√アウグーリオ
青い海、緑豊かな自然の美しかった地球星は、今やその姿を変えてしまった。蒼かったはずの空はどす黒い想いの雲で覆われ、大地は炎火の魔法で焼かれた。青かった海は地球人の争いの赤で染まった。
地球人と月の一族との大戦の歴史は、“太陽の約束”で1度だけ平和の道を歩んだ。だがそれは刹那、つかの間の時間だけだった。
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地球星の衛星である3つの月の都からは、その姿がよく見える。その中でも中央に位置する、今も光が灯る半月の都に住まう願いを糧とする神がいる。いつもは大樹に宿り、時おり女性の姿をとる彼の神は月の一族の生みの親であり、名を月夜の神・華救夜という。
「人の子もわたしの子も、いつの時代も争いの中よのう」
彼の神が宿る大樹のその根元には、地球人の男と女が手を繋ぎ倒れていた。もう彼らに息はない。人の願いを糧とする華救夜には傷付いた彼らの体も心も悲しく辛く悲痛で、少し昔を思い出させる。
「まるであの子達を見ているようじゃ。この世界に“平和”を願い、あの子達に恋をした地球人の皇子達、そしてわたしの子としてその皇子達の願いを叶えて愛しい子までもうけたというのに...」
華救夜はかつて、双子の我が子達が地球人との争いに心を痛め、恋に落ちたことを思い出して涙を流した。それはもうこの世界では過去の出来事だ。1度だけ平和を叶えたが、無理が多すぎたために再び暗い争いの世界に戻ってしまった。
「わたしは、この子達の願いを叶えたいと思うのじゃ。この世界に平和を。そしてこの子達が再び出逢い、恋をして結ばれる未来が在ることを...」
華救夜が彼らの死の間際に願った想いを叶えるために、月夜の神としての神力をふるう。すると大樹が光に包まれて輝き、倒れていた地球人の彼らをその光が浮かせて包み込む。
しばらく光が瞬いた後、華救夜は地球人の彼らに手をかざすと彼らは光の粒へと姿を変えて大樹の真上、天空へと上っていく。
「あの双子と子供達の生きる世界へ行くといい。わたしは行けぬ世界じゃが...叶うならば、いつか行って逢いたいものじゃ」
華救夜が見送る先には、先程まで無かった大きな穴のようなものがある。時空をねじ曲げたように歪む、丸い穴だ。そして、その中にはとある2つの家族が映し出されていた。
2つの家族が共に母子家庭であり、共に父親の姿は無い。母親達の容姿は違うはずなのに妙に似ていると感じ、その子供達は男の子と女の子である。そして、女の子の方はあの双子に似て強き霊力を持っている。
「父親に助けを求めることしかできなかった子がえらい違いじゃのう。逆にあの鋭い目付きをした能力の才に秀でた子は、己の力を要らぬものとしたようじゃの」
面白いものじゃと華救夜が呟く頃には地球人の彼らの光は丸い穴から、あちらの世界へと消えていた。
華救夜はそれを見送ると世界を繋ぐ穴を閉じた。そして、ふわりと地球星の方へと華救夜は振り返るとまた、地球人と月の一族の争いが続けられる地球星を静かに見詰めていた。
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私達の“願い”はやがて連鎖する。
これは私がシンヤと一緒に紡ぐ恋物語であり、そして真希と優雅と出会う前の物語。




