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第19話: 別れ


慎悟を好きになればなるほど…不安になる。

今日も学校帰り、慎悟とモカに寄り―慎悟の家にいき…いつも通りの1日・・・

…慎悟の携帯が鳴るまでは…


慎悟の携帯が鳴った。慎悟は携帯の画面を見ると、携帯を閉じた。

『…出ないの?』

『梓と一緒にいるのに、電話に出るの時間が勿体無いじゃん!』

慎悟は冗談ぽく言った。

でも私は見逃さなかった。

着信の画面を見た慎悟の切ない表情…

…まだ鳴っている。

…切れた。

…また鳴った。

…慎悟はまた携帯を閉じた。

『出ないの?』

また聞いた。

『いいんだよ!』

少しムキになる慎悟…

そうしているうちも、携帯は鳴ったり止んだりを繰り返している。

『出なよ!』

ムキになってるのは私だ・・・

『…はい』

静かに出た

電話の向こうの相手は女だ。しかも泣いてる…

電話からかすかに漏れる声…

瑠美さんだと直感した。

意外に私は冷静だった。

慎悟が電話に出る前から…私が

「出なよ」

と言った時から…んん。最初に携帯を閉じた時から分かっていた。

…瑠美さんからの電話だって…

分かってた…


慎悟は電話を切ると

『ごめん梓!』

そう言い残し、飛び出して言った。

私の返事を聞く前に…

慎悟が飛び出して行くことも分かっていたような…

私は一人部屋にいる。

不思議と泣くこともなかった。

最後の結末までも分かっていたように落ち着いていた…

私は静かに立ち上がり、慎悟の部屋を後にした。指輪を置いて…

―もう二度来ることのない部屋―

静かな夜の道をゆっくり歩いた。

いつも慎悟と歩いた道を今は一人歩いている

…慎悟と過ごした楽しい時間が蘇ってきた。

今になって涙が出る。

でも私の足は止まることなく歩いてる…前に進んでる…

涙と一緒に慎悟を流してしまおう。

私はゆっくり、ゆっくり歩き泣いた。

慎悟を流すにはまだ涙がたりないよ...

