第15話: 大好きだよ。
二人駅に向かってあるいていると、慎悟の携帯がなった。
『はい。…そんなん無料だっつうの!』
…?何だろう?
電話はすぐに切れた。
慎悟は言いずらそうに
『俺の連れが梓の事見たいって…さっきいた茶店に連れてきてって…梓が嫌ならいいんだけど…』
『…いいよ!行こ!私も慎悟の友達見たいし!』
『ごめんなぁ・・』
『気にすんなって慎悟』
慎悟の口調を真似て言ってみた。
『おっ!なかなか言うようになったなぁ』
『ふふん。』
やっぱり慎悟といると楽しい。
―慎悟に案内され茶店に向かった。
駅の商店街に入り、細い路地に入った。昼間なのに少し薄暗い...こんなとこがあるなんて知らなかった。
路地沿いには夜になると開店するんだろうと思う店が並んでいた。
そこに一件小さな喫茶店があった。
《モカ》と書かれている看板が立っていた。
慎悟はその店に入り私も後に続いた。
中にいたのは金髪や坊主や店の中なのにサングラスをはめた人など…十数人いた。
慎悟もそうだけど...こんな姿で学校に行くの?っと思う人ばかり・・・
みんな慎悟の友達だ。
朝、駅であった雅史君もいた。
『梓ちゃんのお出ましぃ〜』
雅史君だ!
『梓ちゃんこっちおいで!俺の隣座んなよ!』
『俺の隣も空いてるぞ!』
みんなそれぞれに言う。
『梓はこっち!』
慎悟に言われ慎悟と一緒に並んで座った。
『チッ!慎悟ばっかいいとこ取りかよっ』
『俺の女だっつうの』
みんな笑っている。
私は分かっている。 私を口説くように言っているが、本当はみんなそんな気なんか全然ない。
俺らが口説きたくなるような女を連れている…
みんな慎悟を祝福しているんだ。
そんな事勿論慎悟も分かっている。
慎悟は良い友達が沢山いるんだ。
慎悟はみんなに慕われているんだ。
そんな慎悟の彼女になれた事を思うと鼻が高くなった。
周りを見ると十数人いる男の中に一人のヤンキーな女の人がいる。
雅史の隣に座り親しそうに話している。
雅史の彼女だ!直感した
とても綺麗....
茶色く染めた長い髪。
バッチリ決めた化粧。
制服を着ていなかったら、とても高校生には見えない。
私がとても子供に感じた。
きっと慎悟の周りにはこんな綺麗な女の人達がいるんだ。
慎悟は周りから慕われてて、私は鼻が高い。
でも慎悟は本当に私でいいの?
―不安になった。
私と慎悟はランチを食べると店を後にした。
『梓ちゃん、また俺らとも遊ぼうね』
『うん』
挨拶代わりだと、私は笑って言った。
店を出ると
『お前あんなとこで愛想振りまかなくていいの!軽く流しといたらいいんだよ!』
『うん。ごめん』
『分かったらよしっ』
また私の頭をぐちゃぐちゃにした。
慎悟はきっとヤキモチ焼いたんだ。
嬉しい。
慎悟も私の事好きでいてくれてる。だから一緒にいるんだよね。
慎悟を信じよう。
―慎悟の部屋に着き、私は気になっていた雅史君の彼女だろう人に付いて聞いた。
『今日モカにいた女の人雅史君の彼女?』
『レナの事?』
レナって言うんだ。
『レナは雅史の女、あいつら中学ん時から付き合ってて… もう4年ぐらい経つのかなぁ…それがどうかした?』
『綺麗な人だなぁって思って』
『そうかぁ...俺は梓の方が可愛いと思うけど』
『可愛いと綺麗は違うの!…なんか大人だなぁって』
『そらそうだろ!梓より二つも上だし…』
なんだか私の言いたい事が伝わってない気がする…
『…でもレナはすげぇよ!雅史ってカッコイいじゃん!だから女とか嫌ってほど寄って来るわけ...断ることもあったけど…誘惑に負けちゃう時もあってさぁ。。。』
『浮気って事?』
『そう。それも一回じゃないなぁ・・・でもレナは常に雅史が戻ってくるの待ってたんだよ。まっレナも気が荒いから黙って待ってた訳じゃないけどな』
笑いながら話してくれた。今笑って話せるってことは、今は大丈夫ってことだろう。
