第5話:初めて
―明日から夏休みという日、敬からいつもと違うメールがきた。
〈明日から夏休みやなぁ。明日、梓ちゃん予定ある?なかったら、遊ぼうよ!〉私はキタッとばかりに嬉しかった。すぐに〈いいよ〉って打ち返した。すぐにメールは返ってきた。〈明日俺バイトだから、終わってからでもいい?18時に終わるから、それからでいい?〉私は焦った。今まで私は夜外出をしたことがない。ミホと遊ぶときも学校が休みの日に昼間遊んで18時には家に帰っている。私の両親…母はとても厳しく夜外出することを絶対に許さない。ミホの家に初めて泊まりに行くときも.許してもらえなかった。お母さんの知らない子の家に泊まりに行くなんて絶対駄目!って感じで、予定変更でミホに私の家に泊まりに来てもらったくらいだ。それから、ミホの家には泊まりに行けるようになった。でも帰りは絶対陽が明るいうちにだ…。私はそんなことに文句も言わず今までそうしてきた。夜出歩くような友達もいなかったし。
そんな母が夜の外出を許すはずがない。
でも、敬の誘いを断りたくなかった。
―私はミホに電話した『ミホ。お願いがあるんだけど…』『どうしたの?』『私、最近気になる人が出来たんだけど…』『えっ!?ほんと?早く言ってよぉ!で、どんな感じ?』『その人に明日の夜バイト終わってから遊ぼって言われて行きたいんだけど…』と、まで言ったとこでミホは私の気持ちを察したように『そんなの、梓のお母さんが許さないよねぇ。おばさんに、うちに泊まるって言ったら? 私明日家いるし、おばさんから電話あっても大丈夫だし!』ほんとミホはいい奴だ(涙)『ミホほんといいの?』『いいよ.いいよ!私も梓に負けてらんないな♪いい男見つけなきゃ♪梓頑張ってね!でもこれからはちゃんと報告してよ!?私達友達なんだから』 『うん。ありがと。絶対報告するから』 と、電話を切った。 ミホに後ろめたさを感じた。最近の私は、気持ち的にミホより由希ちゃんを優先していた。地味なミホといるのを恥ずかしいと思うときもあった。なのに、こんな時はミホを頼った自分…ミホを利用した自分…そんな私を友達と言ってくれたミホに…
ミホも敬の事は知ってると思う。なのに相手が敬ということをミホに言わなかった。絶対報告するといったのに…
そう思いながらも明日敬と学校以外で初めて会うことに浮かれていた。
母もミホの家に泊まりに行くこと(嘘)を許してくれた。
敬にも〈バイト終わってからでいいよ〉と返事をした。待ち合わせの時間も場所も決めた。私は浮かれていた。
…初めての夜の外出
…初めて男の子とデートに・・・
友達を利用したこと
初めて親に嘘をついたことを忘れるくらいに