レーマン教授の不思議なお話し 〜太郎のお話し〜
午後4時20分。
いつもこの時間に琢磨はこの研究所のドアを叩く。
トントン
ほらね。 どうぞ、と僕は促すと、予想通り琢磨――田中琢磨――がどかどかと入ってきて、そのあと遠慮がちにこちらへ歩いてくる。
どうしたんだろ?らしくない、と思ったすぐ後、原因なるものがわかった。
今、僕が椅子に腰掛けている隣に、新しく入ってきた新入り研究員がいるのだ。おそらく、琢磨はこの新入研究員に人見知りしているのだろう。
琢磨が人見知りの気があるなんて、初めて知ったな。
琢磨は新入り研究員の立っている反対側に立ち、耳元で僕に囁いた。
「この人だれ?顔が怖いんだけど・・・・・」
僕は思わず笑ってしまった。 人見知りじゃなくて、ただ怖かっただけだったのか。まあ確かにこの新入りはコワモテタイプだ。それも無理はないな。
このままでは、琢磨と会話もままならないので、ひとまず新入り研究員を帰らした。
どうせ、役に立たないしね。
「今日もまた話しを聞きに来たのかい」
めんどくさそうなふりをしながらそう尋ねた。
「だって家にいたってやることないし・・・・」
「テレビとかみればいいのに」
と、俺が呟くと、
「テレビより教授の話しを聞いた方がいい。」
とかわいいことを言ってくれる。
「しょうがないな・・・・それじゃあ今日はある少年の話しをしよう」
と言って、僕は琢磨に限らず誰かに話しを聞かすときの、僕特有の独特な空気を作った。
そういえば前に、琢磨はこの空気が好きとか言っていたな。
ふと琢磨を見ると、わくわくしながら純粋な目で、僕の瞳を捉えている。
こんな目をされては焦らすことなんてできるはずもなく、僕は静かに口を開いた。
「太陽が海に落ちるころ、小さなジャングルジムの上で、少年は泣いていました。
僕はとりあえず名前を聞いてみることにしました。
「君はこの辺の子かな?名前はなんていうの?」僕がそう問いかけてみると、少年は涙を拭いて、こちらを向きました。
「僕の名前は村田太郎。僕の家はここから徒歩数分の所にあるよ。」
教授は、次になんで泣いているかを聞きました。
「どうして泣いているの」
「怖いから泣いているんだよ」
教授は太郎の落ち着きはらった態度に驚きました。しかし、顔には出しませんでした。
「どうして怖いの」
「人が死んだんだ」
太郎の意外な発言に教授は驚きました。しかし、顔には出しませんでした。
「それは、誰かな」
教授は聞いた後後悔しました。もし太郎が今の発言でまた泣いてしまうかと思ったからです。しかし、太郎はそんなことはなく、威風堂々としてました。
「知らない。ニュースで見たんだ」
「なんで、他人が死んだのに泣いているの」
「怖いからだよ」
意味が分からない。子供というものは抽象的に話すから詳しく聞かないとわからない。全く、面倒な生き物だ。と教授は改めて思いました。
「なにが怖いんだい」
「とりつかれるのが怖いんだよ。背後霊とかが怖いんだよ。」
「それが、死んだ人を見て泣いているのとなにか関係があるのかい?」
「僕は死んだ人が僕にとりつかないように泣いてたんだよ。」
太郎はそう言いました。教授は、成程。そうゆうことだったのか。と納得しました。でもなんで太郎は泣いたらとりつかれずに済むとおもったのだろうか。という新たな疑問が生まれてきました。
「どうして泣いたら、憑かれないで済むと思ったんだい?」
教授が思ったことを口にすると、太郎は大人らしい表情で答えました。
「前に、友達に大切な宝物を壊されちゃったんだ。そして僕が怒ったら、その友達は泣きながら僕に謝ったんだ。そしたら、急に怒る気が削がれちゃって、結局そのことは許したんだ。
朝、ニュースを見て、交通事故で死んだ人がいたんだ。僕はそれを見て、
「バカだな」って言ったんだ。そしたら母さんに
「そんなこと言ったら事故にあった人にとりつかれちゃうよ」って言われたんだ。
それ聞いたら急に怖くなって、どうすればとりつかれないかな。って考えたんだ。そしたら、あの友人のことを思い出して、泣いたら許してもらえる、とりつかれずに済むと思ったんだ。だから・・・・」
太郎はそう話した後、また泣き始めました。
嘘の涙は本当の涙より純粋なのかもしれない。。。
・・・・
「はいっ、おしまい。」
僕は話しをやめ、独特な空気を解放した。
琢磨はよくわからなかったのか、首をかしげたまま動かない。
「はい、もう話しは終わったんだから帰った帰った。」
僕は琢磨にしっしっ、と手を振り、帰れとサイン。
「よくわかんなかったよ。」そう琢磨が言うと僕は決まり文句を言う。
「まあ、そのうちわかるさ。」
そして、琢磨が決まり文句を言う番。
「また来てもいい?」
「あぁ、いつでもおいで。研究所は君を待ってるよ。」
いろいろ、ミスがありました。 一話よりはるかにわかりづらいと思われます。