職業とマジョリー・ライム
ギルド内がどんちゃん騒ぎの中俺は1人で頭を抱えていた
ギルドに入る時に職業を決めなければいけないらしいからだ
このギルドでなれる職業は剣士、魔道士、狩人、踊子、格闘家、騎士、召喚士、支援士、盗賊、そしてなぜあるのか分からない自由職の10種がある
「悩む...」
まぁ絶対に自由職はないとしてどの職業も王道ファンタジーって感じでかっこいいから決めるに決められない!
「飲んでいるかいスーパールーキーくん!」
俺が悩んでいると黒髪ストレートで黒いローブを着たいかにも魔法使いな女の人が隣の席に座ってきた
「あなたは?」
「私は魔道士をやっているマジョリー・ライム。マジョリーって呼び捨てで呼んでいいしタメ口でいいわ」
なんだこの人!魔道士には思えないほどハイテンションだよ!
「ルーキーくんの名前は?」
「真坂祐介」
俺の名前を聞いたマジョリーは「へぇ...」と言いながら一瞬ニヤリと笑みを浮かべているように見えた
「そうかそうか!変わった名前だね!」
「名前がまんまマジョの人に言われたくないわ!」
ついツッコんでしまった
「で?祐介!飲んでるー?」
「いや...今ちょっと考え事をして...って俺未成年だからそもそも飲めない!」
「いいのいいの!異世界なんだからそんなこと関係なしよー!すいませーんビールをこいつに!」
そうだよな!異世界だし関係ないよな!
「ではお言葉に甘えて...」
ゴクッ...
にがっ!俺にはまだ早すぎたか
そんなことを考えてる俺の横でマジョリーはビールをグビグビと豪快に飲んでいる
よくこんな苦いの飲めるよなー
俺がそう考えているとマジョリーがジョッキ1杯を飲み干した
「で?何か悩んでそうだったけどどうしたの?」
あ!職業!この人が考えてるところに急に割り込んできたからすっかり忘れてた!
「職業を何にしようか悩んでて...」
「結局このギルドに入ることにしたのね」
「放浪人はギルドに入った方が何かと便利と聞いたので」
「まぁそうね...職業ねー、剣士でいいんじゃない?あっ!ビールおかわり〜!」
剣士か!剣を振りばったばったとモンスターを倒していく俺を想像してしまったが...カッコよすぎる!もう剣士にしてしまおうかなー
とりあえず理由を聞いてみることにしよう
「剣士か...その心は?」
「だって君見た感じ魔力すっからかんだし」
え?俺って魔力すっからかんなの!?
魔法とか全く使えない身体なの!?
じゃあ絶対魔道士とか召喚士とか無理じゃん!
「あの〜マジョリーさん...」
「あ!でも剣士は君にはちょっと向かないかも...ビールおかわり〜!」
えぇ!俺剣士も無理なの!?
「ほら、剣士って本人の技量に依存してるところあるじゃない」
技量依存?確かに異世界転生の小説や漫画やアニメと違ってステータスの表示とかないし...それじゃあそもそも職業ってなんで決めなきゃいけないんだ?
「マジョリー」
「ん?」
「職業って決める意味あるのかな?」
「あー、職業っていうのはパーティ内での役割なんだよ」
「役割?」
「そうそう、だから最初に職業を決めることによってその役割にあったスキルや魔法を後から覚える、そうすることによってパーティに入った時にその職業としての役割を果たせるって感じかな...ビールおかわり〜」
どんだけ飲むんだよこの女!
それにしてもこの世界ではそんなシステムになってるのか
何かよく考えられてるよなー
「それでなんで俺が剣士向きじゃないんだよ?」
「だって君あんまり身体能力高くなさそうだからw」
「そんな理由!」
剣士って身体能力高くないとやっていけない職業なの!?
確かにサリアって子もドラゴニクスとの戦いを見てたけどかなり足も速かったしジャンプ力もあった...え?素であれってよく考えたらヤバくね?
