作戦は初動が大事
私は一応明日の確認もかねて百合にメールをした。
どうやら百合は明日買い物に行くようである。
とりあえず遭遇イベントはこなしてくれそうだ。
それに現時点で気になる相手はいないという。
まあまだ百合はこの学園に来たばかりで、攻略対象たちともあったばかりだ。
普通はそんなすぐに好きな人などできないだろう。
とにかく今は作戦を進めよう。
そういえば隆臣がどうするかは知らないが、ここまでゲームと一緒なら買い物にでかけるだろうと高をくくる。
最悪呼び出すかと考えていたらメールが届いた。
隆臣から明日一緒に買い物に行かないかという内容だった。
ふぁっ!?
ってなった。
え?どういうこと?麗香は一緒だったっけ?
一回しかやってないしそんなに細かく覚えてないよ!
4割くらいの確率で隆臣のイベントには麗香がいたような気もするけど、どのイベントの時にいたかなんて細かく覚えてはいない。
慌てて由森にメールする。
由森も詳しくは覚えていないが、麗香の登場は序盤に多いため、一緒にいたかもしれないとのことだった。
それに明日はこっそり見守ろうと思っていたが、私はどっちの格好をしようとも会ってしまえば声をかけられてしまうだろう。
友美だとブランド店の多いあの辺りは場違いな感じになってしまうし、麗香なら似合うけど目だってしまいそうだ。
それならば最初からついていって間近で見守るのもひとつの手かもしれない。
あと由森からはよく考えたら自分はあの場所落ち着かんから張り込みとか無理やわとメールが来ていた。
離れた場所からそれとなく見守る役目は翼ちゃん一人にお願いすることになった。
そうメールすると『私がんばるねp(^-^)q』といった返事が届いた。
いたってやる気のようだ。
可愛い。
その連絡を終えてから、隆臣に買い物に行くメールを出した。
さて、財布の中身を確認せねばなるまい。
最近買い出ししたからちょっと心許ない。
最悪カードを使うしかないなぁカード使うと親にわかるから嫌なんだよなぁまあブランド品なら怒られはしないだろうけど。
変な話だが、ブランド品は怒られないが、庶民的なものを買うとめっちゃ怒られる。
まあどっちにしろ買う気はないけどね。
いらないもの買ってもねぇ。
お金もったいないし。
あっという間に翌日の放課後。
久しぶりに麗香のままで放課後をむかえた。
学園からそのままショッピングに向かうらしい。
うやうやしくエスコートされて無駄に高級な車に乗せられる。
いやいらんわ
エスコートも車も正直煩わしい。
自分で乗れるし人の手なんて邪魔でしかないし、高級車は座り心地はさすがにいいけど落ち着かない。
ていうか歩いて行ける距離なんだから歩こうぜ。
なーんて言えるわけもない。
麗香はお嬢様だからちょっとした移動に高級車は普通なのだ。
そういう設定なんだから仕方ない。
隣にいる隆臣にバレないようにこっそりとメールを確認する。
翼ちゃんからメールが届いていた。
『尾行開始します。ドキドキo(^o^)o』
ちょっと顔がゆるみかけた。
危ない。
私は了解とあと今どこにいるかをメールで返信した。
そのあともちょこちょこ届く翼ちゃんからのメールによると、百合は着実にこちらに向かっているようだった。
由森の記憶にある今日のイベントは会話イベントの途中の選択肢で好感度があがるという。
ここで確実にあげとかないとあとが辛いとかなんとか。
その選択は私にはどうすることもできないから百合の実力を信じるしかないのだが。
頼むから正解の選択をしてくれと祈った。
隆臣は女子かと突っ込みたくなるほど選ぶのが長かった。
ジャケット一つとっても長い。
私に聞いてくることもあるが、それはただのパフォーマンスで、聞いてくる前にすでに隆臣の心は決まっているのだ。
それで隆臣の選んでいる方を選ばないといけないわけだ。
めんどくさい。
たぶん選択肢とはこれだろう。
何件目かの店でまたしても隆臣がうだうだやりだしたとき、そこに百合が入ってきた。
翼ちゃんからのメールで来ることはわかっていたが、なかなかドキドキするものだ。
それを隆臣が目ざとく見つける。
「あの庶民こんなとこに来てブランド服の着こなしとかわかるのかよ?ちょっと試してやろうぜ」
わー根性悪いなぁと思いつつもこれが例の会話イベントに繋がるならば止めるわけにもいかなかった。
私は適当に返事して百合に絡みに行く隆臣のあとについていった。
隆臣はこれみよがしに百合にブランドについて講釈をたれている。
たしかにこだわるだけあって質がよくてデザインがいいのはわかるけど私個人としてはそこまでの高品質は求めていない。
ブランドにこだわらなければそこそこの良いものをリーズナブルな値段で購入できる。
それをうまく合わせれば高級感だって出せるものだ。
隆臣は宣言通り百合にどっちがいいか選ばせる。
百合は困惑しつつも隆臣が持っている二着を見比べている。
隆臣の好みでいくなら右手に持っているほうなのだが、百合は果たしてどちらを選ぶのか。
固唾を飲んで見守っていると百合が予想外の行動に出た。
隆臣の持つ二着から選ぶのではなく、店にある他の服の中から一着持ってくるとそれがいいと言う。
隆臣もまさかの展開に言葉がでないようで、悪態をつくどころか素直に受け取ってしまっている。
そしてその一着は、隆臣が持っていた二着よりも隆臣にしっくりきた。
「ふんっまあまあ見る目はあるようだな。お前の名前はなんだったか」
「早乙女百合と申します」
負け犬のような隆臣の質問に百合は気分を害すことなく答える。
とりあえず隆臣の中の百合の好感度が上がったことはわかる。
たぶん選択肢はあっていたのだろう。
覚えていないからなんともいえないけどね。
そこで隆臣は満足したのか買い物は終わった。
適当なところで車から下ろしてもらい一人になってやっと気が抜ける。
完全には緩められないが、さっきまでよりはましだ。
とりあえず翼ちゃんに無事に終わったことと詳しくはまた明日にというメールを送る。
由森にも同様のものを送って寮の部屋に帰った。
ちなみに結局私は何も買わずにすんだので財布にダメージはない。
これにも一安心である。




