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第45話: 下らないプライド


 胸の中の奥の奥に仕舞っておいた慎悟を出してきてきしまい、慎悟の事ばかりを考える様になった。



 いつも私を守ってくれた慎悟。

 慎悟の大きな暖かい手。

 無邪気な笑顔。


 思い出すのは楽しかっ日々ばかり。


 私の中で慎悟は膨らみ、私はあの頃に完全に戻っていた。

 あの頃と同じ位に今も慎悟を愛してる。

 あの頃の様に毎日慎悟の事を考えている。


 ただあの頃と違うのは、慎悟がいない事。


 私は止まらない気持ちを電話で恵里に伝えた。


『梓何してんの!?』


私の気持ちを知るなり恵里は強く答えた。


『何って…』


『好きなら迷ってないでいかなきゃ!』


私は初めからこう言って欲しくて恵里に電話したのだと気付いた。


誰かに背中を押して欲しくて…。

 恵里の後押しで私はいける。

慎悟に向かう気持ちの覚悟はできた。


 そして次の段階へ進もうとした時気付いた。


『私…慎悟の連絡先知らない…』




 あの頃からだった。

私が気持ちの整理を付ける時、まず初めに必ず相手の連絡先を消去する癖は。


『それなら私が調べてあげる!元彼なら慎悟さんの連絡先知ってるかも』


 そうだ。恵里の元彼は慎悟と同じ高校で知り合いだったんだ。


 恵里にお願いし、私は恵里からの連絡を待った。


 恵里は仕事が早い。

30分と経たない間に慎悟の電話番号は私の元へきた。


『頑張ってね梓。また報告してよね』


恵里はそう言うと早々に電話を切った。


 恵里と電話を切り、携帯を持ったまま色々考えた。


 何から話そうか。

 慎悟の対応はどんな感じか。


 色々考えたが、私の中で慎悟が私を拒むことはないと思っている。


 恵里には自信なさげに言ったが、本当の処慎悟を振り向かせる自信があった。



 確実にあの頃よりも可愛くなってるだろうし、あの頃よりは大人になってる。


 あの頃より男を知ったし、どうすれば自分を可愛く魅せれるのかも、それなりに分かってるつもり。


 決心し通話ボタンを押した。


プルルル…プルルル…


呼び出し音が鳴った途端、あれ程考えた頭の中は真っ白になった。


プルルル…プルルル…


 あれ?


 長く続いた呼び出し音は留守番サービスに変わった。


 慎悟は電話に出なかった。


 電話を切り、携帯を置いた瞬間。夢から現実に覚めた感覚だった。


 慎悟と会える。

 あの頃の様に慎悟と一緒にいたい。

など、勝手に想像を膨らませ一人舞い上がっていただけだった。


実際には、今慎悟がどういう生活をしているのか、彼女はいるのか、何も知らない。


 そう冷めながらも、私はショックなど感じていない。


今は電話に出れなかったんだ。後でかけ直してくれる筈。など、自分の都合の言いように解釈している。


 私が慎悟を思い出す様に慎悟も私を思ってくれているに違いない。


慎悟なら私の番号だって覚えてる筈。


きっと慎悟からの連絡はある。


 自分でも嫌になる位プラス思考だ。


しかし私には自信があった。


それは何故かというと、今まで私の誘いを断る男がいなかったから。


狙った獲物は必ず堕ちる。


それが私をここまで自信過剰にしたのだ。


 しかし、慎悟から連絡が来る事はなかった。


そして私は二度と連絡しなかった。



恵里は、『連絡しなよ』って言うけど、自分が傷付くのが怖く連絡出来なかった。


かけ直して来ないと言う事は、私を拒んだから…。

私はそう解釈した。

 そして理由はもう一つ。

 しつこい女だと慎悟に嫌われたくない。

 追いかける女より追われる女がいい。


 又しても私の下らないプライドが顔を出し、下らないプライドを捨てる事が出来なかった。


そしてまた、意地やプライドで慎悟を胸の奥へ仕舞い込んだ。




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