最終話 懐かしき日々よ
いよいよ、入隊式当日
練習の成果を出せるのか?
俺達は体育館を予行練習で
置いた同じ場所に小銃を
置くと自分達が座る
パイプ椅子の前に並んだ。
自分達の席の下に
帽子を置いた。
しばらくすると
入隊式の本番前の
練習が始まった。
全区隊の助教達に
取り囲まれながら
物凄い形相で睨みながら
俺達新隊員にこう言った。
「お前ら、絶対途中で
下向いたりなんかするなよ?」
「お前ら、
分かってるやろうな?」
「もし、そんな事したら
つまみ出したるからなぁぁーー!」
「はいっっ!」
「もっと、声出せっっ!」
「はいっっ!」
「もっとぉぉ!」
「はいっっ!」
「よしっっ!」
各区隊の精強な班長達が
一人ずつ練習の合間、合間に
そんなやりとりを
入れたりしていた。
気合いは充分。
おかん、おとん、
来るって行ってたけど
ほんまに今日来るかな?……。
いや、今はそんな事
気にしなくていい。
今は目の前の事を
一生懸命やるだけや!
俺がそんな事を思ってる通り
皆も同じ気持ちだった。
俺達の表情は
真剣そのものだった。
練習が終わると時間に
なるまで体育館の隣の洗車場で
待つ事になった。
時間が立ち、行進曲が
流れると共に俺達が
入場する事になった。
前を見て行進する俺達。
体育館の中に入っていくと
拍手が沸き起こっていた。
「おめでとぉぉ~~!」
「かっこいいぞぉぉ~~!」
同期達の家族が俺達を
見ながらそう言っていた。
俺はその光景を
目の当たりにして心の中で
もうすでに泣いていた。
感動していたのだ。
まだまだ期間は短かいが
自衛隊を続けてきてよかった。
たった一週間でもそう思う事が
出来るほどこの瞬間は
本当に貴重な瞬間だからだ。
順番にパイプ椅子の前に
並んいくと座った。
すぐに立って国旗を
参列していた各中隊の隊員達、
同期達の家族達、
そして俺達新隊員が斉唱した。
その後、連隊歌を斉唱し、
一人、一人名前を
呼び上げられた後に
写真撮影をする事になった。
この写真撮影をする時に
俺達は自分達の家族が
来ているかを目で必死に探した。
なかなか見つからないか……。
そう思いながら必死に
数分ほど探すと俺を
見つけた母親が俺に手を振った。
来てくれてありがとう……。
俺は目に涙を浮かべながら
ただ、写真撮影をする
広報の隊員を見つめていた。
ここで10分ほど家族と
話す時間を設けられていた俺達は
自分達の家族に
一目散に走っていった。
俺も入隊式に来ていた
母親と父親に話す事が出来た。
「幸助、お前痩せたか?」
父親がそう話しかけてきた。
「うん、ちょっとね……。」
俺がそう言うと母親は
目に涙を浮かべながらこう言った。
「ちゃんとご飯食べてるか?
皆と仲良く出来てるか?」
「それから……」
俺を見て話が止まらない
母親を横で見ていた
父親がこう言った。
「そんな質問したら
幸助答えられへんやろ?」
「そうやなぁ……。」
二人でそう会話をしていた。
「おかん、俺、大丈夫やで。
皆と仲良くやってるし、
ご飯もちゃんと食べてるよ。」
俺がそう言った途端、
母親が納得したようにこう言った。
「そうかぁぁ……。」
「心配してたから、
ほんまによかったわぁぁ……。」
その母親の言葉に涙を
流しそうになった
俺はすぐにこう言った。
「今から小銃の
授与式があるから行くわ!」
「また、後でな!」
俺は家族に一旦、別れを
告げると小銃の授与式の
場所に向かった。
数分立って小銃の
授与式が始まった。
各区隊に分かれて区隊長から
自分の小銃が配られた。
「164(ひとろくよん)、
082(まるはちに)、銃!」
「銃!」
自分の小銃の番号を言われて
「銃!」と言われると
「銃!」と答える俺。
周囲の同期の家族達は
その様子を見てほとんど
笑っていたのだが
俺の母親と父親は真剣な表情で
ビデオカメラで
その様子を撮影していた。
入隊式が終わって
しばらく駐屯地内で
両親と話す時間が設けられた。
俺は真っ先に
両親の元に会いにいった。
もう、俺は
感動しっぱなしだった。
本当は辞めたい……
逃げたい……
そんな気持ちが
あってこれまでやってきた。
でも、そんな弱い所を
親には見せたくない。
そう思っていた俺は
ずっと笑顔で話あっていた。
しばらく、両親と話終わると
両親が俺にこう言った。
「続けられそう?」
「うん、もちろん!」
「へっちゃらやで!」
「だから、安心して。」
そんな余裕などないが
両親の前だと強がってしまう俺。
両親は安心したようにこう言った。
「幸助、安心したよ……。」
「幸助、頑張るんやぞ!」
「短期は損気、損気は短期!」
よく父親が俺にいう言葉だ。
あるドラマを見て好きになって、
入隊前から言っていた言葉なのだ。
「うん、ありがとう。」
「気ぃつけてな!」
「じゃあな、幸助!」
「うん、また!」
そんな会話をして、
両親は帰っていった。
入隊式も無事に終わった。
俺達は晴れて
自衛官になったのだ。
これから、主人公
「南 幸助」は
前期教育や後期教育
そして、中隊配属で数々の
訓練をしていくのだが
それはまた別の話……。
それから、
数年の月日が立っていた……。
自衛隊を退職した俺は
何気ない平和な
日々を過ごしていた。
そんなある日、
「もしもし、南。」
中学時代からの友人から
突然、電話がかかってきたのだ。
「おう、久しぶりやな。」
俺は元気よく、そう答えた。
「今日、会えるか?」
「うん、いけるけど
待ち合わせどこにする?」
俺は友人にそう答えた。
すると、友人は
いつもの待ち合わせ場所を
指定してきたのだ。
「また、あそこか!」
「はいよ!了解~。」
俺は友人との会話で
そう嬉しそうに返事をした。
その友人と待ち合わせする時は
決まっていつもの場所で
待ち合わせする事になるのだ。
俺は電車でその場所に向かうと、
先に着き、壁により沿って
携帯を触っていた。
すると、近くで通行人に
話しかけている黒いスーツの
服を着た男の人が見えた。
懐かしいなぁ……。
俺もあの時……。
そうぼんやりと考えていると
数m先に友達が手を振ってきた。
よし、行くか!
そう思い、友人の方へ
歩き始めたその瞬間、
誰かに肩をたたかれた。
「……!!!」
俺は振り向くとその黒いスーツを
着た男の人が目の前に立っていた。
「あっっ!」
俺はその黒いスーツを着た
男の人を見て
そう驚いた声を出した。
え……。
なんで、ここに?
信じられへん……。
俺が驚いていると
その黒いスーツを着た
男の人がこう言って
声をかけてきた。
「自衛隊に興味ありませんか?」
「自衛隊列伝 兵士の記憶」完結
約半年間「自衛隊列伝 兵士の記憶」を
お読み頂きありがとうございました。
皆様に支えて頂いたおかげで
今日まで執筆出来ました事を
感謝しております。
まさか、自分の体験談で
たくさんの方々にお読み頂けるとは
思ってもいませんでした……。
私は本当に幸せ者だと
思っています。
これにて、一時完結とさせて頂きます。
続編は皆様のご意見をお聞きしてから
考えさせて頂こうと思っております。
皆様、
ご愛読ありがとうございました。




