表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/52

出だしくらいは覚えてます。

春の麗らかな陽気につつまれた良き日

神宮寺麗香は言い表せない葛藤を抱えていた。


数週間前のとある日

乙女ゲームの世界に転生なんてありえないと

鼻で笑ったあの日


攻略情報が以外と使えて思い出して実はラッキーだったかも?

なんて思ったこともありました。


2年生になって新しいクラス

編入生だと紹介された彼女は

乙女ゲームの主人公そのものだったのです。


主人公の彼女

その名も早乙女百合という

ゲーム開始当初はなんの取り柄もない

まさに一般庶民な彼女は

様々なパラメーターをあげることによって

一年後にはやり方によっては完璧超人となる

まさに恐ろしい子

なのである


彼女はもともと普通の家庭で育ったのだが

ある日両親が事故で亡くなってしまう

一人ぼっちになり途方にくれる彼女だったが

母の弟だと言う人がやってきて彼女を引き取るという

その人が超お金持ちの早乙女家の人間で

母親はお嬢様で身分差の恋に落ち

結婚に反対されたため駆け落ちしていたことを知るのだ


まあそんなわけで一般家庭で育ったのに

お嬢様の所作だとか暗黙の了解だとか

わかるわけがないわけで


まあなんとなくお察しだろうが

私の役というか私のキャラは

そんな彼女を鼻で笑ってバカにするのである


実際の私はやりませんけどね?

ゲームのキャラがどうあれ私はそんな自分の格を下げるような器の小さいことはいたしませんよ

とはいえじゃあ友好的に接するかといえば

なんというか私の立場的にむやみに関われる感じでもないので

見守る程度にとどめるといったところか


別に関わる必要はないといえばないのだけど

ああでも彼女が婚約者の彼を攻略しようとするならば

関わらないわけにはいかないのだろう

私としては彼女と婚約者がひっついて婚約解消してくれると

すこぶるありがたいのだけどね


黒板の前で自己紹介する彼女に見覚えがあるなと思ったら

ゲームの最初の方のスチルだった。

そういえば彼女はこのあと順番に攻略対象と出会うイベントが待っているのだ

ゲームだったら


まずは教室で私の婚約者と一悶着あった気がする

婚約者がいるにも関わらず

ナンパするような声をかけておきながら

庶民的なところをバカにするという

私からしたらなんだこいつと思ったんだが

友人はそれがいいのだと言うから

よくわからないものだ


案の定そのイベントがはじまった

ゲームそのままの台詞に内心でドン引きしていて忘れてたが

そのイベントには私の出番もあったことを

なんかたしか場違いな小娘みたいな感じの台詞だった気がする

でもたしかとくに話をふられたわけではなく

婚約者と話してるところに割って入ってた気がする

つまり私は何もしなければいいだけだ

なんだよかった


と思ったのも束の間

私の取り巻きのモブA子さんが動いた

A子さんはあれだ何故か気づいたらいつもそばにいるのだ

直接的な害がなかったため放置していたが

今後は少し考えねばなるまい


私のかわりにA子さんが二人の会話にわって入った

私が言うべき台詞をかわりに言ってくれたようだ

要約するところの

お前ごときが西園寺様としゃべってんじゃねぇよ小娘

といったところか

どうしたもんかと一部始終を眺めていると

私のほうに飛び火してきた


「この方が西園寺様の婚約者で神宮寺家の令嬢の神宮寺麗香様ですわ、お前のような小娘とは格が違いましてよ」


その紹介の仕方はいやだ

どうしろというのだ

身分とか立場とかなんのしがらみもない前世だったなら

「どうも」とか「よろしく」とか言ってりゃよかったけど

さすがにこの流れで私の立場でそんな軽い挨拶はできない

とはいえ何も言わないというわけにもいかないだろう


私は内心でため息を吐きながら

社交辞令用の笑顔を浮かべつつ無難な挨拶をする事にした


「神宮寺麗香と申します」


「あっわっ私は早乙女百合と申しますです」


慌てたように返事が返ってくる

彼女はおろおろと私と彼とA子さんを見回している

なんというか可愛そうになってくる慌てぶりだ

このあともこの状況よりましとはいえ

いろんなイベントが彼女には待っている


「これから大変でしょうけれど良くも悪くも貴女の努力次第ですわ」


具体的なアドバイスは無理だけれど

立場的にも記憶的にも

これくらいならまあ許されるだろうか

なんにせよとりあえず


「今日のところはお帰りになられたら?」


「は、はいそうですね!失礼します」


とぺこりと頭を下げて慌てて彼女は教室をでていった。

神宮寺家の令嬢の威厳を残しつつ上から目線になりすぎない

そんな対応のしかたを普段から気を付けているが

中途半端に記憶があるためなんだか変な感じだ


自分も帰る用意をしながら

これから彼女が遭遇するであろうイベントを思い出す

たしか攻略対象のメガネにぶつかって

通りすがりの保険医の手伝いをさせられ

帰り道に迷って中庭に


そこではっとした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