いざ作戦会議。
今日は作戦会議!
というよりまずは由森に協力をあおがねばならない。
そのためにも私は自分が麗香であることを話さねばならない。
自分から実はこうなんですよと話すのは少し恥ずかしい。
だって今まで話す必要がなかったから。
最初は必死だったのと今ではなれてしまった上に変装状態にも友美なんて名前がついて、普通に受け入れているが、よくよく考えるとちょっと恥ずかしいような気がする。
変装とかお前有名人かよって。
まあ学園内の普通科という限られた場所ではそれなりに麗香は有名だけども。
といっても名前だけ一人歩きしてよくわからない噂になってそうだけど。
ドキドキしながら由森を待った。
翼ちゃんが隣にいてくれなかったら不安すぎて死んでた。
しばらく待っていると、由森が来た。
「ごめん待たしてもうて」
「ううん大丈夫!」
走ってきたようで由森はぜーぜー言っている。
崩れるように椅子に座って鞄をなげだす。
とりあえず由森の息が調うのを待った。
「ほんで今日はなんや大事な話やっけ?」
「うん。今から話すことは私にとって大変な秘密でね。みんなにバレちゃうといろいろ困るの」
「そんなんうちに話してもうていいの?」
「うん。だからまず約束してほしい、今から話すことは誰にも言わないって」
「それは絶対約束する。人の秘密言いふらすとか絶対やらん」
由森が真剣な顔で答える。
その顔を見て、私も覚悟を決める。
何事にもリスクはあるものだ。
リスクを怖れていては前には進めない。
「私は本当は神宮寺麗香なの」
「ああやっぱりそうなんや」
そんなに驚かないだろうなとは裏話を聞いたときに思っていたけれど、あっさり納得されて拍子抜けする。
あんなに緊張したのはなんだったんだろう。
「やっぱ驚かないね」
「まあなんとなくそうなんやないかなって思ってたしな」
なんだかちょっと不安になった。
変装していると、取り巻きさんたちはよってこないからバレていないものだと思っていたのだけど、気づいてる人もいるのでは?
「この変装ヤバい?髪型と化粧変えてメガネしてるだけだし」
「いや、大丈夫ちゃう?うちの場合は前世の記憶の分もあったんと間近でしゃべったからな」
「でも由森は麗香の私とは会話ないよね?」
「ないけどわりと寮で目撃してる。エー花のキャラやってのもあったから気になってみとったし」
「そうなの?全然気づかなかった」
「あんた以外と抜けとるな」
「ううぅ否定できねぇ」
「まあでもよっぽどやないとバレへんと思うで。どっちとも交流したらさすがにあれやけど」
どっちも交流といえば百合は大丈夫だろうか?
まだ本の少し話しただけだけれど。
麗香とは同じクラスだし、友美とは一応友達になったのだ。
これから交流することもあるだろう。
今日の作戦次第では積極的に関わることになるかもしれない。
麗香では関わらないようにもっと気を付けなければ。
まあ百合は天然っぽいから気づかなさそうだけど。
「それでね、ここからが相談したいことなんだけど」
「なんやの?」
「私ね、婚約破棄したいのよ」
「ああそういえば麗香は隆臣の婚約者やったな」
私は由森に何故破棄したいのかを事細かに説明した。
隆臣は好みじゃないこと、自由になりたいこと。
自分から破棄したり嫌われると少し不味いこと。
「それでね向こうから破棄してもらうためにはやっぱり百合に隆臣を攻略してもらうのがてっとり早いのではないかと思うんだけど」
「まあそうやなぁゲームでは隆臣ルートやと麗香とは婚約破棄するもんなぁ」
「問題はゲームじゃないからこそ百合の気持ちは大事にしたいと思うの」
「まあそうやなぁ」
「だから百合が他の人のルートに入ってるなら諦めた方がいいかなって思ってはいるの」
ここまでは実は翼ちゃんとメールで相談済みだった。
ただ、私は隆臣ルート以外をまったく知らないので、百合がどの方向を向いているかわからない。
隆臣を薦めようにも他のルートよりは記憶があるだけで、詳しくはそこまで覚えていない。
隆臣を百合の好みに仕立てあげた上で、百合に惚れさせる。
そして百合にもそれとなく隆臣を薦める。
それで自然とひっついてくれるといいのだけど。
その作戦の細かい部分を由森に監修してもらいたいのだ。
まず最初の疑問はこれだった。
「この間綾斗と美術室に一緒に来てたけどあれは綾斗のルートに入ってる感じなの?」
もしそうだとしたら早々に別の作戦を練らねばならない。
「いや、あれは出だしのイベントとたいして変わらんやつやったはず何日間かかけてとりあえず一回ずつ攻略対象と会うイベントがあったはずやで」
「そうなの?私出だしから隆臣にしか会ってなかったけど」
前世の友人が渡してきた攻略チャートは隆臣用だから、他の人との出会いは強制イベント以外なかったんだろうか?
私は由森にそう聞いてみた。
「そうかもな攻略対象決まってるんやったら他のやつと会わんと余った時間で自分磨きせんとわりとシビアやからなぁ」
自分のパラメーターが一定以上じゃないとはじまらないイベントがあったりして序盤から攻略対象を決めておかないと終盤であとちょっと足りない現象が起きるらしい。
あまりにもシビアだってことでパラメーター引き継ぎの完璧超人プレイが実装されたのだけれどと由森は言う。
「私今日ここに来る前に百合さんが生徒会長さんと一緒にいるのを見ましたよ」
ここで翼ちゃんが百合の目撃情報を教えてくれる。
「あーそういや今日は会長と会えるイベントがあったな」
「まあやっぱり会長さんもそのゲームに?」
「そうやで、ぶっちゃけ会長が一番攻略が楽やったはず」
こうなると気になるのは隆臣との遭遇イベントだ。
たしかあった気がする。
攻略してもらうためには必ずあってもらわねばならない、ゲームとは違うだろうけど少しでも可能性があるならばそれにかけたいのだ。
「隆臣とのイベントは?」
「明日の放課後やったはず」
「じゃあまだか、場所は?」
「ショップやなゲームの選択肢としては買い物に行くやったと思うけどリアルで言うとたぶんあの辺かな?ブランドがいっばい並んだ辺り」
「あーあそこか」
なんとなく違和感をずっと感じていたのだが、ゲームと微妙に違う辺りが違和感になっていたのだろう。
明日は百合と隆臣にばれないようにそこに張り込もうと思う。
百合が向かわなさそうならそれとなく行くよう仕向けよう。
まとめるとこうだ。
目的は百合と隆臣をひっつけて婚約破棄に持っていくこと。
そのためにも百合と隆臣を会わせること。
同時に百合を隆臣好みに、隆臣を百合の好みになるようにうまく言って変わらせる。
百合がどうしても隆臣とは合いそうにない、もしくは他に好きな人がいるようなら作戦は中止。
私は怪しまれないように隆臣と百合にいろいろ吹き込まなければならない。
吹き込む内容を監修するのが由森だ。
そしてこれまで以上に大変な二重生活に突入する私をサポートして癒してくれるのが翼ちゃんの役目だ。
なお隆臣の気持ちは正直どうでもよかった。
ひどいかもしれないけど、百合を薦めることで隆臣にダメージがあるとは思えなかった。
せいぜい侍らせてる女の子がいなくなるかもしれないくらいか。
その代わりに百合がそばにいるならそっちの方が絶対にいい。




