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第14話: 涙

私は咲美に処女じゃなくなった事を報告した。

咲美は興味津々にいろいろ聞いてきたが、私はまだ慎悟に罪悪感を感じていて、咲美の話しに乗れなかった。

『ところで、咲美は例の彼とどうなったの?』

私は話しを咲美に変えた

『そうそう!彼とメールしてるんだ!』

『良かったじゃん♪』

彼の名前は祐介。

咲美が駅で待ち伏せをして声を掛けたらしい。

で,すんなりメアド交換・・・って感じで仲良くしてるみたい。

咲美の楽しそうな話しを聞いたら無性に慎悟に会いたくなった。

あのとき、慎悟は胸の中の思いを私に言えずにいた。

私が泣いたせいで、慎悟はあれ以上私に聞けなかったんだ。

慎悟は我慢したんだ・・・

慎悟が離れて行きそうで怖い。

慎悟が遠くに感じるよ・・・

一緒にいないと余計遠くに行ってしまいそうで不安だ。

慎悟の顔を見てないと不安だ。

会いたい。会いたい。会いたい。

気づけば慎悟に電話してた。

『はい』

『慎悟?今何してるの?』

『何もしてないよ。テレビ見てた。』

慎悟は普通だった。

その普通が私の不安を一層不安にさせる。

『……』

『梓どうかした?』

優しい声。

ずっと慎悟の側にいたい。慎悟の表情を一つ一つ見ていたい。

『今から会える?』

『いいよ。おいで。』

私は急いで慎悟に会いに行った。

『梓早いじゃん!』

『でしょう!』

やっぱり慎悟は普通だった。

二人でテレビを見ながら、ゆっくり過ごした。

慎悟はもう私にあの話しはしないつもりだろう思った。

敬との事、慎悟には話したくないはずなのに、今は聞いてほしいと思ってる。

今なら話せる。

慎悟には話せる。

今の私と慎悟の間には溝を感じる。

一緒に居ればなくなると思った不安もなくならない。

体が触れ合うぐらいにそばにいるのに、慎悟が遠い…。

敬との事を言えばこの溝がなくなることは分かってる。

だから言いたい。

だからお願い。もう一度私に聞いて。


慎悟は聞かなかった。

二度と聞こうとしなかった。


それからも慎悟は普通だ。もう何も思ってないかのように。

私も自然と不安を忘れ、毎日慎悟と電話し、毎日慎悟と会った。

毎日慎悟と体を重ねた。



 とうとう、夏休みも終わった。

この夏休み敬といろいろあったが、そんなことも忘れるくらい慎悟でいっぱいの夏休みだった。



私と慎悟は一緒に学校に通うことにした。

家近いから最寄りの駅も一緒。

学校近いから降りる駅も一緒。

だからこれからは一緒に行くことにした。

夏休み終わって初めての学校。

私はいつもより早く家を出て慎悟の家に向かった。

少し道は反れるが、自宅から駅までの間に慎悟の家がある。

時間的にもそう変わらない。

いつもどうり窓から慎悟の部屋に入ると慎悟はもう用意を済ませていた。

『梓おはよ!』

初めて見る慎悟の制服姿。 改めてカッコイい・・・

『おはよぉ』

慎悟の家から駅まで歩いて10分程度。

私達は駅に向かった。

制服姿で初めて並んで歩くことがすごく新鮮だった。

慎悟なのに慎悟じゃないみたい…

初めて会った感覚に似てる。


駅に着き電車が来るまでまだだいぶ時間がある。並んで駅のベンチに座った。

『今日の梓喋んねぇなぁ』

『なんかいつもと違うから…』

『何!?梓緊張してんの?』

私をからかうように言った。

『うるさい!』

いつもの感じに戻った。

キツ目な言葉で言い合いながらも、ジャレ合っているような・・・

『慎悟〜』

誰だろう…?

声のする方をみると慎悟と同じ制服を着た男の人だ!

『雅史かぁ』

この人が雅史君か!

