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鮮血の槍使い 〜氷結の庭〜  作者: 海カジ
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西の都キル

あらゆるところに書店と飲食店が並び、制服姿の人が行き交うそこはまさに学問の街と言われるにふさわしいところだ。街は白を基調とした煉瓦造りで、魔術によって光の玉が宙に浮かび、すでに暗くなり始めている街を明るく照らす。



薄茜に染まる街が暖色の光で照らされる様は見事なものだ。道では魔術による見世物が行われている。

空中に浮かんだ水の粒がクルクルとうねり、中心に光の柱が現れる。水の粒が一斉に弾けたかと思えば、それらは氷となってキラキラと輝いた。

シャガ王国の魔術師は一度はここに来て自らの腕を磨く……あのような出し物は腕試しの一環で、街のあちこちで行われている。



ルゼッタ様は目をキラキラさせながら光り輝く街を行く。私も人並みを縫いながら今日の宿に向かって歩く。

「魔術ってとってもきれーだね!」

ルゼッタ様の言葉に頷き、私も魔法にかけられた街を見回した。学生時代に毎日見ていたはずの景色がどうも懐かしい。何も変わっていないことに少しホッとした。



魔術には扱い方が二つある。自分自身が魔力そのものを操るか、もしくは何かに魔力を込めて扱うか。前者ができるのは魔術師の才能がある者のみだが、後者は全ての人間に扱うことができる。

…………ルゼッタ様は魔術の才を持つ者だが、国王陛下と女王陛下が魔術師としての教育を嫌がったのである。「龍の巫女として膨大な魔力を持つルゼッタだが、それは使い方を間違えれば大変なことになる」と。ならばいっそ使い方など教えなければいいのだ…………それがたどり着いた結論だ。



宿に着き、グッと伸びをする。安い割には綺麗なその宿は、ベッドが一つとソファが一つある。床は紺色の絨毯が引かれ、白い壁と合わさり清潔感が漂う。

旅の1日目はバタバタと忙しかった。ルゼッタ様も疲れたようですでにうとうとしているが、何とか目を開けて風呂場へと歩きだす。私も着替えの服一式を2人分持って後を追った。



体を洗ったあと湯船に浸かりながらルゼッタ様のことを考えた。ラダ連邦領はかなり広いため、最西端にあるカフィーナの庭まではかなり長い道のりになる。そして何より魔物の存在だ。

ここシャガ王国は小国だが、豊かで技術的にも進んだ国……都市国家である。方々から技術が集まり、資源が集まり一つの国となっている。豊かな小国であるからこそ、国境線に強力な結界を張り、魔物の侵入を拒んでいる。

しかし、ラダ連邦は名の通り連合国家で広大な土地を持つ大国だ。貧富の差、技術格差が大きいラダ連邦が、全ての場所に結界を張ることはできない。

だからこそ、ここキルで準備を整えなければならないのだ。



ルゼッタ様の身支度を整えて、自分も手早く着替える。もうすでに半分寝ているルゼッタ様は半目のままよたよたと歩く。危なげな足取りに不安になって抱え上げた。眠そうな声で「ありがとー」と言う少女に笑いかけ部屋に戻る。

歩く時の決まったリズムの揺れが心地良かったのか、途中からすーすーと規則正しい寝息が聞こえた。部屋の扉をそっと開け、ベッドの上にルゼッタ様を下ろす。毛布をかけて「おやすみなさい」と呟くと、心なしか少女の寝顔が優しくなったような気がした。明かりを消してソファに寝転がると、私もあっという間に夢の中へと落ちていった。

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