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第一話 忘れぬ記憶

私、未来 進が陸上自衛官だった頃の

出来事を元に小説を作りました。


自衛官という非日常を体験した私の話を

少しでも多くの方々にお読みいただければ幸いです。

それでは本日より、開始です!




俺の名前は南 幸助。

どこにでもいる会社員だ。

今日も商品を品出しして荷受けして発注して接客をして……

というように慌ただしく仕事をしていく。

ただ、仕事を終えてから自分の

時間がある事は最高だって思う。

昔なら考えられないだろうが、今は本当に思う。


『シャバは最高だ!』ってな。


そういえば、昔もそうだったなぁ。

いや、今ほど慌ただしくはないか?

ハハハハハ……。

本当にあの頃を思い出すといい思い出だなと思うし、

ふと戻ってみたい……なんて思う事がある。


だけど、あんな事を経験したら今の仕事は

正直へっちゃらだって思ってしまう。

それにあんな事をするよりかは

今の仕事の方が恵まれているな……って思ってしまう。


色んな事を想って俺は自衛隊を辞めたけど、

全てが無駄になるような事はないと俺は思う。

民間ではまず経験出来ないような事を

経験出来たし、本当に心と体が強くなれたと思う。


自衛隊のおかげだろう。

感謝してる。


「南くん……南くん……」

上司が俺に話かけてきた。


「南くん……!聞いてるか?」


「は、はい!」

昔の事を思いだしていてもうろうとする中、

俺は上司の問いかけに必死に答えた。


「南くん 、 センター便来るから取りに行って

中に入れといてくれるか?」


「南くん、それ終わったら

昼飯にしていいから。頼むぞっっ!」

俺の集中力が欠けている事に

気付た上司は俺に微笑みんで見せて

左手で俺の左肩を軽く叩いた。


「はいっっ!」

俺は元気よく返事をした。

そして、いつも通りセンター便を

下ろす荷受け場に向かっていった。


俺が体験した自衛隊の話を語ろう。

それはまず一つずつ話を整理して

遡っていかなければならない。

まずは自衛隊に入隊する

直前の高校3年生の時からだ。


高校3年生、進路をどうするか?

迷う時期だ。進学か就職か?

でも、この時点で俺の進路はもう決まっている。

それは自衛隊だ。

学力も運動神経も

それほど良くも悪くもなく

いつも学年の平均並みなのだが

唯一、誇れる所と言えば

正義感が強くて、

負けず嫌いな性格な事だ。


そんな俺だが、最初から

自衛官になる気など

さらさらなかった。

本当は警察官になりたかった。

地域の人々の安全を守る仕事だ。

小さい時から

警察官のドラマを見ていて

悪党を逮捕したい!とか

かっこいい刑事になりたい!等

そんな事をよく思っていたからだ。

自衛隊なんて、これっぽっちも

考えもしなかった。


しかし、

ある出来事がきっかけで

俺は自衛隊に入る事を

決意するのだった。

その出来事とは……!?


そう、いじめだ……!

昔からいじめ問題が叫ばれる中

俺もいじめを受けていた

一人だったのだ。

それは中学2年生の出来事だった。

俺は当時、部活動をしていた。

卓球部に入っていたのだ。

また、俺は社交的ではなかったため

「おい、南!

今日俺んちでゲームしようぜっっ!」


友達から遊びの誘いをされても


「ごめん!俺、疲れてるから。」


「南、今日は空いてるよな?


俺達と一緒に出かけようぜ!」


「ごめん!俺、今日塾だから。」


塾がない日でも疲れていなくても

そう言って断わり続けていた。

次第に俺を遊びに誘う友達は

いなくなっていった。

俺の周りには友達と呼べるような

存在はいなくなっていた。


その事もあって、

周りの人間がまるで氷のように

冷たい態度に変わっていった。

それが分かる出来事がある。

例えば、体育の授業で

卓球をしていた時の事

よく話す友達と二人で

ラリーをしていた。


俺がラリーでミスをしてしまい

ピンポン玉を遠くに飛ばしてしまった。

そのためボールを取りに行った時、いつもであれば


「南、ゆっくりでいいぞ!」

と言われるのだが


「南、早くしろよ!!

