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祝勝会と……

20203/28 後半を大幅改稿しました。

 セリスの予想通り、俺達が冒険者達の元へ戻ったときには、全てのナイトメアが退治された後だった。

 幸いな事に大きな怪我をしている者はおらず、冒険者の実力の高さをうかがい知ることが出来た。


「英雄達のお出ましだぜ」


 どの冒険者が上げた声なのか分からなかったが、俺達に気付いた冒険者達が疲れているだろうに立ち上がり、一度、自分の武器を眼の前に掲げた。

 騎士達が行う礼儀作法と違い、冒険者のこれはまた一緒に肩を並べて戦おうという親愛の意味が込められている。


「皆様お疲れ様でした。当初の予定通り災厄の魔物であるカオス=イレの討伐に成功しました」


 まるで自分たちが勝利したかのような勝ち鬨が冒険者達からあがる。周囲の空気を震わす声は、静かな森の中をまるで縦横無尽に駆け回ったかのような錯覚を受けた。


「この功績は、ここでナイトメアを撃破して下さった皆様と分かち合う物だと考えています」


 ミラの言葉になんともむず痒そうな顔をする冒険者達。なかには恥ずかしさにうっすらと頬を染めている者もいる。


「本当はここで休憩を兼ねて、簡易的に祝勝会を行いたいのですが、それは森を出てからにします」


 一部の冒険者達からは一転不満の声が出たようだが、つづくミラの言葉で全員が納得したようだった。

 複数のナイトメアのみならずカオス=イレが出現したことで、少なからず森の生態系が狂う事になっていたはずだと。その狂った生態系が、俺達によって正された今、この場所を本来の住処としていた別の魔獣などが戻ってくる可能性がある。

 今回の二種に比べれば大した事のない魔獣だろうが、疲弊し、なおかつ酒盛りしている所に戦闘となれば何かしら事故が起こるかも知れない。

 要は、遠足は帰るまでが遠足ってことだ。森の入り口までだがな。

 全員で夜目のポーションを再度服用し、セリスを先頭に無駄な戦いを回避していく。行きと違って疲労感の強いなかでの行軍になり、実際の距離より長く歩いていると感じる。

 森の外へ無事に辿り着いた瞬間、緊張の糸が切れたのか俺のお腹が一際大きく鳴ったような気がした。


「ふふふ、聞こえちゃった」


 カオス=イレの残り火をその身に取り込んでから、終始ご機嫌のマル。さすがに聞こえてしまったようで、意地の悪い顔でからかってきた。


「時間も時間だし、あれだけ動いたからな」

「そうだね」


 小さく舌を出して自身のお腹をさするマル。

 なんだ、マルもお腹が減ってるんじゃないか。


「今回持ってきた資材は全て使い切ってもかまいません。もちろん、残れば可能な限り皆様に分配しますが、ここは冒険者らしくいきませんか」


 ミラの言葉に太っ腹とヤジがとび、最後に大きく笑いが起こった。

 それからはもう、しっちゃかめっちゃかのドンチャン騒ぎとなった。

 ある者は、馬車に積んであった大量の酒を浴びるように飲む。

 料理上手の冒険者は野営の食事とは思えないようなほど手の込んだ料理を作った。

 弓矢が得意なものは遠くに作った的に当てる競技を繰り広げ、賭け事が好きな者はその勝敗に一喜一憂している。

 そんな冒険者を眺めながら、俺達四人は少し離れた所でゆっくりと食事を取っていた。

 気を遣って貰ったのかどうか分からないが、料理を運んできてくれた冒険者が少しそわそわした様子で俺達をみて、葛藤したかのように仲間達の元へ戻っていくということが何度もあった。


「みんないい人ですね」


 マルの呟きに俺達は小さく頷いた。

 見習いのランクF冒険者には荒くれ者が多いのは確かだが、品位もランク上昇条件になっている。その為、ランクE以上は比較的善良な冒険者が多いのは確かだった。

 裸踊りをしているのが数人居るのは例外だとしてもだ。


「さて、これからどうしよっか」

「これから?」


 セリスの言葉に一瞬不穏な響きを感じて俺が聞き返すと、俺とマルに対して二人がそれぞれ指差してきた。


「ランクDとランクEが冒険者ギルドの後押しを得たとしても、災厄の魔物を倒しました」

「確かに、そんな事実を隠す事なんて今更できないから、国も絡んできそうね」

「しかも片方は、表に名が出てないギルドマスターだからね。ちょっと頭の働く人が考えれば、この機に自分の国に縛り付けようとするかもね、爵位なんか送ってさ」

「そうだね。私とセリスは副ギルマスって事で事前に認知されているから、何か言われても固辞出来る理由なんてでっち上げられるけど」


 災厄の魔物の相手の次は権力者の相手かよ。あの女王様なら平気だろうけど、その下にいる貴族のやつらがどうかはわからないもんな。


「え、どういう事ですか」


 一人困惑したままのマルに二人が懇切丁寧にこれから起こりうる事を説明している。

 それを聞きながら、俺はステータボードからスキルを確認した。


 ○-800,000ポイント。

 ○開放されているスキルは全部選択可能状態、ポイントは非表示のまま。

 ○スキル名が『お手伝いスキル』から『チュートリアル 第二段階』に変更されている。


 幾らみても、これからどうなるのかがさっぱり分からない。


「シュウ?」

「おわっ」


 ステータスボードに夢中になっていた俺をマルの整った顔がのぞき込んできてびっくりした。


「シュウもセリスさんと同じでこういうの出せるんだ」


 俺のステータスボードに指を這わせようとマルは手を伸ばしたが、俺のステータスボードは俺以外には触れない。まるで何もないかのようにマルの指がステータスボードをすり抜けた。


