第6話:敬
恋愛物ぽくなりました。
今日は敬と会う日,初めて夜外出する日・・・
敬のバイトが終わるのが18時。親に夜出歩くの禁じられている私はお昼過ぎにミホの家に泊まりに行く振りをして家を出た。まさか私が嘘をついて男と会うことなど知らない母。。。
敬と会うまでには時間がかなりある。家を早く出なくてはならないと分かっていた私は地元の友達と会う約束をしていた。咲美だ。咲美とは、小学校,中学校一緒で、唯一私が親友と呼べる子だ。咲美にはなんでも話せる。私の汚い部分も…。
『梓〜』咲美がきた。私達はいつも地元のマク〇〇ルド集合で何時間も話して時間を潰す。
『梓久しぶり♪』
『久しぶりッ♪』
『ちょっと!昨日電話で言ってたけど、今日夜男と会うの?』
『うん!そうなんだ!』
咲美には昨日大体敬のことを話した。
『いいなぁ。高校生活楽しんでる感じじゃん』
『まぁねぇ』私は茶化して見せた。
『でもさぁ。おばさんに何て言ったの?うちの親は絶対許してくれないよぉ↓』
咲美の親もうちと張るぐらい厳しい。
『そんなの正直に言えないよ!高校の友達の家に泊まるって言った。友達にも了解済み。』
『え〜 いいな!いいなぁ!』
と、私の高校生活の経緯など、咲美の高校生活の話しなどしているうちに私のメールがなった。
敬だ!
〈今バイト終わった。梓ちゃんもう家出れる?〉
敬は、私の親が厳しくて親に嘘をついて敬と会う事など知らない。そんなこと言いたくなかった。
〈出れるよぉ。今から向かうね!〉
私がメールの返事をしていると、
『そろそろ行きますか?』
咲美はイタズラっぽく笑い言った。
『うん。付き合わせてごめんね』
『いいの。いいの。こんなこと、これから私も梓に頼むかもしれないじゃん!』咲美はいい奴だ。
『そのときは、喜んで!』
咲美と別れ敬との待ち合わせ場所に向かった。電車に乗り敬に言われた駅に向かう。私が乗った地元の駅から30分ぐらい走った駅だった。
―待ち合わせ場所に到着。敬の姿はない。
と、そのとき,一台のバイクが私の前に停まった。敬だった。
『乗って』
『…えっ…』
『いいから、後乗って』
『…うん…』
私は分けも分からないまま敬のバイクにまたがった。
『ちゃんと俺に捕まってて』
と言ってすごいスピードで走り出した。初めて乗ったバイク・・・気持ちいい・・・だたそう思った。
10分ほど走ったとこでバイクは一軒の家の前で停まった。『降りて』
バイクを降りその場に突っ立っていた。
『来て』
私は敬に言われるがまま、敬の後を歩いた。
『ここ.俺んち。入って。』
『お邪魔します』
私は聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で言った。
敬は聞こえたのか『親いないから』
敬の家は父親はいない。敬が小さいときに離婚して、それからは会っていないそうだ。母親はスナックを経営しており夜はいない。いつも朝まで帰ってこないようだ。
これは、前に電話で話したときに聞いていた。敬の部屋に案内され
『散らかってるけどその辺に座ってて、俺風呂入ってくるから』
私は入り口の入ってすぐ横の所に座った。…初めての男の部屋…
敬は散らかってると言ったが、そうでもなかった。
12畳ぐらいの広さの部屋、ドアはちょうど部屋の角にあり、入って右奥にベッド、その向かいにテレビ、その横に小さな冷蔵庫、壁には友達との写真がたくさん張ってある。何人かが楽しそうに笑っている写真。学校の友達の写真はなかった。その写真すべてが夜撮った写真だった。部屋の中央にはテーブル、テーブルの上にはタバコの吸い殻が山積みの灰皿。敬タバコ吸うんだ…敬をすごく大人に感じた。
バイトをしている敬。
バイクに乗る敬。
タバコを吸う敬。
親に気を使うことなく夜出歩く敬。
私とは住む世界が違うんだ。でも、そんな敬が選んだ私。
私も敬がいる世界に行くことできるよね?私は今いる世界から出たい!
敬がいる世界に行きたい!
