第24話: 誓い
―高校二度目の夏休みも半分を過ぎた。
この夏休み私は一生忘れる事のない思いをした。―中絶―
その事で分かった男の本音
家で無くなった居場所
一人になると思いだす。
中絶するときの麻酔の感じや、あれほど私を
「好き」
だと言ってた亮の軽はずみな言葉。
だから一人でいたくない。辛くなるから・・・
今日も高哉の家に向かった。
寂しさを分かち会う事で居場所を感じるから…
・・ガラガラ・・
いつも通り窓から部屋に入った。
一瞬でいつもと違う事を察した。
― 臭っ
この鼻を突く臭い何?
でもどこかで掻いた臭い・・・ ?
!油性マジックの臭いだ!
高哉はベッドに座り、ビニール袋を口にあてている…
―?―
『高哉?何してんの?』
私の問いに答えない。
私は高哉のそばに寄り顔を覗き込んだ。
『高哉?』
高哉は私の顔をジッと見つめた。
・・いつもの高哉と違う・・
私は分かった。今高哉が何をしているのか…
高哉はシンナーを吸ってる・・・
『あるさかっ…』
舌が回っていない。
…私どうしたらいいの?
いつもと違う高哉。
高哉を初めて怖いと思った。
『あるさも吸う・・?』
ビニール袋を私に差し出した…
『・・・うん』
断ったら高哉を裏切る事になると思った。
高哉は私の寂しさを分かってくれた。今高哉がこうしてるのも何か訳があるはず…
高哉は私を居場所だと言ってくれた。
断れば高哉を一人にさせちゃう。
私は高哉が差し出したビニール袋を受け取った。
高哉は笑った。
とても嬉しそうに…
とても無邪気な笑顔で…
高哉はまた違うビニール袋に透明の液体を入れ、口に当てた。
私は見よう見まねで、高哉から受け取ったビニール袋を口に当てた。
・・なんだろうこの感じ・・
気持ちいい・・
今まで考えていた事が分からなくなる・・
目の前に見える物がどうでもよくなる・・
今自分がしている事がどういう事なのか考えられない・・
私の頭は止まった。
きっと考える事を止めてしまったんだ。
なんて楽なんだろう。
時が止まったように私達は吸い続けた。
私は知らない間に寝ていた。
横を見ると高哉も寝てる。
時間はAM1:00
こんな時間か…
起こすのは止めよう。
私は暗がりの中、テレビを付けた。
高哉を起こさないよう…小さな音で。
・・・とうとう私やっちゃったなぁ…
煙草だって吸うし、お酒だって飲んでる。
でも、私はまだ16歳。煙草もお酒も本当は駄目。20歳になってからって分かってる。
でも世間ではそれを許されてる部分もあるんだよね....
明らかに未成年なのに、外で煙草を吸ってても大人達は何も言わない。
夜コンビニでお酒を買うことも出来る。未成年は駄目って張り紙してあるけど、実際ちゃんと売ってくれてるし…
警察を呼んだりもしない。
そんな私達を大人は見て見ぬ振りなんだよね。
でも、今さっきした事は違う。
外でしてたら、きっと見て見ぬ振りはしないだろう。
警察のお世話になるんだ・・・
テレビは付けたけど見てなかった。今自分がした事を考えていた。駄目な事をしたのは分かってる。
でも、罪悪感はない。
そんな事より、高哉を一人にさせなかった事や、あの一時嫌な事を忘れられた事の感覚の方が強かった。
そんな事を考えていたら高哉が起きた
『梓…』
『起きたの?』
『うん。…ごめんな』
『何が?』
高哉の
「ごめんな」
の意味は分かった。
私を巻き込んだことへの謝罪だって…
でも、私は知らない振りをした。
それが高哉への優しさだと思ったから・・・
『今日…お袋が来たんだ…』
『高哉が小さい時に家出た?』
『…そう。俺一瞬誰だかわかんなくてさぁ。大分老けてたけど写真で見たお袋だって分かった… 』
『何しにきたの?』
『入るなり家ん中あさりだしてさっ…ありえねぇよなっ!16年振りに息子に会ったつうのに挨拶もなしでさ』
高哉は私の問いに答えることなく話出した。
私は高哉のいるベッドを背もたれにし、テレビの方を向いたまま聞いた。
『お母さん…何しにきたの?』
『金だよ…。さすがに引くわぁ。初めて見たお袋が、金金言って走り回ってる姿は…』
開き直ったように明るく言ってるけど、悲しさを隠しきれていない。
『…うん』
後向けない…
高哉の顔見れない…
きっと今、高哉の顔は言葉ほど明るくないから…
そんな顔、私に見られたくないだろうから…
心は泣いてる…
だから今日こんなことしてたんだ。
私は今日高哉が悲しい時に…
高哉と共にシンナーに手を出した事に…
高哉の寂しさを分かってあげられた気がして満足だった。後悔はない。
『俺らを捨てたお袋なのに…俺ん中で母親はこうっていうイメージがあったのかなぁ… そんなお袋見たくなくて、バイトして貯めてた金渡したんだ。そしたら素直に帰って行くんだよ!薄情だよな…』
『…うん』
『家出てくとき言ったんだ…俺に背むけてさ!
「ごめんね高哉」
って…。お袋に掛けてもらった最初で最後の言葉…』
高哉が泣いてるのが分かった。
私は高哉の方を振り返り、そっと高哉を抱き締めた。高哉の寂しさを少しでも吸い取ってあげるように…
そっと抱き締めた
―悲しかったね
―寂しかったね
―辛かったね
そんな言葉は言わない。
言葉にしちゃうとその気持ちが倍増するから・・・
『ごめんなぁ。梓…』
私の胸に顔を埋め、高哉はまた謝った…。
『うん。気にしないで…』
『もう、こんな事しないから…』
『うん』
そうだよ。一度の過ちなら誰でもある。
二度としなきゃいいんだから・・・
高哉は寂しさを一人で抱えきれず、薬物に手を出した。
私は高哉の寂しさを少しでも分かってあげたくて、薬物に手を出した。
私達は他に手段を知らなかった。
私達はいけない事をした… と分かってる。
だから、同じ事を繰り返さなければいいんだ。 …と思い。二度としない事を違った。