レーマン教授の不思議なお話し 〜優希のお話し〜
「やあ、また君かい?」
「だってひまなんだもん」
学校なんてつまんないし、家にかえってもやることがない。
ゲームも飽きたし、マンガなんて数えきれないほどよんだ。やることといったらつまらないテレビをだらだらみるだけ。 それだったら教授の話しを聞いていたほうが100倍ましだし。
というわけで今日も僕こと田中琢磨は教授の研究所に来た。 教授はいつも研究所でなにやら難しいことをしている。
「教授ぅ〜、今日もなんかお話ししてよぉ」
「う〜ん・・・。毎日違う話しばかりしていると、こっちもネタがつきるんだけどな。 ・・・・そうだっ、ある少年の話しをしてあげよう」
教授はなにかを思い出すかのように右上に視線を置いた。
ちなみに教授はかなり若い。・・・と思う。 なんせ年を聞いてもはぐらかされたり、流されて結局わからずじまいになってしまうのだ。教授の助手に教授の年を聞いてみたが助手もわからないみたいだった。 しかし、史上最年少でなんかの博士号をとったということを聞けただけでも大きな収入だった。
「うんっ、してして!」
僕はそう促すと、教授は教授がいつも僕に話しを聞かすときのあの独特な雰囲気の空間を作り上げた。
ふわーんというか、落ち着くというか、まあとにかく僕はこの雰囲気がとても好きだった。
教授は視線を僕に戻すと、静かに語り始めた。
ある少年がいました。その少年は自分が大嫌いでした。自分のなにからなにまで嫌いで、もう本当に嫌いで嫌いで仕方がありませんでした。
「やぁ、ゆぅ坊。また今日も1人ぼっちかい?」
少年の名は優希。女らしい名前ですが、れっきとした男です。優希は自分の名前も嫌いでした。
「教授だっていつも1人ぼっちじゃん」
二人はお決まりの言葉を言い、沈黙。
もともとあまりおしゃべりなほうではない二人はすぐにこのような沈黙になってしまうのです。
教授が先に口を開きました。
「ゆぅ坊は自分のどこが嫌いなんだい?」
「全てだよ」
「そんなに自分が嫌いなのに、自殺とかは考えないの?」
「もちろん」
「なんで考えないの?」
そう疑問を振りかけると優希は当たり前のように、言いました。
「自殺するひとは自分が大好きだからだよ。」
「・・・・?。なんで自殺する人は自分のことが好きってわかったの?」
「だって自殺は現実逃避の頂点じゃん。嫌な現実から逃げ出す行為が自殺でしょ?嫌な現実ってのは必ず自分が主体となって初めて現れるんだ。自分が傷つくのが嫌だから逃げ出す。ってのが現実逃避でしょ? それって自分が好きな証拠じゃん。 結局自分が可愛いから、逃げるんじゃん」
ゆぅ坊は自分が嫌いでした。今も嫌いです。そしてこれからも・・・・・
「はいっ、これでおしまい。」
「よくわかんなかったし、つまんないよ」
教授の話しはいつもこんなかんじで終わる。全然面白くないし、よくわからないことがほとんどだ。
そして話しが終わると、教授は必ずこう言うんだ。
「まあ、そのうちわかるさ。」
そのあと必ず僕はこう言う。
「また来ていい?」
そしたら教授は必ずこう返す。
「あぁ、いつでもおいで。研究所は君を待ってるよ」