第7話:敬 2
・・チャララン♪
携帯が鳴った。
『はい』
『梓?』
ミホだ
『昨日どうだったの?夜うちに泊まりにくるのかと思ってたのに、連絡ないから心配したんだよ!もしかして・・・彼の家にお泊まり?』
ミホは無邪気に言った。
『違うよ!朝までぶらぶらしてただけ!朝帰ってきたの。ミホに連絡しなきゃって思ってたけど、携帯充電切れてて…ごめんね。』
『そうなんだぁ。…で、彼とはどうだったの?』
『ん〜。なんか思ってた感じの人と違ったって感じかな!』
敬と先がないことを確信していた私は強がり、嘘を言った。
好きな人に自分の気持ちも言えず…それどころか、素っ気ない態度を取ってしまった…なんて…
まるで、小学校の男の子が自分の気持ちを隠すのに、好きな子に意地悪をしてしまう・・・そんな昨日の自分。
そんな幼稚な自分。ミホに言えない。ミホに見栄を張るため嘘をついた。
『そうなんだぁ。残念だったね。でも、また次いい人見つけたらいいじゃん♪梓可愛いから男なんてすぐ見つかるよ』
『そうかなぁ…』
『そうだよ!』
しばらくミホと話し電話を切った。
私はぼんやり昨日のことを思い返していた。しかし、寝ていないため睡魔が襲ってきた。
でもここで寝てはいけない。
ここで寝たら母に昨日寝ていないのがバレてしまう。
そうなったらミホの家に泊まりに行くことすら許しが出なくなる。
その日は頑張って睡魔を追い払い、夕食を終えたすぐ、倒れ込むように眠りに落ちていった。
目が覚めたのは、次の日の昼だった。
携帯を見る。
敬からメールが来ているかもしれないという期待をした。
着信1件
メール1件
敬かも!
…着信は咲美だった。
…メールも
咲美に電話した。
『もしもし咲美?ごめん寝てた』
『もうお昼だよ!いつまで寝てんの!まぁいいや!今から会わない?』
『いいけど、今起きたばっかだからもう少し後でね』
『了解★じゃあ用意できたらメールちょうだい』
咲美救われた。
私はこのまま家にいたら、敬とのことを思い返すことばかりしていたはず。
すぐに用意を済ませ咲美にメール
〈用意OK〉
いつもの〇ック集合だ。
『梓、昨日はどうだったの?』
やはりきた!その話し
咲美にはありのまま話した。
敬の優しい言葉に恥ずかしいあまり素っ気なく答えてしまった事。
恥ずかしくて、自分の気持ちを素直に言えず、敬と気まずい雰囲気のまま別れた事。
あのとき素直に言えていたら…と思う後悔。
全て話した。
咲美は私の気持ちを分かってくれた。
分かってくれるだろう思ったから話した。
私達は似た者同士。
男と付き合ったことがなければ、男に優しい言葉をかけられた事もない。
咲美は私のその時素直になれなかった気持ちを分かってくれた。それでも本当は敬の事を好きなんだということも分かってくれた。
『梓が敬君のこと好きで後悔してるならもう1回試してみたら?今度は頑張って自分の気持ち伝えるの!』
その言葉に私の気持ちは高ぶった。
『そうだよね!』
『今から敬君にメールしなよ』
『………』
『敬君を誘うの!会おうって!それが夜なら、今度はうちに泊まるっておばさんにいいなっ』
咲美とは小.中学一緒なので母親ももちろん咲美のことは知っている。
『うん!』
〈敬君この前はなんかごめんね。また会える?〉
数分後
〈いいよ〉
短いメールが返ってきた。
そのメールが今までとは違う感じがしてショックだったが、
咲美に、
「忙しくてゆっくりメールしてられないんじゃない?OKのメールだったんだから良しとしようよ」
って言われ、私もそう思い込むようにした。
『いつ会えるかきくの!』
咲美に押され
〈いつ会える?〉
〈来週の月曜なら大丈夫〉
今日からちょうど一週間後だ
『良かったじゃん!梓、今度は頑張るんだよ!』
私は何か不安を感じながらも、咲美と一緒に喜んだ。
『これからは、控えめじゃ駄目!梓最近可愛くなってるんだから、自信もたなきゃ!』
『ありがとう咲美』
今日の咲美は熱い奴になっていた。
私もそれにつられ熱くなった。
敬との約束の月曜まで敬からの連絡はなかった。
私は咲美の言葉を思い出し、敬から連絡はなくても、メールを入れ続けた。
敬との約束の前日・・・
敬にメールを入れた。
〈明日本当に会ってくれるの?〉
これで返事がなかったら、敬のこと諦めようと思った。
勇気を振り絞ってメールした日から今日まで、私は敬にメールを入れ続けた。一度も返事は返ってこなかった。このメールの返事もなかったら明日会うこともなくなる。
私はこの一週間頑張った。
今までになく頑張った。
敬からの返事がなくても…。朝は〈おはよう〉夜は〈おやすみ〉など…内容は対したことはないが、一方的に送り続けた。私の誠意のつもりだった。
でもこのメールの返事がなかったら諦める。
〈明日いいよ。前と一緒の時間にあの駅で〉
返事が来た!
メールは素っ気ないものの…明日会えるという喜びでいっぱいになった。
この前のような失敗はしない。そう自分に誓った。