10・明日も雨が降るでしょう
雨の季節です。
秋雨前線が本土を襲撃してから、毎日雨なのです。
よって今日も園内で遊ぶ。
ただ、今日がいつもと違うのは、近隣の大学からお姉さま方が遊びに来ているところだ。
サークル活動の一環だそうです。
沢山のお姉さまに、園児たちの期待も高まる。
そう、いつもは先生の取り合いっこだけど、今日はたくさん遊んでもらえる!
さくら組には3人のお姉さまがやって来た。
皆可愛い女性だ。
こんなところにやって来るということは、子供スキーなのでしょう。
せっかくなので、広い場所で遊びましょうということで、お遊戯室にやって来た。
同じことを考えたらしい他の組も、ちらほらやって来ている。
先生も勿論大好きだけど、お姉さんも大好きだよ!
あっという間にお姉さんたちは園児に取り囲まれた。
わたしもお姉さんと遊ぶべく、その輪に加わった。
お姉さんは愛奈さんというらしい。
「ねー、だっこ」
「ズルい! わたしも~」
1人がだっこをねだりだすと、周りにいた子たちが我も我もと手を伸ばす。
少し屈んだお姉さんの両腕に、女の子が二人プラーンとぶら下がった。
あらら。
あれは確か隣のひまわり組の、さらちゃんとありあちゃんだ。
ひまわり組を牛耳っている二人組である。
順番こ、はできないだろう。
困り顔のお姉さんに、わたしは心の中で合掌する。
頑張れ!
お姉さんが可哀想だし、別の輪に行こうかなと思っていると、後ろから男の子が顔を出した。
知らない顔だ。
たぶん年上かなあ?
体が大きいから年長さんかもね。
「アリア」
その声に、よじよじ登ってお姉さんの首に抱きついていたありあちゃんが顔をあげた。
「アルにぃ!」
なんと、お兄ちゃんでしたか。
なるほど、よく見れば目の辺りが似ているかもしれない。
お兄ちゃんは冷静に妹を一瞥した。
「マナこまってるだろ。おりなよ」
「えー……」
「さらも」
不満顔のありあちゃんは、背中におぶさっていたさらちゃんと渋々お姉さんを下りる。
すごい!
さすがはお兄ちゃんですね。
その配慮を、妹にも分けてあげるとよいと思うよ!
この年にして、性格イケメンの片鱗を漂わせている少年に感心していると、彼がこちらを振り向いた。
逃げる間もなく、バッチリと目が合う。
特にどんな感情の色も浮かんでいない瞳なのに、背筋がぞくりとした。
速やかに視線を逸らす。
おかしいなぁ?
何だか既視感を覚えたけれど、きっと気のせいだ。
だって、わたしはまだ幼稚園児だからね!
フラグ?
何それ美味しいの?