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第十三話 再会

思わぬ人物と再会するのだった……


三階を上がった左側だけは

教育隊本部の部屋と

四区隊の同期の部屋になっている。

右手にはトイレがある。

すぐさま、その同期の後ろをついていき

トイレに駆け込んでいった。


トイレに駆け込んで見ると見事に

大便器が二つ空いていたのだ。

こんな幸運があるだろうか……。

俺はすぐに大便器に入った。


緊張した空間から開放されたのか、

溜まっていた便が気持ちよく出たのだ。

ホッとしておしりを拭いていた

その時……!


聞いた事がある声が聞こえてきたのだ。

「あれ!?トイレ使われてるやんけ!

くそぉぉっっ!」

この声を聞いた瞬間背筋が

凍りついたようになっていた。


この声の主こそ俺が一番恐れている

一区隊三班の堤下班長だった。

この班長の外見はスキンヘッドで

黒のメガネをかけている。

人相も難いもいかつい人で

一区隊の中では名前を聞いただけでも

震え上がるくらいの人なのだ。


その時、運悪く右端の奥から俺が

後ろからついていった同期が出てきたのだ。


「ふぅぅ……すっきりしたぁ。」

そう言って前を歩こうとした時

目の前を見ると堤下班長に気づいたのだ。


「お、お、お疲れ様ですっっ!」

堤下班長に驚きながらもぎこちなく

10度の敬礼をする同期。

教育隊の新隊員が目の前に

現れた事に驚く堤下班長。


「お前、ここ何階かわかっとんのか!?」

キレぎみで話しかける堤下班長。


「三階です。

二階では凄く並んでまして……」

申し訳なさそうに答える同期。


「そうか!でもなぁ、お前が出てきた

その便器は助教専用って知らんかったんか?」


「し、知りませんでした!」


「ここだけは使ったらあかんのんじゃいぃぃ!

おらぁ、こっち来いや!

ぼけがぁぁっっ!!」

同期との会話に我慢の限界がきたのか、

ぶちギレる堤下班長。


堤下班長は同期のお腹に

蹴りをいれてから胸ぐらを

つかみトイレを出て

中央広場に連れ出したのだ。


同期はすいませんでした、

すいませんでしたと何度も

同じ事を言いながら必死に

堤下班長に謝っていた。


そんな言葉に聞く耳を

持たずに同期にこう言った。


「腕立て伏せ用意!」

しかし、同期はあまりの堤下班長の

恐さに泣き出して

腕立て伏せの姿勢をしたがらないのだ。


その様子にしびれを切らした班長は


「はよ!腕立て伏せの姿勢とれや!

ぼけがぁぁっっ!」


まるでYクザのような口調になっていた。

その一連の様子を聞いていた俺は


班長が前を向きながら同期に対して

罰を与えてるのを横目で見ながら

全速力で階段を降りていった

その時……!


後ろから威圧感ある

視線を感じとっていた。

しかし、俺はその視線に振り替える事なく

二階に降りていき、

二班の部屋に戻っていった。


時刻はとっくに清掃の時間になっていた。

戻ってきた俺は上岡に怒られて

問いただされると理由を

説明するとなんとか許してもらえたのだ。


そして、清掃が終わって

班で集合したのち区隊ごとで

集合したのだが堤下班長の

顔を見れずにいた。


目が合えば必ずさっきあった

出来事で罰が与えられるのでは

ないかと思ったからだ。


その後、国旗掲揚をした後

そのまま体育館に行って

制服やはんちょう等が入っている

RVボックスや衣のうを受領した。


午後は受領した教育隊専用のジャージに

着替えてから同期と会話しながら

受領した制服等の整理整頓をしていた。


教育隊専用のジャージとは

ほとんどは紺色だが紺色の中に赤色が

混ざった色をしている上下の

教育隊専用のジャージの事だ。


半長靴等とは自衛隊専用の靴の事を言う。


夕方になって教育隊、区隊、

班のそれぞれの夕礼が

無事に終わると断髪式をするため

俺達はすぐに食堂に向かい食事をした。


部屋に戻るとすぐに断髪式が始まった。

まぁ、断髪式と言っても

大層な事ではない。

ただ、班の皆で仲良く

五厘刈をするというだけなのだ。


「じゃ、とりあえず近くにいる

倉橋に渡しておく。


バリカンは1つしかないから

バディどうしで刈あっても

いいから仲良く使えよ!」

班長がそう言うと

倉橋にバリカンを渡した。


「はいっっ!」

班長がそう言うと元気に班の皆が

大きな声で答えたのだ。


すると、すぐさま班の皆で

話し合いになり

班長が言ったとおり、

バディどうしで刈あう事となった。


バリカンを使う時間は

昼の今からしてしまうと

風呂に入るまで切った髪の毛が体に

付着してかゆくなってしまうため

夕食を食べた後に

五厘刈をする事になったのだ。


しかし、そうなると11人いるため

どうしても時間が

かかってしまうという事になって

班の皆が困ってしまった。

その時……!