私は勝手にそう解釈した。
『しかもあいつ、俺らと一緒のアホ校行ってるけど、実はめちゃめちゃ頭いいの!中学ん時から俺らと一緒に馬鹿やってたのに、何故か勉強は出来てさぁ。もっと上の高校だって余裕で行けたのに...あいつ、俺らと一緒の高校行ってんの!』
『なんでなんだろう・・・』
『決まってんじゃん!雅史と一緒にいたいからじゃん!』
『凄いね。親は何も言わなかったのかなぁ』
『…そらうるさく言われただろ?あいつ、俺らには何も言わなかったけど…』
『雅史君にも…?』
『言うどころか、雅史には
「別にあんたと一緒にいたいからあの学校選らんだ訳じゃないからね!調子に乗らないでね!」
だって!そんな事言ってても分かるけどなっ』
レナさんてカッコイい。きっと雅史君の重荷にならないように気を使ったんだ。
その時、慎悟の携帯がなった。
『おっ啓太じゃん』
『啓太?』
『由希の男だよ!梓ちょっと待ってて』
私に断りを入れ電話にでた。
『啓太かっ!どうした?』
話しの内容まではわからないが、啓太の声が電話から洩れてる。
啓太と話していると、慎悟の声が変わっていった。怒りが混じった声。
『今、由希も一緒にいるのか?俺今からそっち行くから』
慎悟は電話を切り、私に向き直した。
『梓、今日何かあった?』
....なんだろう。
『何もないよ!』
一瞬、敬がよぎったが、まさかと思いシラをきった。
『俺今から啓太のとこ行くから、梓送ってくわ』
只ならぬ感じがした。
いつもは歩いて送ってくれるのを、今日は単車で送ってくれた。
『また連絡するから』
と残し凄い勢いで行った。
―夜になっても慎悟からの電話は来ない。
どうしたんだろう。
その時、電話が鳴った。
慎悟ではなかった。
由希ちゃんだ。
さっき慎悟が電話してた時、由希ちゃんの名前が出てた。由希ちゃんなら何か知ってるかも…と思い電話に出た。
『あずさちゃん?』
由希ちゃんのいつもの明るい声と違った。
芯はしっかりしているものの…少し声が震えてた。
『どうしたの?』
『…今日の帰り駅で敬と話してたよね?』
『―えっ?』
見られてたの?
『私、啓太と駅で待ち合わせしてて…そしたら…敬と梓ちゃん話してるの見て…』
『…うん。』
見られてたんだ。。。
『啓太が梓ちゃん達のとこ行こうとしたんだけど…私止めたの…ただ話してるだけだよって! …でも敬が行ったあと梓ちゃん……泣いてたよね…?』
『……』
『気になって、私達梓ちゃんのとこに行こうとしたら、慎悟さんの姿見えて…行けなかった。』
『……』
私は何も言えなかった。
『でもね!…梓ちゃんが泣いてたの凄く気になったの…。 梓ちゃんと敬引き合わせたの私だし…。 慎悟さんも泣いてたの知らない感じだったし…。』
『…うん。』
『その後、啓太がキレちゃって…』
『…え!なんで!?』
『啓太、慎悟さんのこと凄く慕ってて…その慎悟さんの彼女が他の男に泣かされて…でも慎悟さんはそれを知らないから…』
『…うん…』
『…私止めたんだけど…啓太が慎悟さんに伝えるって電話したの…』
…それで慎悟怒ってたんだ…
『…慎悟…由希ちゃん達のとこ行ったんだよね?』
『…うん。』
『今もいるの?』
『…それが…今飛び出して行っちゃった』
『どこいったの!?』
『…多分…敬のとこ…』
『敬の…とこ?』
『…うん。慎悟さん凄く怒ってて…多分敬ヤバいよ。私.直接は見たことないけど…啓太が言ってた。…慎悟さん怒らせるとマジやばいって!』
『…啓太くんは?いるの?』
『慎悟さんが飛び出して行ってから、啓太…雅史さんに電話して…啓太も出てった』
由希ちゃんが泣いてる。
私のせいで、みんなを巻き込んでる。
『由希ちゃんごめん!』
私は一方的に電話を切り家を飛び出した。
『出かけてくる〜!』
『ちょっと!梓〜』
母の目に私が映る前に家を出た。
こんなとこで捕まってる場合じゃない!
