第23話: 同士
『最近、典美こないねぇ』
『そういやそうだなぁ…』
あれほど毎日高哉の家にいたのに、最近.典美の姿がない。
『ちょっと電話してみるわ』
『おぅ』
高哉は寝転がって漫画を読みながら返事をした。
・・・・・・
『は〜い』
『典美?最近何してるの?』
『実は…彼氏できたの!』
そういうことか…
理由が分かった私は、さっさと電話を切った。
『典美何て?』
『彼氏出来たんだって』
『…そっか。良かったじゃん』
高哉は漫画から目を反らすことなく答えた。
…私は寂しい。
彼氏が出来た事は良かったと思う。
でも、寂しいよ。
私..また取り残されてる…
『…梓ちゃんも早く彼氏見つけてさ。いつまでもこんなとこに居ないで。』
…高哉も私が邪魔になったの…?
『私..こない方がいいの?』
『そういう意味じゃなくて!…ただ単に梓ちゃんにも彼氏できたらなぁ…って… ごめん…』
思わぬ返答に高哉は汗って言い訳した。
高哉の慰めも耳に入らない・・・
…私、寂しいよ…
いつも、典美と高哉と三人でいた。
私は孤独だった。
典美も高哉も私と同じ気持ちなんだと思ってた。そこに私は居場所を見つけたと思っていた。
でも本当は違ったの?
…私は、誰かに必要とされたい
そう思っていたのは私だけ・・?
典美は彼氏が出来て新しい居場所を見つけた。
高哉も、彼女が出来たら、違う居場所を見つけ、私はここには居れない…
そう思った私は平常心を失いかけていた。
『…私…どこにいけばいいの? ほかに行くとこなんてないよ!』
『急にどうした?』
高哉は訳が分からなといった感じだ。
『私にはここしか居場所がないの…ずっと孤独なんだよ…』
『なんでそんな事言うんだよ!梓ちゃん友達いるじゃん!』
『友達はさぁ。結局最後は男んとこいくの!』
『だったら梓ちゃんも彼氏作ったらいいじゃん!すぐ出来るでしょ!?』
私の気持ちを分かってくれない高哉にムキになった。
高哉は私がムキなる理由が分からないから、高哉の声も荒だっていった。
『男はさぁ!………』
その先を言うのを止めた。
確かに高哉の言う通り、彼氏を作ろうと思えば作れる。
でもね、私を
「好き」
だと言ってくれる男…
体だけでも私を必要としてくれる男…
どんな男と付き合っても…
どんな男と寝ても…
相手を好きじゃないと私の寂しさは埋まらなかった。
私の居場所じゃなかったんだよ・・
現に寂しさを紛らわすのに男に走った私は…
子供を失った。
私の身勝手な行動が生んでしまった命…
私の身勝手で命を失った子…
『男は何だよ!?』
『…男は裏切るんだよ!』
こうとしか言えない。
この言葉を高哉なりに考えたのか、高哉は黙りこんだ
『…ごめん。俺だって孤独だよ…。でも.言葉に出すとさぁ…余計辛いから…強がってんだよ』
落ち着いた声で高哉はいった。
私の頬に涙が伝った。
その涙は寂しいから…辛いから…って出た涙じゃなかった。
高哉も同じなんだっていう安堵感から出た涙だった。
高哉は座っている私に近付き、私を抱き締めた。
私も高哉を抱き締めた。
今まで男と抱き合った感じとは違う。
とても力強く、私を抱こうとする感じではない。
でも、凄く落ち着く感じ。
『梓ちゃんの居場所はここ…』
高哉は小さい声で力強く言った。
『いいの?』
『いいよ!梓が来たい時に来たらいい…梓がいるここが俺の居場所…』
『あっ今、梓って言った』
『…うん。俺の事も高哉って呼んでよ!』
『分かった高哉』
お互い寂しさを分かち会うように抱き合った。
『でも高哉に彼女が出来たら、来れないよね?』
高哉の体を離し、冗談ぽく聞いた。
でも内心は本気の問いだ。
『ん〜。その時はどうするかなぁ。また別の場所に俺と梓の居場所作るか?』
『だね!』
それで私は満足。
高哉とはずっと一緒にいれるんだ。