「身体能力と魔力がないなら騎士とかオススメだよ!魔力使う系のスキルもほとんどないし基本武装してるから身体能力がなくてもなんとかなるし何より全体数も少ないからかなり重宝されるよ」
騎士か〜!パーティを守る盾って感じなのかな?それもそれでありかもしれない!
「ちなみに全職業のなのでぶっちぎりの死亡率No.1だよ」
「やめておきます!」
騎士って死亡率高いのかよ!全体数が少ないのも絶対にそのせいじゃん!
「なんの話ししてんだよ坊主!」
「あ!エリンギのオッサン!」
俺が頭の中でツッコミを入れているとエリンギのオッサンがビールジョッキ片手にやって来た
「やあエリンギ」
「お!マジョリーの姐さんも一緒だったんスね」
「このスーパールーキーの真坂くんが職業について悩んでたんで少しアドバイスをね」
「ほう、職業か...坊主!狩人はどうだ!鍛えれば鍛えるほど強くなれるぞ狩人は!」
「エリンギ、この子は見た目通り狩人って柄じゃないよ」
「うん、自分で言うのもなんだけど知ってたよ!」
あれ?っていうかこの2人意外と気さくな感じに話してる
「マジョリーとオッサン知り合いなんですか?」
「まぁこのギルドはあんまり大きいギルドじゃないからね、自然と皆仲良くなるものなんだよ」
「ちなみにマジョリーの姐さんはこのギルドの中でもかなりの古株なんだぜ!」
「エリンギ、余計なこと言っちゃダメでしょ?」
「すいません姐さんっ!」
この人見た目20代後半といったところなのに結構歳行ってるのかな?でも歳なんて聞いたら絶対に殺られる!今のマジョリーはそんな目をしている!
「そういえばエリンギは最近転職して狩人になったんだったね」
「狩人のスキルを習得してみたら意外としょうに合ってたみたいなので思い切って転職してみたんスよ!」
「それは良かったじゃない!」
へー!転職なんてできるんだ!
「ん?転職できるんだったら最初っから職業真剣に考えなくても良くないか?」
「祐介...君は私の話をちゃんと聞いていたのかな?」
「あっ!役割と習得するスキル!」
「そう、そして例外を除いてスキルっていうのは二職のしか習得できないの!」
「それはどうして?」
「過労で死ぬ」
「妙に現実的!!!」
詳しく聞くと要はサブ職業のスキルはメインの職業との兼ね合いが難しいらしくスキルによってはそもそも習得してても使えなかったり制度がガタ落ちしたり使用後にかなり疲弊するらしいので基本的にスキルというのは本職のスキルとそれにあった副業のスキルの通称「WW」というのがセオリーだそうだ
ちなみに本職を「メイン」で副業を「サブ」と言うらしい
「そう言われるとますますどの職業にするか悩んでしまう」
「坊主!自由職なんてどうだ?」
待って今自由職っていたよな?それ俺が1番最初に除外してた職業なんだが!?
「なぜに自由職なのでしょうか?」
「自由職は基本的に全ての職業のスキルの習得、使用が可能なのよ」
「!?」
おいおいおい!さっきのWWの概念どこ行ったんだよ!自由職チートオブチートじゃねーか!そんなん考えなくても...
「よし!自由職に決めた!」
「けど自由職は...」
「俺受付でギルド入会手続きしてくるわー!」
俺は受付に走って行った
「姐さん...」
「言いたいことは分かってる、自由職は全ての職業の下級スキルしか習得、使用できない最弱の職業ってことでしょ」
「言わなくてよかったんですか?」
「良かったんじゃない?」
ボソッ(彼にはおそらくあの力もある事だし)
2人がそんな会話をしていることは知る由もなく周りはまだどんちゃん騒ぎの中、俺は最弱の職業である自由職として討伐ギルドのメンバーとなった
「ねぇ!」
「...サリアさん?」
「あなた来たばかりでパーティメンバーとかいないでしょ!私がパーティに加えてあげるわ!」
「え?」