第31話: 親友
今日の夜の集会で、紗童のメンバーと顔合わせする。
私が正式に紗童のメンバーと認められる日だ。
昨日の夜から緊張して良く寝れなくて、今日も朝早く目が覚めてしまった。
こんなことも珍しいので、今日は朝から学校へ行こう。
久しぶり朝の通勤、通学ラッシュに揉まれた。
嫌で嫌で省がなかった朝のラッシュも偶にだと新鮮に感じる。
教室の扉を開けると、既に真弓は来ていた。
一人退屈そうに座っている真弓の背中を叩いた。
『おはよ!』
『…おっ……』
不意打ちだったことに、真弓はひどく驚いた様子だ。
しかもそれが私だったから、一瞬言葉を失った。
その真弓のポカーンとした姿が可笑しくって思わず笑ってしまった。
『もう!ビックリするじゃん!』
声は怒っているものの、顔は笑顔だ。
『ごめんごめん。…恵里は?』
真弓に軽く謝り、教室を見渡した。
『恵里休みだよ。学校サボって彼氏とデートだって!』
まぁ、いつもの事だ。
恵里は彼氏以外何も見えなくなる様なタイプ。
彼氏となると、学校なんて二の次。
恵里の彼氏も学生だが、二人して良くサボって遊びに行っている。
私は彼氏がどうというより、学校へ行く事自体がかったるい。
朝から一日中学校に閉じ込められる事も苦痛だ。
だから、たまにしか学校へ来ない。
来ても昼からとか…
朝から来た日は昼で帰ったり…
それに比べ真弓は毎日ちゃんと学校へ通っている。
当たり前の事なんだろうが、そんな真弓を偉いと思う。
一時間目〜六時間目までちゃんと居た事は久しぶりだった。
早々に帰る支度をし、教室を出ようとした時、真弓に声をかけられた。
『今日は遊びに行けないの?』
前までは、当たり前の様に、毎日学校帰り真弓と恵里と遊びに行っていた。
しかし、私は学校に来なくなり、恵里も毎日来る訳ではない。
今日みたいな日ぐらい真弓と遊びたいが、今日は初の集会だから…。
『ごめぇ〜ん』
顔の前で手を合わせ謝った。
『そっかぁ。何か用事?』
そう言えば、真弓に紗童に入った事を言っていなかた。
別に隠している訳でもないし、隠すつもりもないから、真弓に伝えた。
紗童に入ったこと。
今日は集会があることを。
『…そうなんだ』
真弓は特に驚いた様子もなく、冷静に聞き入れてくれた。
いや、決して、冷静ではなかったのかもしれない。
真弓からは寂しさを感じた。
真弓が感じている寂しさを痛い程分かる。
私と真弓の立場が逆だったなら、私は寂しいから…。
親友の事は誰よりも分かっていたい。
親友が悩んでいるとき、進むべき道を決断するときは、相談してほしい。
親友とは、同じ時、同じ場所を感じていたい。
……そう思うから。
私は真弓に何の相談もする事無く、紗童入りを決めてしまった。
真弓に相談する合間もなく、事が運んでしまったから仕方がないが、直ぐに報告することなく、今に至ってしまったから。
真弓は私との距離を感じてしまったんじゃないか…。
私が新しい世界、真弓と違う世界に行ってしまう様に感じているんじゃないか…。
私が真弓なら、そう思うから…。
ごめんね。
でも、私は変わらないよ。
レディースに入ったって、新しい世界を見つけても、真弓との関係は変わらない。
真弓の知る私で居続けるから。
真弓は私の大切な親友だよ。
口に出し言うのは照れる。
けど、この思いを精一杯真弓に伝えたい。
そう思い、帰り道真弓と別れるまで、話し続けた。
くだらない話しを耐えることなく、話し続けた。
真弓の寂しさを取り払ってあげたくて…。
きっと私の気持ちは真弓に届いたはず…。
届いたよね…。
届いていてほしい…。