第1話 スタート
「さぁ!インからカターンが仕掛けた!」
「アウトからメナードがかぶせた!あっーーとっ接触!」
「ラストラップで2位争いの2台がグラベルに消えてしまったーー!」
「そしてデビュー戦の小木が2位へ浮上した!」
川田正樹の家で。
「小木が表彰台か・・・。」
テレビで表彰台の模様を見ながら川田正樹はつぶやいた。
画面には2位で表彰を受けている小木良介が映っている。
「タナボタ的なところもあったけど、ペースもよかったよね〜。」
とちょっとうれしそうな表情で原島弥生が言う。
川田「なんかなぁー・・・。悔しいんだよな。」
原島「なんで?いいレースしたじゃん。デビュー戦だし。」
川田「そうじゃなくて、あの・・・、その・・・、俺にもできるはずなのにな〜とか思ったりして。なんかまたGP1を目指そうかな〜ってね。」
原島は笑いながら
「ハッハッハッハー。いくらなんでももう無理でしょ。あんたもう22なんだし。」
しかし川田は真面目な顔で
「本気だよ。まだ遅くないと思う。あきらめたくないの。」
原島は圧倒されて
「はっ、はぁ。分かったよ。今度カートにでも乗りにいこうか。」
その間にテレビ中継は終了していた。
その日リビングで。
「はぁ〜。今月も給料が減ったわね・・・。なんとかならないの?。」
困った様子でマリーはつぶやいた。
利夫はさらに困った様子で
「仕方ないじゃないか、世の中は景気が悪いからね。
生活するのが精一杯だな。」
正樹が2人の会話を聞きながら心の中で
「こりゃレースをまた始めるなんて言い出せないな。
母ちゃんがまた暴れだすぞ・・・。」
とささやいた。
テレビに流れているニュースがスポーツのコーナーになった。
アナウンサー「ついに今日開幕したGP1。デビュー戦の小木選手がやってくれました!」
画面はレースの映像に切り替わった。
アナウンサー「日本人ただ一人のドライバー小木良介選手は予選を7位で通過しました。
スタート直後発生した多重クラッシュを上手く避けた小木選手は1周目に5位まで順位を上げました。
中盤のビットストップで昨年のシリーズ2位のアイック・リッカ選手をかわして4位へ浮上。
そしてファイナルラップ、2位を争うメナード選手とカターン選手が接触してリタイヤ。
小木選手は日本人過去最上位の2位でデビュー戦を終えました。
優勝もホントのリレー選手でジャパンパワーが炸裂しました。」
「ほほう小木君すごいなぁ。
正樹と一緒に走ってたときが懐かしいな。」
とちょっと感動しながら利夫が言う。
「本当ね。
次のレースが楽しみね。」
とマリーも言う。
勢いで正樹も
「俺も今からGP1を目指すことにする!。」
といってしまった。
「???」
意味が分からない様子で利夫とマリーが顔を見合わせた。
「今から始めたって無理だろ。」
と利夫が言った。
「駄目でもともとだからいいじゃないか。
とりあえずまたレースがしたいんだ。」
ちょっと熱くなって正樹が言った。
「まぁいいけどさ。やりたいことはやるがいい。がんばれよ。」
利夫に意外に反対されなくて正樹は逆に驚いた。
「本当にバカなのね。」
マリーは笑いながらあきれた様子でつぶやいた。
その日の夜、正樹はインターネットで入門フォーミュラのFJについて調べていた。
いくつかのチームではオーディションが行われているが、さすがにすでに開幕しているため今シーズンのオーディションは終わってしまっている。
22歳と決して若くない正樹は1年たりとも落とせないのだ。
「なんとかならないかなぁ」と焦りつつ読み進めていくと、バックが緑色の、出来は「お粗末な」チームのサイトにつながった。
チーム名は「エバーレーシング」というらしい。
トップページを見ると「ザウルスのドライバー3名急遽募集!」とデカデカと書かれている。
詳細をみると「参加費用はすべてチームが負担、年齢制限なし、やる気があれば大丈夫です」とだけ書かれている。
よくわからないなぁと思いつつ正樹はプロフィールを書いたメールを送った。
サイトをさらに見ていくと、「エバーレーシング」は昨年誕生したチームで、FJをやってきたとある。
ザウルスは今年から参戦するようだ。
結果を見るとどちらのカデコリーでも中段あたりの成績が多く、優勝経験はない。
ドライバーはFJの2名。
マシンは蛍光の緑で輝いている。
翌日正樹はメールの受信ボックスを見ると、「エバーレーシング」からメールが来ていた。
内容は「はじめましてエバーレーシング代表の大崎翼です。
ザウルスのドライバー募集に応募ありがとうございます。
来週の土曜日にガレージで話を進めましょう。
ところで僕のこと覚えてますか?
正樹さんがカートをやっていた時にチームメイトだったのですが・・・。」
もちろん正樹は大崎のことを覚えていた。
大崎は2歳年下で正樹のことを兄のように思っていた。
全日本選手権に出るほどの実力はあったが伸び悩み引退をした。
現在は実家の植木屋をスポンサーにしてレーシングチームを運営している。
土曜日になり、正樹は「エバーレーシング」のガレージを訪れた。
建物の外見は町の自動車整備工場といった雰囲気で、少し老朽化している。
「こんにちわ。大崎です。」
大崎が先に挨拶した。
「あっ、こんにちわ。川田です。」
正樹は年上のため敬語を使うべきか悩みつつ挨拶した。
「それではこれが契約書になります。」
「???」
大崎の言葉に正樹は頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。
「どういうことですか?」
正樹は聞いた。
「募集しても集まらないんですよ。ドライバーが。実は川田さんが2人目なんですよ。ですので契約書にサインをしたら決定になります。
よろしくお願いします。
あと川田さんカートやっていた頃は敬語じゃなかったですよね。
あのころと同じじゃないと変な感じがしますから。」
そう言って大崎は笑った。
「はぁ。ありがとうね。これからよろしく。」
正樹も笑顔になって契約書にサインをした。
大崎はちょっとウキウキした様子で
「そういえば川田さんに見せたいものがあるんです。
時間は大丈夫ですか?」
と言った。
「大丈夫だけど・・・。」
何だと思いながら正樹は言った。
「それじゃあその車に乗ってください。」
大崎はそう言って正樹を乗せて、ワンボックス車を走らせた。
第1話おわり
なんとか予定よりだいぶ遅れながらも第1話完成しました。
いざ書いてみると難しいですね。
第2話は6月中旬の完成を予定しています