可もなく不可もなく。
両親に仲良くするように言われてでもいるのか隆臣が、休日に会わないかと誘いのメールを送ってきた。
正直めんどくさい。
休日はゆっくりしたい。
でもせっかくの機会だから百合の宣伝をしておきたい。
なんせ今はわりと時間があるけれど、これから授業が本格的になってくるし、私はやることが多いから忙しいのだ。
とりあえず誘いを受けることにした。
この間の買い物でお金使ってたら即お断りだったけどね。
おごってもらえばとか思うかもしれないけど私は隆臣に借りを作りたくない。
お互い親の金だしね。
なんにせよ出掛けるときの服装を選ぶ。
この間は制服だったけど今度は私服だ。
完全に趣味と違う服装をしなくてはならないのが苦痛ではあるが、タンスの肥やしになっているブランドの服が日の目を見れるので、たまにはいいかとも思う。
隆臣との外出に待ち合わせなどという概念はない。
お迎えが来る。
女子寮の玄関横に高級車が横付けされる。
そこそこ広いとはいえ邪魔だなぁと思う。
さっさと移動させたくて足早に乗り込むのが、待ちわびてたような感じがして気に入らないが仕方ない。
車に先に乗っていた隆臣を見ると、見覚えのある服を着ている。
この間の服屋で百合が選んだやつだった。
あのあと隆臣がえらく気に入って買っていたのだ。
お前早速かよ。
「麗香、この服はどうだ?」
いやどうと言われてもいいんじゃないですか?としか。
ていうか買ったときも聞いてきたじゃんよ。
とか言うわけにもいかないので。
「よくお似合いですわ。きっと隆臣さんの着こなしが上手いんですね」
と適当におだてておく。
服自体は否定も肯定もせずに着ている隆臣を誉める。
なんせ百合が選んだ服を麗香が誉めるのもおかしいし、かといってそれを買ってるわけだから否定すれば隆臣をダメだと言っているようなものだ。
あーめんどくさい。
隆臣はといえば、それはそうだろうとばかりにふんぞり返って座っている。
少しナルシストも入っている隆臣は人を誉めない。
私の服装にはノーコメントである。
普通なんかしら誉めるもんじゃないのか?
誉められても困るけども。
まあいいや。
百合の印象を聞きたいんだけど、どう切り出したものか。
麗香が百合のことどう思う?ってのも変な話だし。
さっきの服の話の流れで出せばよかったなと思った。
そういえばその服選んだのあの子よね?みたいな感じで。
間があいてしまったし言いにくいな。
百合の話題をふるきっかけが掴めない。
そう焦っていたら向こうから話はじめた。
「そういえばこの服を選んだ早乙女百合とかいったか。センスはそこそこいいようだな母にも褒められた」
マザコンかよって言いそうになった。
たぶん違う。
しかし隆臣はそんな話をして何がしたいのだろう。
「そうですの、よかったですわね。あの子のこと気に入りましたの?」
まあおかげで自然に聞けたけどな!やったぜ。
「あ?なんだやきもちか?」
そんなわけあるか。
とりあえず笑って誤魔化す。
「そうだな、庶民だったわりにはセンスがいい面白い」
どうやら百合は好印象のようだ。
最初から印象が良すぎるとあまりよくないというが、百合が庶民だったという時点で隆臣からすればマイナススタートなので、悪いやつが良いことした時みたいな感覚なんだと思う。
あれだギャップ萌え。
お?これ百合の方にも言えるかもしれない。
今のところ隆臣の印象は可もなく不可もなく、他の人よりちょっと低いといったところ。
そこで隆臣が何か良いことしたらグッと好印象に…。
何か良いことって何?
隆臣がするの?
自分からしないでしょ。
むしろ隆臣の良いことは百合には逆効果になりそう。
うまく誘導できればいいのだけれど、余計なことはしたくないし難しいところね。
そこらへんは由森に相談するか。
「お前はどうなんだ?」
考えてると隆臣が聞いてくる。
やけに真剣な顔だ。
「え、どうと言われましてもほとんどお話ししたこともございませんし」
否定も肯定もできない。
本当のことを言えば良い子だと思っている。
ハイスペックな完璧超人だということを別にしても、優しくて思いやりのある子だと思う。
話したことは少ないけれど、それでもそれくらいはわかる。
だからと言ってそれを麗香で言うことはできない。
まがりなりにも婚約者に別の女をすすめるやつがいるだろうか?
まあここにいるんだけど。
あからさまにはできない。
否定するのは隆臣の機嫌も損ねそうな気がする。
「まだよくわかりませんわ」
これがやっぱり一番無難かな?
隆臣はよくわからない表情をしてから窓の方に顔を向けた。
これでこの話は終了ということだ。
隆臣が何したいのかわからん。
あとからよく考えたら婚約者との一応デートに他の女が選んだ服を着てくるのかよと思った。
ちょっとは嫉妬して見せた方がよかったんだろうか。
わからん。