「まるでおとぎ話の勇者様のお話みたいです」


 マルの言葉に俺はドキッっとした。この異世界の神は前に何て言っていた? 1,192番目の弟子となる神が地球から勇者を召喚しすぎたと言ってたと思う。

 でも、この世界に地球から勇者を召喚してないとは一度も言っていない。


「もし勇者様がいるなら、私達を――あはは、変な事言ってごめんなさい」


『願い○捧×ⅢF…れNた。保有ポ―Tトが■イαスの為、拒否γ危Eπす』


 ぐっ、頭の中を一瞬何かが流れたような。

 あまりにも強い力と言葉が流れたようで、何が頭の中を流れたのか理解する事が出来なかった。


「どうしたの、シュウ」


 いきなり黙った俺を心配したのか声をマルが声をかけてきたけれど、返事をするのに一呼吸必要だった。


「マルが何を困ってるか分からないけどさ。俺は仲間だろ、手伝えるなら手伝わせてくれよ」


 なんとか誤魔化すように口にした言葉に、びっくりするように眼を大きくしていたが、その眼は少し潤んでいる気がした。


「ちょっとシュウ、勝手に何言ってるのよ」

「ギルドの事や今回の事はどうするの」

「いや、それはそうだけどさ。そうだ! マルがギルドに依頼すればいんじゃないか。今のマルの実力ならアッチで依頼って手もあるだろ」

「そ、こ、ま、で、し、て、サボりたいのかー!」


 お酒もそこそこに入って何時もの自制心が緩んでいたミラに追いかけ回される形で、冒険者達の間を縫うように追いかけっこをしていく。

 普段見ている副ギルマスとのギャップがすごかったのか、あっけに取られている冒険者が多かった。

 だが、それが功をそうしたのか遠巻きに見ているだけだった冒険者達が俺達に話しかけてくれるようになった。

 彼らの興味はやっぱりカオス=イレをどうやって倒したのか。カオス=イレがどれほど強大な魔物だったかだ。

 マルには悪いがカオス=イレの残り火を渡したのだからと、ここで生け贄になってもらった。

 俺達三人のスキルはこの世界には存在しない、神から直接与えられたスキル。もし、今までこの世界に連れてこられた異世界人がいたとしたら、勘ぐられる事もあるかもしれない。

 もう既に何年も過ごした世界だが、異世界人という言葉はついぞ聞いたことがない。だが、念には念を入れた方がいいと思っての判断だ。

 ミラとセリスにマルが余計な事を言わないように確保してもらって、俺があの戦いでどれだけマルが活躍したか、俺達はマルの力を見たときにサポートに回ることを選択した事を説明した。

 赤ら顔の冒険者達だったが、手に持った料理と酒には一切口を口を付けずに真剣に聞いている用で、ときおり喉を鳴らす音が聞こえれば視線でマルを追っているのが分かった。


「マルの嬢ちゃんは見かけによらずすげーんだな。あいや、悪気はないぞ。しっかし魔人なんて初めて見たが獣人と全然見分けが付かねえな」

「魔人が住んでいる土地ってここから聖王都の狂信者共がいる場所の先よね。よく無事に狂信者達に見つからずにここまで来れたわね」

「そこら辺からして、相応の実力があったって事か」

「これだけ力があってもランクDって。もったいねえな」


 ギルドは実力もそうでうが成果主義の組織ですのでと、セリスがもっともらしく言う。

 これには納得できなそうでも、納得するしかないと冒険者達は思っているのかうんうん唸っていた。

 たまに、ランク以上の力を持った冒険者や、ギルドに登録いた時点でランクBやA相当の力を持っている者も顕われる。

 だからって、仕事ぶりをみないとその人となりを理解する事もできず、ランクを上げて良いのか判断がつかないのだからこちらとしても仕方がない。


「でもさ、カオス=イレをぶっ倒したんだろ。だったらさ」

「二つ一気にあがって……ランクBか?」

「ナイトメアだってランクB相当のいらいだぜ。そのさらに上でもいいじゃないか」

「もしかしてランクDから一気にAに。すごいね、そんな事になったら王都の話題を独占だよ」


 冒険者達がマルについてああでもない、こうでもないと話し合いながら、時折それに俺達も混ざり談笑が深夜まで続いた。

 終始恐縮しっぱなしのマルには悪かったが。




 森の外で一夜を明かした俺達は、朝から移動し王都が視界に入る場所まで来ていた。

 今回の依頼の報酬は明日の午後から渡すと言うことで、その時に全員が集まるようにミラは冒険者達に言い含めた。

 これは、さすがに昨日の打ち上げだけでは疲れが取れていないという事と、王都に残している家族達に話をしたり一緒にいる時間を作るという目的もあった。

 大きな依頼のときの慣習として今まで経験してきた冒険者達だからこそ、すぐに報酬が欲しいという者はいなかった。

 また、こういった重大な事例の時は真っ先に上に者に報告しなくてはいけない。ここはディスパー王国の王都であるので、もちろん報告するのはあの若き女王だ。


「マルとは一旦ここでお別れだな」

「えっ」


 小さく呟いたマルはとても悲しそうな顔をしていた。たった数日だったがとても濃い数日であり、俺達はずっと昔からつるんでいたような錯覚をえていたのかもしれない。


「何て顔してんだよ。明日の午後にはまた会えるだろ」

「そう、だよね」


 ちょっと恥ずかしそうに答えたマルや冒険者達と分かれて、『闇』ギルドへと戻り女王への謁見の申請を受付の職員に任せると、俺達も謁見の準備に取りかかろうとした。


「セリス」

「どしたの」

「一つをお願いがあるんだ」


 俺のをお願いを聞いたセリスは「念のために仕方なくだからね」と、しぶしぶ引き受けてくれた。

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