いっつも……いっつも……

お前はおせぇぇんだよ……っっ!!!」

とこう言われるまでになっていた。

皆の前で怒鳴りちらす事が

当たり前になっていたのだ。

そんな事が繰り返し続くと次第に

不良グループに目をつけられ、

俺の靴箱に押しピンを忍ばせたり


体育の授業ではわざと

俺にボールをぶつけたり等

そういったいじめが

繰り返し行われるように

なっていったのだった。

担任の先生に相談しても

いじめをした者に注意だけに

終わってしまいその翌日から

また同じいじめが始まる……


俺の心が段々と

崩れていくようになっていた。

最初はどんなに忙しい日でも

どんなに疲れていても

友達からの誘いを断る事等

なかったのだ。


しかし、当時の俺にとっては

友達、塾、学校……

もう、心が疲れきっていた。

周りの人に心を閉ざしきっていたのだ。


そして、俺は色々な問題に

耐えきれなくなり学校に行くのを止めたのだ。

そう、ひきこもりになったのだ。

それから家にひきこもるように

なっていった俺はもう、

あんな辛い事などしたくはない……

辛い気持ちになるくらいなら

行かない方がいい……

俺はだんだんと物事を

悪い方へ、悪い方へと考えていった。

その考え方が行き着いた

俺は次に自殺する事を考えたのだ。

死ねば楽になる。

死ねばいろんな事を

考えなくて済む……

俺なんて死んでも

誰も悲しまない……

そう思うようになっていた。


そして、ある日の深夜

自殺をしようと台所に行き

包丁を手に持ち、自分の胸に刃を向けた。

これで一思いに胸を刺せば

俺は解放される……そう思った。


しかし、いつもどんな時だって

一緒にいてくれる家族の事を

思うと胸を刺す事は出来なかった。

自分が死ねば、家族がどれほど悲しむのか?

家族にどれほど辛い思いをさせるのか?

そんな事を考えた俺は

その日、自殺する事を

思い留めたのだった。


家にひきこもり

自殺まで考え込むように

なっていた俺は

いくら、担任の先生や友人や

家族に話し合いをしても

学校を登校する気持ちに

なれずにいたのだ。


しかし、ある事をきっかけに

俺の気持ちは一変するのだった

3ヶ月立って、俺は中学3年生になっていた。

学年が1つあがり、クラス替えがあっても

相変わらず、担任の先生や家族に登校を促されても

俺は学校に行く気持ちになれずにいた。

そんな中、父が励まそうと部屋を

ノックして俺の部屋に入ってきたのだ。


「幸助、ちょっとこっちへ来なさい。」

どうせ、登校しろ!とか言うんだろ?

自分の部屋で一人でこもっていた

俺をリビングに呼んできたのだ。


「……わかったよ。」

渋々、了承した俺は

リビングに向かう事にしたのだ。

リビングに着き、いつも食事をする

テーブルの前にあるイスに座った。


そして、俺から一言


「何の用……??」

ふてぶてしい態度をとる俺。


「幸助、警察官になりたいって言ってたよな?

幸助は昔から警察官みたいな

かっこいい人になりたいって言ってたよな?」

父が俺の目を見ながらゆっくりと話していた。


「……うん」


「気持ちを切り替えて、

いじめてたやつを見返す気持ちで

精神や肉体が鍛えられて強くなれるし、

警察官みたいにかっこよくなれる。

まさに幸助にとってうってつけの仕事があるんだ……。」


「どんな仕事??」

俺は父にそう聞いた。

すると父がこう答えた。


「自衛隊だよ!」


「……!!!」

父のその答えに俺は戸惑った。

俺はだいたい予測はついてはいた。

なぜなら、俺の叔父が陸上自衛官だったからだ。

その事もあり、父から叔父の

自衛官だった話を俺が幼少期の頃から聞かされていた。


しかし、その話をするといつも

最後に今の幸助じゃ、無理だといつも言われていた。

だから、まさか俺に勧めるとは

思ってなかったのだ。

さらに父は俺に自衛隊になる事を強く勧めた。


「この世の中、生きていくには厳しい事だらけだ……

今の幸助じゃとてもこの世の中を

生きていく事は出来ないだろう。

だから、幸助、お前は自衛隊に

入って強い心を養いなさい!」


「ちょっと考えさせて……。」

俺はその場で即答はせず、リビングを

出てすぐ部屋に戻って考えた。部屋に戻るやいなや

俺は……自衛隊に入ってやっていけるのだろうか?

父の言う事は本当なのだろうか?

そう一人で自問自答した。


そうするとだんだん

不安になってきた。

俺が自衛隊に行く!?

そんな馬鹿な……っっ!

俺なんかが自衛官に

なれるわけがない!


しかし、俺は父のある言葉が

脳裏に焼き付いていた。

強い心を養う……

父との会話の最後に言われた言葉が

胸にグサッと突き刺ささっていた。

俺には今、それが必要なんだ!


よし、もう一度父に話してこよう…

俺は自分の部屋を出てリビングに向かった。

リビングに着くとすぐに父に話かけた。


「父さん、話が……」

そう言おうとすると

父がもう分かっていたかのように

俺にこう言った。


「決めたんだな……?」

俺は父のその言葉にすぐに頷いた。

俺はその日、自衛官になろうと決めたのだった。

俺は父に自衛官になる事を伝えた。

そう、俺は自衛官になる事を決めたのだ。



「まずは、学校に行く事から始めよう!」

そう父に言われた俺は

3ヶ月ぶりに学校に行く事になった。

クラスが代わっていた俺は

少し戸惑ってはいたがあの下向きの

気持ちとは全然違っていた。


なぜなら俺は必ず自衛官になって

精神的にも肉体的にも強くなってみせるっっ!

