3・桜の咲く季節です
ふふふ。とうとうこの日がやって来た!
姿見の前でくるりと回り悦に入っているわたしの後ろで、母がにこにこしている。
ママが嬉しそうだとわたしも嬉しい!
今日は幼稚園の入園式です。
制服を着るとお姉さんになった気がするね。
近所の市立幼稚園は制服がかわいいので、着るのをずっと楽しみにしていた。
スキップすると、みつあみにしてもらった髪が踊る。
買ってもらったばかりの猫の髪留めを見ると、心も踊る。
跳ね回るわたしを追いかけて、カメラを構えた母がパチパチとシャッターを切っている。
この日のために新しいカメラを買ったらしいです。
「ママ、遅れちゃうよ」
「ごめんね、行こうか」
手を繋いで家を出た。
なんの変鉄もない景色が輝いて見える。
ビバ、振り回されない人生。
わたしは自由に生きるのです。
市立の幼稚園なので、集まったのは市内に住む幼児たちです。
母が受け取った案内によると、わたしはさくら組らしい。
何度経験しても、クラス分けは緊張してしまう。
母と別れて教室に入った。
机にひらがなの名前が貼ってあったので、まっすぐに席に向かう。
ひらた みあ。うん、これだ。
リュックを下ろして席につく。ふと気がつくと、隣の席についた男の子が目を真ん丸にしてこちらを見ていた。
「おまえ、ひらがなわかるのか」
言われて気がついた。幼稚園児ってひらがな読めないんだっけ。
そういえば小学校で習うよね。
「ママに習った」
「ずりー」
唇を尖らせる男の子。
悔しかったらお勉強することですね。
「これよめる?」
指差されたのを見れば『まき ゆうと』とある。
ゆうとくんか。
「まきゆうとでしょ」
「すげー」
感心しきりのゆうとくんの後ろから、別な子が集まってくる。
「ゆうとー、あそぼ」
中でも眼鏡の男の子が仲良しらしくゆうとくんの後ろから構いに来る。
ふおお、こんなに小さいのに眼鏡がよく似合うなあ。
「かなた、みて」
ゆうとくんがかなたくんに感動を伝えようとしている。
名前のシールを一瞥し、かなたくんは「ふーん」と気のない返事を返す。
な、なんてクールなんだ。
「ひらがなよめるの、ふつー」
「えぇっ」
……別にわかってますよ。全っ然すごくないよね!
大人になればみんな当たり前に覚えることだからね。
しかし初対面の子に、そんなに言わなくてもいいじゃないか。
じとーっと見つめれば、じろりと一瞥が返る。
こわっ。
ゆうとくんにはそんなにベッタリのくせに!
納得いかない思いを味わいつつ、あっかんべーをしてやった。
子供だから許されるって、素晴らしい。
さくら組の担当の先生は、笑顔のかわいい女性だった。
やったぁ!
ついてますね!
ついてないのは、かなたくんが同じ組だったことだ。
まあ、仕方ないよね。
人生とはままならぬものなのです。
幼稚園生活、頑張るぞー!