慎悟との事…流すには歩く距離が短いよ…

沢山泣いた。。。

枯れるかと思うほど涙はでた。。。


家の前で涙を拭いた。

この扉を開ければ慎悟とは完全に終わり・・・

勢いよく家に入った。

ベッドに横になり、ボーっとした。

…終わっちゃった…

もう涙は出ない

出さない。

由希ちゃんの言葉を思い出した。

「案外終わりはあっさりなんだよね」

ほんと! 自分がここまであっさりいくとは思ってもみなかった。

もっと泣きじゃくり、もっと気を荒らすと思ってた。


よく別れは突然くると言う。


…でも、私も由希ちゃんも、きっと別れを予感してた。

好きだから…愛してるから…ずっと見てるから…

一つ一つの表情,変化を見逃さない。

そして、別れの予感を感じるんだ。

そして、知らない間に自分の気持ちを整理してる。

私も由希ちゃんもその整理が別れだった。


私は疲れて、とっても疲れて、眠った。

慎悟の事好き過ぎて、だから不安で、私疲れちゃったよ慎悟。


私はぐっすり寝た。起きたのは昼。

携帯のランプが光っている…お知らせだ…

慎悟からの電話

履歴が埋まるほどの着信。

こんなに鳴ってたのに私寝てたんだ。

私は慎悟に電話をしなかった。

私は昨日しっかり自分の気持ちにケリを付けた。

でも、慎悟の声聞いたら気持ちが揺らぎそうだから…

それに、慎悟に別れを告げられるのが怖かった。


今日は久しぶりに咲美に会う。最初慎悟とばかりで咲美と会ってなかったから…

私はもう一度自分に言い聞かすように、慎悟との別れを咲美に伝えた。

私が普通に話している事が不思議だったのか

『梓強くなったね』

『そうかなぁ』

強くなるって決めたから…

『私、もっと落ち込んでると思ってた』

『ん。自分の中でちゃんと整理したから…落ち込んだって、泣いたって、何も変わらない。ならそんなこと止めようって!』

『強いなぁ..梓』



慎悟からの電話はまだ鳴ってる。1日5回ぐらい…私の携帯のメモリから慎悟は消えてる。でもずっと…毎日見てきた番号…覚えてる。

知らない番組からも鳴る。多分雅史君だろう。

私は出なかった。

しばらくすると、二人からの電話は鳴らなくなった。―本当に終わった―


私はいつもの日常に戻った。ただ隣に慎悟がいないだけ…

寂しさを紛らわすように、毎日遊んだ。

恵里や真弓と…毎日.毎日.夜遅くまで…

家には寝に帰るだけ…

学校に行かない日もある。静かに授業を聞いていると、慎悟を思い出し寂しくなるから…


一人で歩いていても、ナンパはされる。

なんの抵抗もなく付いて行ったりした。

好きでもない男と付き合ったり…好きになれるかもしれない…

でも好きになれず、すぐに私が別れを言う。

また違う男…男…男

転々とした。

どれも長くは続かない。1ヶ月…半月と保たない。


一夜限りの男も沢山いた。

どれも駄目。

慎悟と別れて2ヶ月が経つ…

短い間に私は色々な男と関係を持った。家に帰ること、学校に行くことも忘れて…

どれも、私の心を満たしてくれない…

どれだけの男と寝ても…

どれだけの男に

「愛してる」

と言われても…

私の心は満たされなかった。

躰目当ての男は、その場だけ…

会って間もない私の事を

「愛してる」

と言う男…

どれも信じられない。

どれも詰まらない。



―今日は卒業式―

今日は恵里と真弓と遊ぶ事になってるし、卒業式だけだから、午前中で終わるから学校に行った。

一年の私には卒業式なんて関係ない。

ずっと寝てた。寝てる間に終わってた。

私達は早々に学校を後にし、バスに乗り込んだ。

『とりあえずカラオケでも行こうよ』

『行こ行こ』

恵里の提案に私と真弓は乗った。

私達は行きつけの駅の近くにあるカラオケに行くことにした。

バスが駅に近付いて行くと、

今日は卒業式とあって、駅には、花束を持った色々な学校の卒業生らしき人がたむろっていた。

―慎悟も卒業かぁ…

いつも私の隣にいてくれた慎悟…

短い間だったが、私達は愛し合った。

ほんの少し前の事なのに、凄く懐かしく感じた。


駅に沢山いる卒業生の中に慎悟の姿を見つけた。


まだ私は慎悟を目で追っている。

慎悟と毎朝歩いた場所を歩いてても…

慎悟と帰ったこの駅にいても…

慎悟の姿を常に探してた。

…でも、別れてから一度も会うことはなかった。

私は窓際に座り、動くバスの中から慎悟を目で追った。

慎悟達がいる前を通り過ぎバスが止まった。

慎悟は私に気付いていない。

私は見てたよ..慎悟...慎悟の晴れ姿...この目に焼き付けたから...ありがとう慎悟...

私は慎悟にお別れ出来ないままいた。

でも今出来た。


慎悟は私に気付いていない。

それで良かった。

今の私は慎悟と付き合ってた私と違ってしまったから。

汚れてしまったから。

慎悟に合わす顔ないから。


私達はバスを降りた。

カラオケに行くには慎悟達の前を通らないといけない。…どうしよう…

恵里と真弓は慎悟達とは逆の方向に歩きだした。

『カラオケ行かないの?』

私は聞いた。

『カラオケこっちからでも行けるじゃん!』

恵里が言った。

『梓が向こうから行きたいならいいけど?』

真弓が悪戯っぽく言った。

私を思ってくれたんだ。

『…ありがと』

慎悟に気付かれることなく、私達は歩き出した。


『梓ちゃん!』

聞き覚えのある声…

振り返ると雅史君が立っていた。

私は恵里と真弓に先に行ってるよう伝えた。


『梓ちゃん。久しぶり!』

あの頃と同じ笑顔…

『久しぶりだね』

『元気してた?』

『元気してたよ!雅史君卒業だね。おめでとう。』

『ありがとっ!』

『よく私がいるの分かったね?』

『バスの中に梓ちゃんの姿見つけて!梓ちゃんは俺に全然気付いてなかったけど!…慎悟見てたもんね?』

雅史君はするどいなぁ。

『何言ってんのぉ?』

誤魔化すのでいっぱいだ。

『梓ちゃんの元気な顔見れて良かった!心配してたんだ!』

『私は元気だよ!……慎悟は元気?』

『相変わらずだよ!』

『…そっか』

『またどこかで会えるといいなっ』

『そうだね!』

雅史君と別れ際、私は雅史君と目を反らしながら、遠くの慎悟を見た。

一瞬慎悟と目が合った気がした。

…私は慎悟を見つめる事はしなかった。

そのまま後ろを向き歩き出した。

雅史君は私が一瞬慎悟を見た事を見逃さなかった。

『梓ちゃん!』

『何?』

軽く振り返った。

『まだ戻れるんじゃねぇの?』

『どこに?』

雅史君が真剣な顔をして近付いて来た。

『慎悟と…まだやり直せるんじゃねぇの?』

『何言ってんのぉ?』

『今でも慎悟の事好きなんだろ?』

『慎悟の事は良い思い出だよ』

雅史君とは逆に落ち着いた口調で言った。


『なんでだよ。なんでお前らそうなんだよ!』

『私はもう変わっちゃったの...慎悟といた時の私とは違うの』

私は笑顔を作れなくなりそうで、後ろを向きまた歩き出した。

『梓ちゃん、変わったりしてねぇよ!今でも慎悟の事見てるじゃん!…好き合ってるのになんでだよ・・』

私は泣いてた。

後ろから雅史君にバレないように泣いた。

―雅史君、私、本当はまだ今でも慎悟の事好きだよ!思い出になんかなってない。

でもね...どうしても、あの時…慎悟が部屋を飛び出して行ったときの事が忘れられないの。

私...寂しかったんだよ。

慎悟に置いてかれて一人で寂しかったんだ。

悲しくて…淋しくて…心細くて…

私の中空っぽになっちゃったんだよ。

雅史君が言うように、慎悟の所に戻ることも出来るのかもしれない...でも、これも私の意地なんだ。

何の意地かは分からない…。

でも慎悟がいなくなってから、私はこの意地で立っていられるの。。

サヨナラ雅史君。


―サヨナラ慎悟―


真弓と恵里は部屋には入らず、カウンターの所で待っててくれた。

『ごめん。遅くなって』

『いいって!行こ!』

私達はカラオケに来ると、決まったパターンがある。

…暗黙の了解っていうのかな・・・

恵里が一番に歌う。

恵里が最初に歌う歌は決まっている。


―いつも恵里が歌っているのに、今日はその歌が滲みた。

―昔の歌、恵里がいつも歌うから覚えた。


―恋すると.苦しくて.諦めようとするけれど.ツボミのまま、この思い摘むなんて出来ない.またいつか会いたいね.でも,もう二度と会えないね.サヨウナラ…―


...涙が出ちゃう...

その時、真弓が自分のハンドタオルを渡してきた。

『梓..泣いていいよ,私ら側にいるから』

体の力が抜け涙がどっと溢れた。

私は泣いた。泣いて..泣いて..泣きまくった。

真弓も泣いてる…

恵里も泣いてる…

私のために泣いてくれてる…


―ありがとう。


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