5・もふもふは正義です
これだけは前世から変わらないことがある。
目覚まし時計がなる前に起き出したわたしは、ベッドから飛び下りると裸足で窓に駆け寄った。
カーテンを開けると、晴れやかな青空が広がっている。
今まで行事が雨になったことってないや。
お祭り好きだから?
今日は待ちに待った遠足です。
レッツゴーもふもふ天国!
幼稚園からバスに乗ること一時間。
到着したのは郊外の動物園だ。
駅から遠いので、母とは来たことのない動物園である。
コアラさんがいるらしいですよ。
* * *
はわわー。
癒されますねえ。
膝の上で口許をもきゅもきゅさせているうさしゃんに、大満足のわたしである。
人に馴れているうさしゃんは、かいぐりしても嫌がらない。
もふもふですわー。
平日のふれあい広場は、若い親子連れか、同じく遠足だろう他幼稚園の園児たちで賑わっていた。
お触りできるのはうさしゃんの他にひよこや、山羊などである。
山羊さんは大きくて怖いので、園児たちにはあまり人気がない。
人気なのはやはり、うさしゃんやひよこのようである。
ひよこもいいよね!
てのひらに収まるちんまりさが堪らないよね!
あっ、先生がカメラ持ってる。
せんせー撮って!
ベストショットを狙ってカメラを構える先生に、わたしは手を振ってアピールした。
「せんせ、こっち」
先生がこちらに気づく前に、先生の服の裾を誰かが引いた。
「せんせー、ひよこあたまにのった!」
「せんせ、とって」
目を輝かせて頭上を指すゆうとくんと、先生にアピールするかなたくん。
あらあらと笑った先生は、二人にカメラを向けた。
それを見てムッとするわたし。
今わたしの方が早かったよ!
かなたくん、わたしに気がついてたよね。
目があった気がするもん。
ひどーい!
ついむくれていると、隣のななちゃんが「ミアちゃん」と呼んだ。
「見て、寝ちゃった」
見ればななちゃんの手の中でひよこがうとうとしていた。
まんまるになった姿が可愛い。
二人して覗きこみ、ひよこを愛でているうちに接近してきたゆうとくんがにゅっと顔を出した。
「みあ、うさぎかして」
どうやらうさしゃんを触りたい様子。
先ほどの件が頭をよぎったわたしは、そっぽを向いた。
「ダメ」
わたしのうさしゃん!
ちょっと浮気しちゃったけど、君が一番だよ!
しゅんとするゆうとくんの後ろで、かなたくんがぼそりと呟いた。
「けち」
うん、わたし何にも聞いてないよ。
精神年齢数十歳のスルー力は無敵だ。
ふれあい広場の後、目当てのアルパカさんを見たわたしは概ね満足して帰途についた。
母に話を聞いてもらおうとスキップで帰ったら、お客さんが来ていた。
「みあちゃんー」
すっかり忘れてた。
スキンシップ過多なりおちゃん登場である。
りおちゃん、いつから待ってたの?
動物園の話をしてあげるから、首に抱きつくのはやめてね。