表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

17・想定外です

 わたしの通う幼稚園は公立だからか、余り習い事はせず園児を割りと自由に遊ばせてくれます。

 ご飯とか予定のある時は集まるけれど、それ以外では組に関係なく泥んこで遊んでいることも多いよね。


 教室でななちゃんたちと絵を描いて遊んでいると、誰かに名前を呼ばれた。

 どこかで聞いた声に首をかしげつつ顔を上げれば、「ミア」とまた呼ばれた。

 呼んだ人の顔を見て、思わずげっと思う。最近、こういう反応をしてばっかりの気がしますよ。


「えぇーっと」


 聞こえなかった振りをしてもいいですかね? それか、しらばっくれるとか。

 迷っていると、ずかずか近づいてきた人物がわたしのクレヨンを奪った。


「返してよ!」

「ミア、きいてる?」


 聞いてますとも。答えたくないだけですよ!

 目の前には不満げな顔をするアルト君の姿が。

 あのクリスマス以来、時折こうして訪ねて来るようになったのだ。

 嬉しくないけどね……。


 わたしが反応に困っていると、アルト君の姿に気がついたアリアちゃんが駆け寄ってきた。


「アルにぃどうしたの」

「ミアにあいにきた」

「えぇー、なんで?」


 毎回お約束のやり取りを交わしている。なんだかんだ言いつつもアリアちゃんはお兄ちゃん子だ。

 お姫様体質のアリアちゃんとは、何となく馬が合わず一対一で遊んだことはない。


「アルにぃ、あそぼう」

「だめ。ミアとあそぶから」


 アルト君は上目遣いのアリアちゃんの誘いをにべなく断った

 ちょっと!? わたしオッケーしてないよ!

 可愛い妹のお願いなんだから、聞いてあげればいいのにー。


「うー……」


 ほら! アリアちゃんが涙目になっちゃってるじゃないですか!

 真ん丸に見開いた瞳を潤ませているアリアちゃんを、わたしは慌てて宥める。


「アリアちゃん、一緒に遊ぼ?」

「アルにぃじゃなきゃイヤ」


 この兄妹は~~!

 わたしがわなわなと肩を震わせていると、後ろから肩を叩かれた。

 振り返ると、悟りきった表情のななちゃんがいた。

 ななちゃんは、首を横に振っている。


「いっても、むだだよ?」


 幼稚園児の見せる表情と思えない深みに、わたしがぽかーんとしていると、ななちゃんはすっくと立ち上がった

 そして別のグループの所へ歩いていったかと思うと、ゆうとくんとかなたくんを連れてきた。


「こおりオニしようよ!」


 さも名案という顔で提案するななちゃん。

 確かに氷鬼という遊びは人数が多い方が楽しいけど。なんでこの二人を連れてきたの?

 その提案でこの場が収まるとは思えないよー。


「いーよー!」


 頭を抱えるわたしをよそに、元気よく返事するゆうとくん。いや、問題はあなたじゃないんですよ?


「かったら、ミアちゃんとデートできるよ」


 ななちゃんの発言にえっと思ったのはわたしだけらしい。

 各々参加表明をしているのを呆然と眺める。

 愚図っていたアリアちゃんでさえも、アルトくんが参加するなら、と頷いた。


 いや、えっと……なんでデート? なんでわたし?

 どういうこと?


 どや顔のななちゃんに突っ込もうと思うも、あまりの展開に頭がついていかない。

 何故かやる気を出した面々は、園庭に繰り出していく。

 それをよろよろと追いかけた。


 結局、担任の先生が呼びにくるまで、氷鬼をしてあそびましたよ。

 勝った人ですか? 氷鬼って勝敗がつき辛いですよね。なので凍った回数で決めました。

 一番はななちゃんでした。今度のどや顔はちょっと可愛かったのでハグしておいた。

 (わたし)から全力で逃げられたことなんて、全然気にしてないからね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