#921 〈エデン〉動き出す。2陣3陣が上級へ入ダン!
「みんなお待たせ!」
「お帰りゼフィルス!」
「サチたちの〈上級転職〉は無事すんだのね?」
「おう! バッチリ【神装】シリーズと大罪の一つ【傲慢】に〈上級転職〉したぜ」
「…………」
おお!? なぜかシエラがジト目に! なんだかよく分からないがやったぜ!
「めでたいわ! 後でいっぱいお祝いしないとね!」
「ああ! たくさん祝ってあげてくれ!」
俺はラナに親指を立てて同意した。
現在俺たちは〈上下ダン〉の前に集まっていた。
本日は、かねてより計画していた〈エデン〉の2陣、3陣メンバーでの上級ダンジョン進出の日だ。
俺はサチ、エミ、ユウカ、フラーミナを〈上級転職〉させて中級上位ダンジョンに挑む予定のメンバーに預けると、そのままみんなと待ち合わせしていたここに来たというわけだ。
今回は上級ダンジョンに挑めるメンバーのうち1陣の俺、シエラ、ラナ、エステル、カルアの他に10人に来てもらっている。発表。
2陣メンバー。
ラクリッテ、シズ、リーナ、メルト、ミサト。
3陣メンバー。
リカ、ルル、シェリア、パメラ、タバサ先輩。
以前構想したときよりもだいぶ人数が増えたため、さらにいい感じに組めていると思う。
2陣は遠距離メンバーが主体だ。
ラクリッテとミサトが遠距離からの攻撃に滅法強いため、それを活かし距離をとって戦う戦法を得意としている。シズ、リーナ、メルトが遠距離攻撃で敵を蹴散らす感じだな。
3陣はダメージディーラーのシェリアを主体に硬い前衛メンバーたちが敵の注意を引きつけ、ガードをぶっ壊し、大ダメージで倒しきるのが目的だ。タンク役が多いため替えが効き、事故の少ない安定したパーティだな。
他の上級職であるアイギス、ノエル、レグラム、オリヒメさん、シャロン、ニーコ、は悩んだ結果、今回中級上位ダンジョンでボス周回をしてもらい〈上級転職チケット〉を集めてもらうことにした。
アイギスはまだ聖竜のレベルが低いためレベル上げ、ノエルのユニークはボス限定の効果なのでボス周回をするなら入れたいところ。
レグラムはダメージディーラーだが、本人のレベルもまだ低いため中級上位でレベル上げ、オリヒメさんとシャロンも同じくレベル上げが目的。ニーコは上級に行かせるかで少し悩んだが、今はまだ上級ダンジョンで周回が出来ないので、〈上級転職チケット〉が目的なら中級で周回させたほうが良いと判断した。
全力で妖怪を叩きのめしてもらえるよう、この周回のリーダーになったレグラムにお願いしておいたんだ。
「レグラム、〈上級転職チケット〉が後1枚どうしても欲しいんだ。全力で周回してきてほしい。ニーコの運用を任せる。ニーコの自由を使ってくれ」
「勇者君!? 僕の自由は僕のものだよ!?」
間違えた。ニーコを自由に使ってくれと言おうとしたんだ。まあ、そんなに変わらないだろう。
「ふ、任せるがいい。全力で当たろう」
「僕は休憩の自由を主張する!」
ニーコの自由は果たして誰のものなのか。難題だな。
そんなわけで、レグラムにはそちらを任せてきた。
他、上級に行くために証が足りないメンバーは証集めに、カイリはいつも通り〈救護委員会〉に向かった。
「それで、ゼフィルスたちはどうするのだ?」
リカが問うてきた。これから2陣と3陣には〈風除けの指輪〉を使ってもらい10人一組で〈嵐ダン〉へと入ダンしてもらう。2パーティ構成だ。
メルト以外は上級装備も整っているため上級ダンジョンモンスターに攻撃されても何とかなるだろう。
メルトは攻撃されないようがんばってほしい。
そして俺たち1陣メンバーはちょっと別行動なのだ。
