナも頷いてくれる。よかった。俺のクジ運が悪かったわけでは無いのだ!
新進気鋭の〈エデン〉の位置は、中央からちょっと北に位置する、崖山を背にした激戦区だった。
この〈ピラミッド〉フィールドは中央にピラミッド型の山があり、それを中心に山やら池がピラミッド山を囲うようにして配置されている。
俺たちの位置はその囲いの内側で、ピラミッド山の北側の位置が拠点だ。
同じく囲いの内側には東西南北と斜めに拠点を置く場所の候補があり、計八つのギルドがピラミッド山の周りに配置されている。俺たちはその1箇所ということだ。しかも囲いのすぐ外側、〈エデン〉の位置の北西と北東にも二つの拠点候補があり、囲い内側、〈エデン〉から見て南西、南東にある拠点と合わせて上から俯瞰すれば四つの拠点に囲まれている中心地に〈エデン〉の拠点が建っているように見える。
うーん、まさに激戦地。
普通なら守りに入ってもボコられる未来しか見えないところだ。
一応北にある崖山を背にしているので、攻撃される箇所は絞られ西、南、東の三方向からだけというのが幸いか。この崖を超えられる職業もあるが、崖から拠点へ攻めるのはかなり大変だ。崖が切り立っているからな。
あと、囲い内側にある二つの拠点、つまりお隣さんの位置がかなり近くて〈エデン〉の拠点と10マスしか離れておらず、ラナの〈白の玉座〉の圏内なんだよなぁとちょっと思ったり。ふむ。
最初の動きは決まったな。まずこの囲まれた状況を切り崩さなくては。
それからミーティングで色々と作戦を話し合っていると時間はあっと言う間に過ぎていき、Sランク戦開幕の時間が迫ってきた。
「ミーティングを終了しよう。ちょうどいい時間だしな」
「はい。ではみなさん、移動しましょう。まずはSランク戦を観戦ですわ」
「「「「おおー!」」」」
俺とリーナの号令に全員で移動する。
今日俺の隣にいるのはサブマスターのシエラではなく、右腕のリーナだ。
ギルドバトルの司令官にして、今日のようなギルドバトルがメインの時は大体リーナに隣へ付いてもらう。
しっかり色々と覚えてもらいたいのと、リーナからの指示は俺の指示だというのをメンバーに分かってもらう意味もこもっている。
移動途中、さすがアリーナ付近は出店が活発であっちこっちで人が溢れまくっていた。
どの出店の出し物も美味しそうだ。さっき俺が出店の魔力に負けた理由でもある。
嘘だ。最初から今日の朝は出店で済ませるつもりだった。
まあ、それは置いといて、メンバー全員が出店の魔力に惹かれ、ちょっと寄り道して買い込みつつ、俺たちは第一アリーナへと到着したのだった。
そのまま観戦席へ向かう俺たち。
「観戦席の予約は取ってあるわ」
「さすがはシエラだ」
観戦席はチケット制。
〈エデン〉のメンバーは優秀な人材が多いので、こういう所は抜かりなく揃えてくれる。
すごい。さすがシエラである。
指定席へと座るとすでに会場は盛り上がっている最中だった。
それもそのはず。
会場には今日Sランク戦を行なう4ギルドがもう勢揃いしていたからだ。
俺の左隣に座ったリカが言う。
「今日挑むのは4ギルドだったな」
「ええ。現Aランクギルド、〈獣王ガルタイガ〉、〈千剣フラカル〉、〈ミーティア〉、〈カオスアビス〉よ」
それに答えるのはリカの左隣に座るシエラだった。
「ん。ガルタイガ出る。勝てる?」
「分かりませんわ。いずれも名のあるギルドですから。ですが〈獣王ガルタイガ〉はとても優秀なギルドですわ。優勝候補ですわね」
俺の右隣に座るのはカルアだ。そしてその右隣にリーナが座っている。
この配置はいつの間にか決まっていたのだが、なぜか触れたらいけない気がしてスルーしている。
「どこが勝つのかしら? ゼフィルスの予想は? どこが優勝すると思っているの?」
俺の後ろの席に座るラナが俺の耳の側で言う。
もう気になって気になって仕方が無い様子だ。
このSランク戦の昇格枠は一つだけ。つまりは優勝したチームだけがSランクに至ることが出来る。
「そうだな、一応学園ニュースでは1位予想が〈千剣フラカル〉と〈獣王ガルタイガ〉で割れていたな。続いて〈ミーティア〉が追いかけ、大穴が〈カオスアビス〉予想だったか」
「うむ。〈カオスアビス〉はやはり今年Aランク入りしたギルドだからかあまり票が伸びなかったと聞いている」
「1年生が多く在籍しているギルドだものね」
リカがいつもより少し堅い声で言い、シエラが頷いている。
実は賭けこそ行なわれていないが、どこが優勝しそうかという予想は行なわれて、すでに学園ニュースで流れていた。
その中でも〈カオスアビス〉は超新進気鋭ギルド。
実は去年発足したばかりのギルドなのだという。
去年の世代で一番出世したギルドが〈カオスアビス〉なのだ。俺たち〈エデン〉と似ているな。そのため高位職の1年生や新学年を多く取り込んでいるのだそうだ。
とはいえAランクからは非常に手強い。というか強いギルドしかいない。
まだまだ古参の〈千剣フラカル〉や〈獣王ガルタイガ〉には届かないだろうというのが大半の見方らしい。
まあ、これはあくまで大衆予想。ラナが聞きたい内容とは違うようだ。
「そういうのはいいのよ! 私はゼフィルスの予想を聞きたいの!」
「そうだな……」
俺はそう言って一拍おき、予想を口にした。
「俺は〈千剣フラカル〉が勝つと思うぜ」
理由は試合を見ていれば分かるだろう。
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