そう思っていたから気持ちが

強くなっていてまるで世界が変わって

見えたように思えたのだ。

清々しい気持ちで登校した。


学校に着くとすぐさま

俺のクラスの教室に入った。

扉を開けて入ると


「嘘! 南くんが来たんだ。」

俺の登場でクラスの皆が驚き

ざわつき始めぼそぼそと呟いていたのだ。

俺はなに食わぬ顔で

俺の席を探した。


「え~っと、俺の席は……」

そう一人で呟いていると

クラスの女子が俺に優しく話かけてきたのだ。


「南くん♪」

後ろから話しかけられた俺は

すぐに後ろを振り返った。


「あ……市橋!」

振り返ると市橋だった。

市橋は去年俺と同じクラスだったから

俺とは顔馴染みなのだ。

学級委員長をやってる市橋は

リーダーシップがあるので

いち早く俺に気付いて声をかけてきたのだ。


「南くん、こっち、こっち!」

いちはしは右手を大きく振って

俺の机を案内したのだ。

クラスの皆が俺を注目していたため

恥ずかしくなり、急に俺の顔が赤くなっていた。


俺は自分の机に着くと

すぐに着席した。

隣で市橋が話を続けた。


「南くん、ついに学校に登校出来たんだね?」

市橋が俺にそう問いかけた。


「まぁ……ね!」

俺は恥ずかしがりながらその問いかけにそう答えた。



俺はなんとか席に着いたのはいいものの、

やはり落ち着かなかった。

この日から毎日学校に登校するようになっていた。


しかし、一日、二日、三日と日に日に

時間はたつものの市橋以外まともに

クラスの人達と会話する事が出来ずにいた。


そんなある日、あるクラスの同級生が一人、

俺に声をかけてきたのだ。


「幸助、大丈夫か?」

自分の席の机にうつ伏せの状態で

いつもと同じように休み時間は

寝ていた俺に同級生が話しかけてきた。


ふと顔を上げ、俺に声をかけてきた方を

見ると同級生が目の前に立っていた。


「お、おいちゃん?」

俺はその同級生を見てそう言ったのだ。

及川だった。


及川は俺と同じ卓球部に所属していて

及川が誘ったから卓球部に入ったり、

俺が誘ったから及川は同じ塾に入ったりしていた。

よく遊んでいたのも及川だった。

俺達は凄く仲が良かったのだ。


なぜかと言うと幼稚園時代から

今の中学まで一緒で親友と呼べる間柄だった。

そんな及川が俺に話しかけてきた。


及川は突然、学校に来なくなり、

メールもしなくなった俺を心配していたのだ。

その時の俺は誰とも話したくない時期だったため、

たとえ仲の良い及川でも連絡を取りたくなかったのだ。


「幸助、何があったか話してくれへんか?」

及川にそう言われて俺と及川は休み時間の間、

俺は今まであった事や自分の気持ちを及川に話した。

俺は気がつくと一日中及川と一緒にいた。

それほど夢中になり、及川に話したのだ。


学校が終わって近くの公園にいって話をしていた。

ベンチで二人で話していた。

俺の話を聞き終わると及川が俺にこう言った。


「幸助、色々あったと思うけど、気にすんなよ。

昔は昔、今は今。」

及川は俺にそう言うと俺に微笑みんで

見せて左手で俺の左肩を軽く叩きこう言った。


「悩んだらまた俺に言ってこいよ。

相談に乗ったり、聞いたりするからさ。

もう一人で抱え込むな。

だから、また前みたいに一緒に遊ぼうや!」

及川にそう優しい言葉をかけられた

俺はその場で号泣した。

もう人目もはばからず、泣いた。


及川は泣いている俺の背中をさすりながら

『大丈夫。大丈夫。』

と俺が泣き止むまでそう言い続けていた。


俺は弱い。本当に弱い人間だ。

だけど、世の中にはこんな弱い俺でも

支えてくれる人がいる。

そう思った俺は次の日から人が

変わったかのように明るくなっていった。


まずは、及川と仲が良かったクラスの人達が

話している輪の中に自分から入っていき、

少しずつ話しかけていった。

毎日、毎日その輪の中に入っていき、

話しているとクラスの人達が

俺を受け入れてくれるのが伝わってきた。


最初、俺が話しかけた時は

少し嫌な顔をされていたが毎日、

毎日話している中で昔から

よく話す友達だったように輪の中に

自然に打ち解けていったのだ。



その事もあり、あまり話さなかった

クラスの人達とも気さくに

声をかけて話すようになり、

新しいクラスにも馴染んでいったのだった。



第二話へ続く……



第一話は凄く辛かった思い出になります。

その出来事があったから自衛隊入隊に繋がり、

今の私があると思います。


自衛隊が好きな方、自衛隊入隊を目指されている方、

4月から入隊される方はぜひこの作品を

お読み頂ければ幸いです。



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