ただのほのぼの
「せーんぱい♪」
「……なんだ」
「授業サボって昼寝ですかー。明後日テストですよー?」
「……今数学なんだよ」
「そーいえば数学苦手でしたねー。でも、やらなきゃできませんよ?」
「ほっとけ」
「あ、なんなら私が教えてあげましょーか?」
「いらんそしてあざとい」
「ひどっ、先輩ひどい!」
「それがあざといんだって」
「それはそうと先輩」
「切り替え早えーな」
「いつにしますかー?」
「は? 何が?」
「だから、勉強ですよ。さっき言ったじゃないですかー」
「いや、オッケーなんて言ってな……」
「では明日にしましょー。私は戻りますね。トイレってことになってるんでー」
「ちょ、おい……」
──翌日──
「ということでやって来ました屋上ー」
「なんだそのノリ」
「ドンドンパフパフ」
「質問に答えろ」
「だって、昨日は話している場所を伝えてなかったんですもん」
「誰にだよ」
「先輩メタいです」
「お前だよ。ってかまたお前サボってきたのかよ」
「それはさておき」
「無理矢理すぎる」
「先輩、さっそくこの問題解いて下さい」
「なんだこの暗号は」
「証明ですよ。中学生の内容ですから、解けるはずです」
「わかるかこんなん」
「仕方ないですねぇ……答えはこうですよ」
『△ABCと△DEFにおいて…………よって△ABC∽△DEF』
「わかりましたか?」
「俺があいつであいつが俺で君の笑顔が眩しくて」
「せんぱーい、帰ってきて下さーい」
「……はっ、俺は何を」
「私の笑顔が眩しいって言ってました」
「それだけは無いわ」
「ひどい」
「ってか、わざわざ数学サボって昼寝に来てんのに数学教えてもらわなきゃいけねーんだよ」
「だから、やんなきゃダメなんですって」
「お前だってサボって来てんだろ? 大丈夫なのかよ」
「あ、心配してくれてます? ついに先輩のデレがやって来ましたか!」
「ちげーよバカ」
「ちぇー、なんだ。まぁ、大丈夫ですよ。私まだ2年生ですもん」
「その2年が大事なんだよ。そしてなんだ、それは3年である俺を追い詰めてんのか? なら残念だったな。俺は数学以外すべて5だ」
「現実逃避はやめた方がいいですよ」
「いやマジだけど」
「…………」
「…………」
「さ、そろそろ戻りますね」
「現実逃避はやめた方がいいな」
「では~」
「ちょ……ったく」
──またまた翌日──
「はーい。はうあーゆー?」
「I'm bat. Fackyou.」
「ひどい!」
「お前の発音の方が酷いわ。ってかまたお前サボってるしそれは昨日の発言に影響されてんだろ突っ込み追い付かねえ」
「これは一矢報いたということでいいですか? 雪辱を晴らしたということでー」
「無理に難しい言葉使うな」
「無理にじゃないですもん」
「雪辱の成り立ち」
「…………」
「『雪』という言葉には『灌ぐ』という意味があり、受けた恥を灌ぐことから雪辱という」
「ごめんなさい」
「分かればよろしい」
「…………」
「…………」
「……ふふっ」
「? どうした?」
「いやー、こうしてのんびりするのもいいなーと」
「……まぁ、悪くはねーよ」
「私も先輩のクラスが数学の時サボろうかな」
「やめろバカ」
「なんでですかー」
「評定下がるだろ? そんなことしてまで俺と話す必要ねーだろ」
「ありますよ。彼氏ですもん」
「…………」
「彼女が彼氏に会いに来ちゃダメですかー」
「……良く言えるもんだな、照れ臭くて彼氏を名前で呼べない奴が」
「ちょ、ちょっと、それはお互い様じゃないですか!」
「顔真っ赤。ゆでダコみたいだぞ」
「先輩もですけどねー!」
「俺のは地だ」
「んな訳ないでしょー」
「……だんだん敬語が抜けてきてんぞ」
「えっ、あっ……ごほんごほん。改めてですね」
「無理だぞ」
「あぅ……」
「……来たいなら来い。ただ、それで成績下がっても知らんからな」
「……やっぱり先輩はツンデレですね」
「うるせ。……そろそろ戻れよ」
「……そうですね」
「じゃあな。夢花」
「……はい、想太先輩」