『あ〜。さっぱりしたぁ。』
敬が戻ってきた。髪が濡れている。
敬の顔を初めてじっと見た。
やっぱりカッコイイ。
『梓ちゃんなんか飲む?』
『いい。』
私は緊張のあまりそっけなく答えてしまった。でも敬はそんなこと気にしないように
『すぐ用意するからどこか出かけようか?行きたいとこある?』
『特にないから敬君にまかせる』
『分かった。ほんとどこでもいいの?』
『うん。ほんとどこでもいい』
ほんとにどこでも良かった。だって、夜どこに行ったらいいのか分からないから。今の私は敬といれるだけで幸せだった。
敬の用意はすぐ終わった。
『じゃ、行こうか。』
またバイクにまたがり、向かった先はファミレス・・・
『お腹空いたし、まず食べよ!』
ご飯も早々にすませ、またバイクで走りだした。
今度は結構長い間走った。私はその場所がどこかも分からず、ただバイクに酔いしれていた。・・バイクって気持ちいい!何もかも吹っ飛ぶ感じがした。
次にバイクが停まったのは、海だった。夏の夜の海。。。
最高な気分だ。。。
2人並んで海岸に座りしばらく黙って海を眺めた。
今までお喋りだった敬が急に黙り込んだ。私はなんだか妙な空気を感じて耐えられなくなり、今まで黙っていた私が話し出した。
『敬君バイクの免許持ってたんだね。凄いねぇ。』
私は何を話していいのか分からず、無難に話したつもりだった。
『これ俺のバイクじゃないんだ。先輩のバイク借りたんだ。免許も持ってない。無免許で運転してる』
敬の言葉に返す言葉が見当たらず
『そうなんだ』
としか返せなかった。また2人は黙った。私は返した言葉に後悔した。
(そうだよね。不良は免許なしでバイクにも乗るんだよ)
私の真面目さ,凡人さがバレてしまった気がして、恥ずかしくなった。
私はもっと敬と話したかったけど、言葉が見つからず、海を見るしかなかった。 敬は何を考えているのか、敬も黙って海を見ていた。
どれくらい時間が経ったか分からないが、敬が口を開いた
『そろそろ行こうか』
私はショックだった。敬とろくに会話もしていないのに、もうサヨナラなんて…
私は親には泊まると言って出てきたので、家に帰ることは出来ない。夜はミホの家に泊まらせてもらうことになっていた。
『うん』
またバイクにまたがった。
―待ち合わせをした駅に着いた。私は帰りたくなかった。でも、『帰りたくない』と言えない。言ったときの敬の反応が怖かったから。私はバイクを降り
『今日はありがとう。じゃあね。』
敬に言い駅の改札に向かった。なんだか最後気まずい雰囲気だった。私は後悔した。
今日敬と会うべきじゃなかったのか…
私はつまらない女と思われた…
もう敬に嫌われた…
何故もっと素直に今日会えた嬉しさを出せなかったのか…
改札に向かいながら思った。涙が出そうだった。
『梓ちゃ〜ん』
後を振り返ると敬が走って来た。びっくりした。
『どうしたの?』
『梓ちゃんまだ時間ある?』
『あるよ』
『梓ちゃんともっといたい』
涙で前が見えなくなった。でも、意地で流すことを耐えた。
―またバイクにまたがり、敬の腰に手を回した。私敬のこと好き。そう思いながら…バイクは敬の家に着いた。
敬の家、誰もいない家、数時間前にも来ているせいか、今度は躊躇せず敬に続き家に入った。
敬の部屋。また私は入り口のすぐ横に座った。敬はベッドに座りテレビを付けた。
『そこにいるとテレビ見れないよ。こっち座りな』
敬は自分の隣をとんとんと叩いて言った。
『うん』
敬の隣に座った。テレビどころではなかった。
『さっきはごめん。ひきとめて。なんか俺緊張しててうまく喋れなくて…でもまだ梓ちゃんと一緒にいたい思って。迷惑だった?』
―私も一緒にいたい。そう心の中で思った。
『…大丈夫』
私の口から出た言葉はこの一言。心の中の思いを口に出すのが恥ずかしかった。
私は馬鹿だ。
『…ごめん。』
敬は自分が無理やり連れ戻してしまったように思ったのだろう。私に誤った。
―私も一緒にいたかったから― ここまできても.恥ずかしさを越えることはできず、言えなかった。
私はこの雰囲気を変えたくて違う話しに切り替えた。
『敬君,学校楽しい?』
また私は訳分からない話しをしている。
そんな他愛のない話に敬は付き合ってくれた。そんな話しの中で敬は話しを戻そうとしたときもあった。
でも私は話しを敬に渡さなかった。敬の話しに素直に答えられないから。自分の気持ちを恥ずかしくて言えないから。
私は逃げた。
敬は諦め私の他愛もない話しに朝まで付きあってくれた。
陽が明るくなり、私達は話すこともなくなってきていた。
でもそのときには、敬は自分が話そうとしていた事を話すことを諦めていた。
私達は楽しかったというより、お互い…違う。敬は疲れた空気を流していた。
敬とは終わった。私の直感だ。
私は虚しかった。自分のせいなのに。
その場にいる意味を持たなくなったような私は、いたたまれなくなり
『そろそろ帰るね』
『うん。送るよ』
敬と待ち合わせをした駅。
敬に引き止められた駅。
敬を好きだと思った駅。
またその駅にきた。
今度は引き止めてはくれない。絶対に。
『じゃあね。ありがとう』
前と一緒のセリフ
『ありがとう』
敬からの一言。
私は改札に向かった。
数時間前この辺りで敬の声がした。でも、今度聞こえたのはバイクが走り去る音・・・
虚しさだけが残った。
私は帰りの電車に乗った。
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