11・友達の家に行きます
窓の外では北風が吹き乱れている。
その様子をわたしはぼんやりと眺めていた。
あーやだなぁ。
この風の中を帰ると髪がボサボサになっちゃうよ!
最近なんだか調子が狂うのです。
おかしいなぁ。
文人に出会った辺りから、どうも何かがしっくり来ない。うまく言えないけど……。
モヤモヤと考えていると、後ろから肩を叩かれた。
「ミアちゃん? どうしたの」
不思議そうなりおちゃん。
そうでした、今はりおちゃんの家に遊びに来ていたのでした。
りおちゃんの家は、メルヘンな感じの洋館だ。
ママさんの趣味かな。
可愛いけど、住宅街にどーんと建っていると、少し違和感があるよ!
もやーんとしていたわたしは、気分を切り替えてにっこり笑った。
りおちゃんに向かってヒラヒラと手を振っておく。
「何でもないよ!」
友達は心配させちゃダメですよ!
前世では友達の少なかったわたし。
……まあ、逆ハー状態の女と仲良くなりたいと思う人間が、そう何人もいるわけがないのだが、今世では友人を大事にすると決めたのです。
りおちゃんはきょとんとしている。
日本人としては淡い、チャコールグレーの瞳がぱちくりと瞬く。
くそぅ、可愛いなあ。
可愛さは正義だよね!
りおちゃんに手を引かれて招かれたのは、子供部屋だ。
一人っ子の彼女のために整えられた部屋は、意外にも青色系統でまとめられてクールな印象だった。
可愛らしい内装を期待していたわたしとしては、拍子抜けした気分だ。
更に意外なことに、りおちゃんの部屋にはサッカーボールや電車の模型なんかが並んでいる。
思ったよりもアクティブな趣味なんですね。
「ミアちゃん、ゲームしよ」
差し出されたものを見て、わたしは息を呑んだ。
そ、それは……!
老若男女問わずに人気の育成ゲームだ。
ずっとやってみたかったのは内緒だ。
だってゲームの筐体を持っていないし、ソフト代だって馬鹿にならないし。
私たちの生活のために、キリキリ働いている母を見ると、欲しいとはとても言えなかった。
い、いいのかな。
触っちゃってもよいの? だってこれウン万円もするんだよ?
私がそわそわしていると、りおちゃんがゲームの画面を開いた。
ぽん、という軽い音がして、ヤギのキャラクターが現れる。
わーっ、わー!
渡されるままに筐体を手にし、あれこれ操作する。
「ねぇりおちゃん、これってどうすればよいのかな」
「これはねえ」
気がつけば、心行くまでゲームを堪能して帰路についていた。
うーん……まぁいっか。
あんまり考えても仕方ないと思うんだ。
わたしにできるのは、今世を楽しく生きていくことだよね。
夕焼けの道をてくてく歩きながら考える。
見上げた空の鮮やかさが、今日はなんだか目に沁みた。