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2・公園にやってきました

 晴れやかな青空!

 穏やかな春風!

 右手には新品の砂場セット、左手には大きめのゴムボールを抱え、わたしは息を大きく吸い込んだ。

 清々しい空気で胸を膨らませる。

 今日はわたしの公園デビューです!


「走ると危ないよー」


 後ろからベビーカーを押した母が追いかけてくる。

 子供の体って転びやすいよね。バランスが悪いのかなぁ。

 向かう先は近所のカエル公園です。

 程よく静かな住宅街に囲まれたカエル公園は、幼児をつれたママさんたちの集いの場となっています。


 ママにも友達できるかな。

 この一年ちょっと、母とは一緒に暮らしてきたけれど、友達とかいないみたいで娘としては心配です。

 わたしも頑張って手伝うね!


 たどり着いた公園には先着がいた。


 うーわー。

 今時のママさんておしゃれなんですね!

 ヤンママってやつかな? とても子持ちには見えません。


 わたしが立ち止まってぱちくりしていると、母が追い付いた。

 む、華やかなママさんたちに怯んだ模様。

 わたしは母の手を掴むと、ママさんたちの方へ引っ張った。


「こんにちわ!」


 おろおろする母を尻目にわたしがにっこり笑うと、ママさんたちの表情が柔らかくなった。


「こんにちは」

「かわいいわねー。いくつ?」

「ミアちゃんにさいー」


 ビシッと二本指をたてたわたしはえっへんと胸を張る。

 本当はまだ一歳だけどね!

 あと一週間だし、細かいことは気にしないよ!


 ぎこちないながらもママトークを始めた母をその場に残し、わたしは真っ直ぐに砂場に向かった。

 本日の目的はこれである。

 新品のスコップの切れ味を試してくれるわ!


 砂場では、先に来た子供が山をつくって遊んでいた。

 乾いた砂で作っているので、さらさらと崩れるそれをせっせと高くしてゆく。

 のせては零れ、のせては零れしている砂がもったいない。


「ちがうよ! それじゃたかくならないの!」


 声をかけると、山をつくっていた子がびくりと振り返った。


 ふわあぁ。美人さんだぁ。

 淡い茶色の猫っ毛がふわふわと揺れ、見開いた真ん丸の瞳は髪よりも濃い色に沈んでいる。

 守ってあげたい可愛さってこういうことなんですね。


「貸して」


 思わずその子が手に持っていたスコップをとる。

 ……おっと、違った。

 そのスコップは返して自分のスコップを取り出した。


「おみずくんできて!」

「……ぇ?」


 戸惑うその子に転がっていたバケツを渡した。

 砂山作りには水はかかせないのですよ。

 その子がくんできてくれた水を使い、山を作り直した。

 せっかく作った山を崩されたその子は悲しげだったが、山が完成してスコップの背で叩いて固めるときには、おずおずと笑顔を見せてくれた。

 癒されますねえ。

 これはきっと将来もてますな。


 山に両側から掘ったトンネルが開通し、私たちは中で固い握手を交わした。

 といってもがっちり握ってるのわたしだけだけどね!

 トンネルが繋がった時のやりきった感は、作った人にしかわからないよね。

 山の向こう側で、頬に泥をつけた子が目を輝かせて笑っている。

 うん、山作りの心意気は伝わったようだ。


「なまえ、なんていうの」

「……りお」

「りおちゃん! わたしミア」

「みあちゃん」

「よろしくね!」


 友達になれるかな。

 振り返ってみれば母も笑顔であった。

 友達できたかな。

 よかったね、ママ。

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