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人任せ

作者: 夏野簾

 頭のなかはいつだって迷子だ。行くべき道がなにひとつ分からない。

 言ってしまえば、思考の回路が迷宮で、どこにいっても行き止まり。僕の頭は牛頭なのである。

 ああでもないこうでもないと、まるっきり目の前のことを否定する。そして、否定したものも否定する。すると元に戻ってしまいそうなものだけれど、実際は、否定した先は別の部分を否定するだけであって、そしておそらくそのことこそが迷子になる一番の理由なのだろう。

 つまり、世の中裏表のような簡単な世界では考えられないということで、そんなのは至極当たり前のように感じるけれど、やはり僕も含めた人間はそうやって裏表、白黒、善悪、勝負、エトセトラエトセトラ。なにかにつけて、ハッキリさせようとしたがる。

 そのくせ、そのハッキリさせたものが、いつの間にか自分のものではなくなってしまうことも大いにある。最初から反対の方に賛成していたんだとか、言い換えると、結果を見てから簡単に意見を翻してしまう。

 とはいえそれはそれでひどく人間らしい気もするし、多分僕自身も昔のいつかにやっていたりするんだろう。だけど、そのいつかやっていたことも、今では嫌になってしまって、いろいろと考えるようになってしまった。

 考えた先に、いわば結論とでもいえるようなものがあれば、救われたのかもしれない。無謬であるということを、無垢に信じ続けてさえいれば、例えそれが社会から見放されたものだったとしても、それなりに幸せな人生だったといえる気がする。

 幸せとは、なにかに満足しているということの別名であって、自分のことを自分自身で納得さえしていれば、そのことをこそ幸せと言ってなんら差支えないだろう。

 しかし、迷子の僕は、いつまでたってもそれを見つけることができない。それに近しいものを見つけたことだってあった気がする。けれど、僕の迷路はぼこぼこと穴だらけで、一度満足したと思って座ったらそのままそこから真っ逆さまに転落だってしてしまう。そして、落ちた先でまた迷子になるのだ。

 この迷路から出るには、奇跡的に入口につながった蜘蛛の糸にでもすがればいいのだろうか。それとも、糸玉から糸を伸ばして僕のもとに誰かがきてくれればいいのだろうか。どちらにせよ、上手くはいかないはずだけれど。

 けれど、自分が自分自身で迷子になってしまって、どうしようもないのだとしたら、そうした糸に縋るしかないのだろう。皮肉なことに、僕が迷子になっているのも、その糸の先にいるもののせいなのだろうけれど。


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