一人の男が天井に向けてまっすぐ

手をあげた男がいた。

そう番長の上岡である。


彼はもしものために使うかもしれないと

思っていた上岡は実家からバリカンを

1つ持ってきていたのだ。


機転が利く上岡のおかげでバリカンを

二つ使える事になり、

皆は安心した表情になった。


こうして班の皆で仲良く

五厘刈をする事になったのだ。


班のメンバーが五厘刈を終えると

続々と班のメンバー達が

お風呂に入る事になった。


前日までは班長か班付の引率でしか

食堂に行って食事をしたり、

お風呂に入る事は出来なかったが


この日からお風呂に入る時だけは

二人以上であればその中の一人が

引率する事で入っていく事が出来るのだ。


寮の中で切ることになった俺は床に

新聞紙を引いてバディである

小野と一緒に

バリカンで五厘刈にしたのだ。


早々と切り終えた俺達は原田と

新山にバリカンを渡して

今日制服と共に渡された風呂桶の中に

着替えとバスタオルを入れて

両手に持ってダッシュで

廊下を走り出した


その時だった……!


「こらぁぁーーー!!

待てぇぇーーー!!!」

後ろから明らかに俺達を呼び止める

大きな声が聞こえてきたのだ。


俺達はその事で背筋に悪寒が走った。

恐る恐る後ろを振り返ると目の前には

俺達の班長が立っていた。

いきなり、腕立て伏せか?

そう、覚悟をして思わず唾を飲んだ。

その時班長からは

意外な言葉を言い渡された。


「廊下を走るな!

競歩で行け!!」


「はい……っっ!!」

俺達はそう言うと競歩で早々と

その場を退散した。


そして、小野は生活隊舎を出ると班長や

班付の号令の見よう見まねで

引率して浴場前へ着いた。


「別れ!」

小野が俺に敬礼してそう言った。


「別れます!」

俺も小野に敬礼すると

小野が敬礼を止めてから俺も

すぐさま敬礼を止めた。


「早く入ろうぜ!!」

俺が小野に言うとすばやく頷いた。

昨日と同様に左端の入り口から入ると

溢れんばかりの同期達が入っていた。


どうしようか……?

その光景にしばらくきょとんと

突っ立っていると

一人の同期が俺達に声をかけてきた。


「おい!お前らここ、

二つ空いてるから来いよっっ!」

俺達と同じくらいの身長の同期が

そう話しかけてきたのだ。


俺達は被っていた教育隊専用の白帽子を

取ってそれぞれ、目の前の靴箱に入れると

その言われた風呂棚の前に着いた。


そして、声をかけてくれた同期に

礼を言おうとお互い顔を見合わせた

その瞬間……!


「あっっ……!?」


「あーーーーっっ……!?」

お互い顔を見合わせた途端

そう大きな声を出しあった。


「南じゃねえか……!」


「隈元……!」

まさか、こんな所で隈元に会うなんて

夢にも思ってなかったのだ。


「おぉーーーー!!」

俺達は思わずそう話ながら握手していた。

沈んでいた気持ちが忘れるくらい

舞い上がっていたのだ。


「まさかここで会うとはな!?

驚きや……!」

そう言う隈元とは同じ茨木事務所から受け、

自衛官候補生の試験を受けた隈元だった。


「南、お前はどこの区隊やねん?」

隈元がそう聞いてきた。


「俺は1区隊。お前は?」

俺が隈元に聞いた。


「お前、1区隊なん?

俺は2区隊や!」

隈元が驚くようにそう答えた。


「そうなん……??」

そう聞いた俺も驚いていた。


「あぁ!それで、お前は一区隊で何班なん?

俺は二区隊三班やけど……。」

淡々と話す隈元。


「俺は二班だよ。

え……??

あの、いかつい顔の人!?」

俺は思わず大きな声を出してしまった。

二区隊にも強烈な班長がいる。


各区隊に堤下班長のような

恐い班長がいるのだ。

その二区隊の班長は堤下班長と

同じようなYクザのような

人相をしており、

荒々しい性格の班長なのだ。


ただ、間違った時だけしか

怒らないため、基本的には

優しい班長なのだ。

すると周りの同期が

一瞬こっちを振り向いた。


「しーーー。

静かにしろ!」

隈元が慌てて俺に注意した。


「ごめん……。」

俺は隈元に謝った。


「お前は2班か?

まぁ、一緒に頑張ろうぜ!」

隈元が俺に元気よく話したのだ。


「あぁ、もちろん!」

そう言うと俺達は握手を交わした。


「南、早く風呂いこう!」

風呂場に入る準備が出来た

小野が俺に急ぐように言った。


「あ!いっけねっっ……!

隈元、じゃあな!」

俺は隈元にそう言うと

隈元が頷くと俺は小野を追いかけるように

慌てて風呂場に向かったのだった……



第十四話へ続く……




3月30日、この日になると入隊した

あの日を鮮明に思い出します。


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