話しは後で聞くから…
どれだけでも聞くから…
今だけは許して…お母さん…
私は夢中で慎悟の家に向かっていた。
夢中過ぎて分からなかった。家に行っても慎悟はいない。
今じっと慎悟を待つことも出来ない…
でも、慎悟の居場所が分からない…
私は行く宛もなく歩いた。
『ねぇねぇ。俺らと遊び行かない?』
横を見ると、原付に二人乗りした知らない男。
勿論、無視。今相手してる場合じゃない。
『無視しないでよぉ。遊び行こうよぉ』
急に怒りが込み上げた。
『うっせぇんだよ!てめぇらの相手してる場合じゃねぇんだよ!』
原付の二人組はブツブツ言いながら去っていった。
早く慎悟を見つけたい!
きっと慎悟は傷付いてる。
私からじゃなく他人から今日の事を聞いた。
それは慎悟が最も嫌うことだから…
分かってたのに…
そんな事分かってたのに…言えなかった。
慎悟にあって謝りたい。
『彼女〜俺らとは遊び行かな〜い?』
またかよっ! ?俺らとは?馬鹿じゃねぇの!
『いかねぇっ……』
顔を上げてビックリ!
『慎悟!』
単車に乗った慎悟と雅史君だ。
『梓やるなぁ。ナンパ男を追い払うとこ見てたぞ!これで俺も安心だ!』
『梓ちゃんこぇぇ!』
慎悟も雅史君も私の気持ちも知らないで、呑気だ!
とりあえず私も単車に乗った。無理やり三人乗りだ。
雅史君を送って行った。
雅史君が単車を降りると私を呼んだ。
何だろうと思い慎悟の顔をみた。
『…行ってこい』
私は単車を降り雅史君の所に行った。
『梓ちゃん。今日の事だいたい分かってるよね?』
『…うん』
慎悟には聞こえない小さな落ち着いた声。
『慎悟の事責めないであげてね』
『責めるなんて!…私が悪いから…』
『梓ちゃんは悪くないよ!慎悟も悪くない!…男と女やっぱいろいろあるじゃん!自分の女が泣いてるのはやっぱりほっとけない。特に俺らみたいのは、言葉で上手く言うのは苦手なんだよ!
だから今回の慎悟の事許してあげて!それに...あいつ(敬)泣いて謝ってたし(笑) 』
『…うん。ありがとう。雅史君もごめんね。迷惑かけちゃって…』
『そんな事はいいよ。親友の事だしさ!親友が傷付いてる時、その親友の彼女が傷付いてる時…やっぱほっとけない…
でも俺が行かなかったら、敬って奴死んでたな!』
『えっ!?』
『慎悟一度キレると収まんないから…で、いつも俺が止め役ってこと!でもまぁ、慎悟の勢いに最初っからビビってたから…』
『そうなんだ…』
『…梓ちゃん…辛い思いしたんだね。』
優しい言葉に緊張の糸が切れた。
泣けてきちゃうよ・・・
『梓〜!』
慎悟が呼んでる
『多分今日の事慎悟は言わないと思う。梓ちゃんの事も聞かないと思う。だから俺が代わりに伝えたから…』
『ありがとう。雅史君。』
『仲良くするんだよ』
雅史君に手を振り慎悟の元に行った。
『なげぇよ!雅史と何話してたんだよ?』
分かってるくせに
『ちょっとねぇ』
私は誤魔化した。
私は単車にまたがり、走り出した。
『慎悟はいい友達持ってるね…』
『何!?聞こえない!』
『なんでもない!』
慎悟を掴む腕が強まる。
慎悟が懐かしい…。
数時間前まで一緒にいたのに…ずっと会ってなかったような…
そのまま私は家に送ってもらった。
『…慎悟…ごめんね』
慎悟は何も言わず、バイクにまたがったまま、私を抱き締めてくれた。
『梓、おやすみ。また明日なっ』
『おやすみ、慎悟。また明日ね』
凄く長く感じた1日…
慎悟。慎悟。
ずっと一緒にいようね!
―大好きだよ―