表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/46

第二教皇との密会

 鉱山を抜ける際、ライゼルと一緒に聖王都に向かったのか教会関係者はいなかった。クリスタルリザードの魔石を徴収されないように、大量に他の魔石を採掘してきたのだが無駄になってしまった。

 それから定期便の馬車にゆられ、聖王都へ戻ってきた俺達はまず大教会へと向かった。

 大教会に複数ある受付の内、第二教皇に会ったときと同じ人を探すと、運良く見つける事ができた。


「こんにちわ。今回も魔石の買い取りでしょうか」


 列に並んで順番がくると、どうやら受付の女性は俺達の事を覚えていたようだった。

 おれはクリスタルリザードの魔石を採掘した魔石に埋もれさせ、カウンターの上に出す。


「前回のお偉方との約束を果たしたいから、会えないだろうか」


 受付の女性は一瞬厳しい顔をし口を開き掛けたが、魔石鏡を覗いた瞬間に驚愕の表情を浮かべ、こちらに顔を向けた。


「少々お待ちください。いらっしゃればお会いになるかと思います。あと、魔石は仕舞っておいてください」


 カウンターの上に『他の受付をご利用ください』の札を立て、受付の女性は奥に引っ込んでいった。

 これには、列に並んでいた冒険者達が文句を言っていたが、他の教会関係者に突っかかることはなく、大人しく違う列に並び直していた。

 冒険者ギルドと教会の力関係が如実に表れていると思えてしまった。

 ほどなく、奥から戻ってきた女性に案内され、先日と同じ部屋に通された。

 一度入ったことがあるとはいえ、教会のトップと会うのはやはり緊張する。前回と同じくノックは無しで、大きな観音扉を開いて俺達は部屋へと入った。


「この度は、誠に申し訳ありませんでした」


 部屋の中では俺達と顔を合わせた途端、第二教皇が頭を下げて謝罪を述べてきた。

 いったい何のことだか分からない俺達は、いきなりの謝罪に狼狽えてしまうこととなってしまった。


「ちょ、ちょっと、どういう事ですか。謝られる事なんてされてませんけど」

「我々、教会関係者がお二人にご迷惑をおかけしたことに対してです」


 教会関係者――その言葉で合点がいった。そうだ、この女性は第二教皇で教会のトップの一人だ。ライゼルたちの件を自分の失態として謝罪していたのか……と。

 おなじくギルドマスターとして上に立つ人間として、ちょっと自分の対応が恥ずかしく思えてしまい、すぐに話題を変えようと話を切り出した。


「あれは純粋な取引ですよ。そうでなければ今頃私達は、あの鉱山で野垂れ死んでたでしょうね。気にする事ではありません」


 数瞬の無言のあと、小さく溜息を吐いた第二教皇は俺達にソファへの着席を促してきた。

 この場は俺の建前を正直に受け取って、話を進めてくれることにしたらしい。

 判断が速くて助かるな。


「今日はその件で来たと思ったのですが、違ったようですね」

「受付の女性から聞いていないんですか」


 おれの質問に「重要な案件は直接口にして話さないようにしている」という事だった。この答えから、俺はやっぱりそうなんじゃないかと想像が確信に変わっていくのを感じていた。


「今回はお渡ししたい物があったからです」


 俺は懐からクリスタルリザードの魔石を取り出し、テーブルへと静かに置いた。

 魔石鏡を使わずとも分かったのだろう、第二教皇は震える両手で包み込むように魔石を手に取る。


「これは?」

「クリスタルリザードの魔石です」

「クリスタルリザードの魔石は第三教皇の元へ献上されたと聞きましたが」

「そうですね。クリスタルリザードが身に纏っていた魔石は取引で渡しましたが、本当の魔石は取引外でしたから」


 今度こそ魔石鏡でクリスタルリザードの魔石を見つめる第二教皇。その顔にひとしずくの冷や汗が流れていったのを俺は見逃さなかった。


「過去にクリスタルリザードの魔石が持ち込まれたことはありますが、これは違いますね」


 違う? 一体どういうことかと思えば第二教皇はスッっと立ち上がり、壁際の書棚から一冊の本を持ってきた。


「恐らく、クリスタルリザードではなくその上位種、ジュエルリザードかと思われます」


 俺は今までの事も含めて改めて叫びたくなった。冒険者ギルドよ、少しは仕事しろと。


「ジュエルリザードは先日のゴブリンエンペラーと同様の災厄級の魔物です。しかも、長年生きて体の魔石に力を蓄えた固体は、ランクA冒険者の複数パーティーでないと討伐出来ないと言われていると書かれています」


 言いたい事は言ったとばかりに本を閉じる第二教皇。


「それをたったおふたりで討伐とは。お互い、少し腹を割ってお話した方が宜しいのでしょうか」


 第二教皇の言葉は、俺達に選択肢のあるような言い方に聞こえた。だが、実際は聖王国で活動を続けるのなら、拒否権はない話になるはずだ。

 第二教皇の硬い表情からも、俺達がどんな答えを出すが気が気でないのが感じられる。

 俺達が何も話さなければ、聖王国にいずらくなり俺達という不確定分子はいなくなる。

 腹を割って話せば、良くも悪くも互いが互いの状況に縛られる。

 第二教皇がどちらを望んでいるかは分からないが、俺の答えは決まっていた。


「俺は教会のごたごたに巻き込まれたくはない。だけど、決めるのは俺じゃなくてマルだ」


 今の今まで黙って事の推移を見守っていたマルは、この状況になるのを予想していたのかゆっくりと頷いた。


「シュウさんごめんなさい。第二教皇様、私はお互いの事情を打ち明けて協力出来たらと思っています。ですが、私の事情はひどく複雑で重い物です」


「それならばこちらも酷く絡み合って、どうにもならなくなってきています。良くも悪くも進める切っ掛けを私は欲しています」


 見つめ合う二人。マルは両膝をこれでもかと力強く両手で握り、頭の中で葛藤しているようだった。

 反対に、第二教皇はすでに決意しているのか、じっと動かずマルの答えを待っていた。

 どれくらい時間がたったろうか。沈黙はマルの言葉で破られることとなった。


「私は魔人です。私達魔人は聖王国との和平を、不干渉を求めています。今までの魔石はその為に使おうと考えていました」


 マルが変装に使っていた布を頭から取り払う。そこには、久しぶりに見た銀色の狼の耳が変わらず鎮座していた。


「――魔人」


 予想だにしていなかったのだろう。一瞬たじろいだ第二教皇はすぐさま姿勢を正したが、平常心を保てていないのは俺の目にも明らかだった。


「災厄級の魔石が二つに、魔人……ですか。この状況じゃなければ、私は直ぐさま人を呼んでいましたね」


 あぶねえ! 綱渡りは今の所マルの勝ちというところなんだろうが、まさか本当にここまで聖王国が魔人に過敏に反応するなんて思わなかった。いや、甘く見ていた。


「私は誓って、聖王国に害をもたらす気はありません」

「そういう事ではないんです。魔人が聖王国にいる時点で問題なのです。聖王国と魔人の存在は相反するものですから」


 第二教皇は魔人が聖王国に存在するだけで害になるという。それは、聖王国のありかたと魔人の存在そのものが互いに害にしかならないと、とつとつと話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