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13・サンタの正体は秘密です

 わたしを出迎えた母は、私の後ろについてきた二人を見て目を丸くした。


瀬尾(せのお)アルトです」


 我が家に連れ込まれたお兄ちゃんは、渋々という態度で名乗る。

 もうちょっと愛想よくできないんですか。


 ひとまず二人はリビングに通した。

 母が飲み物を淹れてくれる。


 ソファーに座り、無言でカップを見つめるアルト。

 その隣で文人がココアを飲んでいる。

 甘党だったとは知らなかった。

 知る必要もないけどね!


「ミアのお友だち?」

「ありあちゃんのお兄ちゃんだよ」


 訝る母に説明する。

 文人は何度もこの家を訪れているが、わたしが同年代の子供を我が家に招いたことはない。

 ママの仕事の邪魔になるからね。


「しりあい?」

「いや。たまたま見かけて」


 尋ねると、文人がアルト君を見て首を振る。

 まあ、幼児が一人でブランコ漕いでたら気になりますよね。


「アルト君お家は?」

「……」


 黙して語らないアルト君。

 それを見てわたしも察する。

 ……あー、喧嘩中かな。

 家出してやる! ってとこか。

 でもねぇ、あなたの年で家出は早いんじゃないかなあ。

 きっと親御さんも心配してるよね。


「ココア嫌い?」

「きらいじゃない」


 その割りには口すらつけていませんが。

 冷めたココアなんて空しいだけですよ。

 むーんとわたしが思案していると、カップを置いた文人がおもむろに手を伸ばした。アルト君の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。


 思わずぽかーんと眺めてしまうわたし。

 何この構図?

 あなたたち、初対面じゃなかったでしたっけ。


 アルト君が文人に拳を繰り出した。

 おお、かなりの本気パンチ。

 腹に食らった文人は平然としている。

 文人の腹筋がいかほどのものかは判然としないものの、思った以上に効き目がない。


 何なんでしょうね。

 急にじゃれあい始めた二人を、わたしは放っておくことにしました。

 よくわからないものには関わらないのが吉でしょう。


 その後、渋々とではあるが切り分けたケーキを振る舞っていると、玄関のチャイムが鳴った。

 今日は来客が多いなぁと思っていたら、アルト君のママだった。

 母が幼稚園の連絡網を見て連絡したらしい。

 渋るかと思いきや、アルト君は案外すんなりと家に帰るのを了承した。

 ぺろりとケーキを平らげた彼は文人に「後で吠え面かくなよ!」と捨て台詞を吐いて、玄関へ駆けていった。


 どういう流れでその台詞に行き着いたのかよくわからないが、吠え面ってどんな顔だろう。

 一応玄関まで送りにいったわたしがそんなことを考えていると、不意に腕を引かれた。


 挨拶合戦をしている母たちの下で、わたしの腕を掴んだアルト君が首をかしげた。


「名前なんだっけ」

「……」


 そういえば名乗ってはいなかったですね。

 しかし断る!

 これ以上お近づきになりたくないからだ。


 沈黙を守るわたしの肩に母が手を乗せた。


「ミア、アルト君にさよならは?」


 ママ!

 そんな馬鹿なと、思わぬ伏兵にわたしがおののいていると、きゅっと手を握られた。


「またね、ミア」


 い、嫌だぁぁ!

 何この展開!?

 要らないよ、そんな約束!

 最後の最後に笑顔なんて出してこないでよー!


 文人はちゃっかりディナーも堪能してから帰っていった。

 本当に何しに来たの、アナタ。

 そういえば、クリスマスパッケージに入ったものを手渡されたので「よく知らない人にもの貰っちゃいけないんだよ!」と教えてあげた。

 最近の子供は防犯意識もバッチリです。


 翌日、わたしの枕元にクリスマスプレゼントが置いてあった。

 母は「サンタさんから」と言っていたが、わたしはサンタの正体を知っている。

 大人の夢も壊しちゃいけないよね、うん。

 それにしても今年のサンタは太っ腹ですね。

 何でプレゼントは2つあったのだろう。


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