「おう、俺たちは自分たちのレベル上げのためにランク6、〈浮遊の巨石ダンジョン〉に行こうと思っている」
そう、俺たちの目的もまたレベル上げ。
本当は2陣、3陣パーティとメンバーをシャッフルして他のダンジョンに挑もうと思っていたのだが、時間が無い。
Aランク戦ギルドバトル〈拠点落とし〉までもう少し。
俺たちもいい加減、五段階目ツリーに至ってもいい頃だと思うんだよ。
少し前にやったBランク戦、ロード兄弟に幾度も逃げられたからな。あれは俺が〈五ツリ〉に至っていれば逃がすことは無かった。
Aランク戦でも【ロード】系がいないとも限らない。
予定を少し修正し、俺はここでLV30までのレベル上げをしようと思う。
〈嵐ダン〉の最奥のレアボスを周回すれば〈上級転職チケット〉はゲットできるだろうが、いかんせんランク1ではこれ以上レベルが上がらないのだ。
そのため俺は予定を繰り上げ、上限レベルが30まで上がるランク6のダンジョンに行くことにしたのである。
上限が30まで上がるダンジョンはランク4~ランク6までだが、ランク4の〈冠水の島鳥ダンジョン〉は飛行型モンスター主体なので1陣パーティでは相性の問題で厳しく、ランク5の〈闇夜の永眠ダンジョン〉は幽霊系などアンデッド主体なのでシエラがちょっとな。
そのため消去法でランク6の〈浮遊の巨石ダンジョン〉、通称〈岩ダン〉に決定したのだった。ここなら〈イブキ〉も十全に使えるしな。
「そうか。こちらは任せてくれ、ゼフィルスたちからたくさん忠告を受けたからな。〈嵐ダン〉が相手でも何とかやっていけるだろう」
「頼むぜリカ。じゃあこれ、〈風除けの指輪〉な」
「確かに受け取った。リーナにしっかり渡しておく」
「頼む。2パーティ行動だから効果範囲から出ないよう気をつけてな」
「心得ている」
リカは二刀使いなので指輪は出来ればしたくないらしい。
リカは3陣のリーダーで、リーナは2陣のリーダーだ。
〈風除けの指輪〉の効果範囲は使用者を中心とした半径50メートルくらいなので2パーティでも余裕で適用可能だが、パーティがちょっと離れることもあるだろう。3陣は気をつけるようリカに忠告しておいた。
本当はリーナに直接渡したかったんだが、なぜか指輪を渡すと言ったらラナとシエラがリーナに話しかけて渡せなくなってしまったので、リカにこうして頼んでおいた。
「それじゃ、そろそろ出発するか! 全員集合だ!」
俺の号令にそれぞれ和気藹々としていたメンバーたちが集まる。
「これから〈エデン〉は上級ダンジョンへと突入する! 諸事情あって俺たちは行動を共に出来ないが、〈嵐ダン〉くらいであればここにいる者なら十分に通用すると思っている。装備も整えたからな。だからそれほど心配はしていない。初めての〈嵐ダン〉だろうが俺たちの忠告どおり動けば問題は無いだろう。だから全員無事に帰って来い! いつもの通りに、ダンジョン攻略――開始だ!」
「「「「「おお~!」」」」」
俺の言葉に全員が片手を挙げて掛け声だ。
なんだかんだ上級ダンジョンの攻略開始なんてまだ偉業扱いだからな。みんなの気合がすごい。とはいえ〈エデン〉のメンバーならさほど時間も掛からず攻略は可能だと思っている。
10人のメンバーたちが口々に「楽しみなのです!」「わ、私がみなさんを守ります!」「ついに私たちが上級ダンジョン攻略デース!」「気合を入れて行こう」「みなさん、風除けの効果範囲からは出てはいけませんわよ!」「ゼフィルス、行ってくる」と話しながら〈嵐ダン〉の門へと潜っていくのを手を振って見送る。
それを見届けてから、俺は振り返り、シエラたちに言った。
「じゃ、俺たちも行こうか」
「「「「おおー!」」」」