 慎悟の親友雅史だ。

『珍しっ!慎悟今日は朝から学校?』

『うっせぇよっ』

『って、この子が噂の梓ちゃん?』

私は恥ずかしかった。でも嬉しかった。

親友に私のこと話してくれてたんだ。

『梓ちゃん可愛いねぇ 慎悟なんか止めて俺と付き合わない?』

冗談だってすぐ分かった。

『雅史!こいつすぐ本気にするから!』

『ちょっと慎悟!』

私はそう言いながらもこれも冗談だって分かった。

こういうノリなんだ。

『でも噂どうり可愛いじゃん!梓ちゃん俺らの学校で噂んなっててさぁ』

『…え?』

信じられない。中学まで地味で可愛いなんて言われた事のない私が他校で噂になってるなんて・・・

『マヂで!〇〇校の一年で可愛い子いるって!…で、ぶっちゃけ言うと、朝から学校なんて来たことない慎悟が梓ちゃん見たさで.早起きして電車乗ってんの!』

『雅史やめろって!』

雅史君は慎悟に目を向け、笑いながら話しをつづけた。

『で、梓ちゃん見て一目惚れって訳』

慎悟は恥ずかしそうだが私は嬉しい。

『もう雅史あっち行けって!』

『はいはい。邪魔者は退散いたしやす』

雅史は慎悟の方を見て、にやけながら歩いて行った。

『ごめんな。あいつ朝からテンション高すぎ…ってかマヂ恥ずかしいんだけど』

『…私は嬉しかったよ』

今の私は、こういう事を素直に慎悟に言えるようになっていた。照れを隠すように、慎悟は私の頭をくしゃくしゃっとした。

『もう!止めてよ!ぐちゃぐちゃになるじゃん!』

『そうかぁ?最初からぐちゃぐちゃじゃねぇ?』

『もうっ!』

そうこうしていると電車が来た。

さすがに朝のラッシュ。人がぎゅうぎゅうに詰まってる感じ。

私は扉の端に立ち、慎悟は私を囲うように私達は向き合って立った。

隣の車両を見ると雅史と同じ学校の人だろう人達がガラス越しにこっちを見て笑っている。

慎悟は知らない振りをしているんだろう。

私が慎悟から目を反らし周りを見ると、同じ車両の離れた所にミホの姿を見つけた。

一瞬ミホと目が合い、私が手を振ろうとしたら、ミホは目を反らした。

…?気付いてないのかなぁ。ただそう思った。

私達が乗ってる電車は高校生がとにかく多い。

私が通ってる高校。

慎悟が通ってる高校。

あと三つの高校が同じ市内に固まっている。

だから,大抵同じ時間の電車にみんなが乗るため、私と同じ制服を着た子も沢山いる。

一旦降りる駅に着いた。

今から私は学校までバスに乗る。

慎悟の学校は私が乗るバスからでも行けるが、大抵の人は電車を乗り換えて行く。

今日の慎悟は私と同じバスに乗って行くそうだ。

このバスに乗るのはほぼ私の通う学校の生徒。

ただでさえ目立つ慎悟が浮いて見えるのは仕方ない。

私達はバスの後ろの席に座った。

前を見るとミホの姿がある。

ミホはこっちを見ない。私もバスの中の人混みを掻き分けてまで、ミホの所に行くことはしない。

どうせ降りる場所は一緒だし…

今日は始業式だけだから早く終わる。

帰りに連絡を取り合う約束をして私は慎悟より一足先にバスを降りた。

…ミホの姿はない。

先に行っちゃったのかなぁ…

 教室に入るとミホはクラスの友達と仲良く話していた。

『ミホおはよう!久しぶりだね』

『…おはよう』

何かミホが素っ気なく感じた。

・・・気のせいだよ。

席に着くと私は積極的にミホに話しかけた。

『朝電車一緒だったの気付かなかった?』

『…気付いたけど…一緒に居た人梓の彼氏?』

『そうだよ!ミホに言わなかったっけ?夏休み中に出来たんだ』

『…良かったじゃん』

軽い返事。 今日のミホ感じ悪い。

私はミホと話す事を止め前を向いた。

その時、

『梓ちゃ〜ん』

由希ちゃんだ!


『あっ!由希ちゃんおはよう。』

クラスがざわついた。

由希ちゃんが私達のクラスに来たことがないし、私に話しかけてることに(?)だったんだろう。

多分いつの間に友達になったの?って感じだと思う。

『おはよう。ちょっと梓ちゃん慎悟さんと付き合ったんだって?』

『うん。そうなんだ♪』

『慎悟さんから彼氏に連絡あって付き合ったの聞いたんだ!梓ちゃんいいなぁ。あんなカッコイい彼氏がいて』

『由希ちゃんも彼氏と仲良くしてるんでしょ?』

『まぁ〜ねぇ〜。仲良くっていうか、腐れ縁って感じかな』

そう言いながらも好きなんだろうなって感じた。

『もうすぐ始業式始まるね!梓ちゃん一緒に行こ』

『うん』

私は由希ちゃんと体育館に向かった。

ミホがどうしたかは知らない。

急にあんな態度取られて私も気分悪いよ!


久しぶりにミホと会ったのに、結局今日は朝以来話さなかった。

午前中で学校は終わり、私は慎悟に電話した。

慎悟はもう終わってるらしく、朝バスに乗った駅で私を待っててくれてる。

私はミホに対して気分悪いまま慎悟の待つ駅に向かった。


駅に着き慎悟に電話した。

『今近くの喫茶店にいるから、そこで待ってて!今から行くから』

慎悟を待っていると、バスが来た。

中からは同じ学校の生徒が沢山降りてきた。

その中にミホの姿があった。

クラスの子と一緒だった。ミホは私に気付き、こっちを見たがすぐ目を反らし、私の前を素通りしていった。

私は何がどうなったのか分からない。

私がミホに何かしたの?

考えたが何も思いつかない。

ここまで態度を急変されると、気分が悪い。

ミホに対し怒りが込み上げる…反面かなり凹む・・・

早く慎悟来ないかなぁ。。。

横を見ると今私が最も会いたくない人が歩いてくる。

敬だ・・・

学校の友達と三人でこっちに歩いてくる。

私は下を向いた。

( お願い早く通り過ぎて! )


一人が私の前で立ち止まった。それに続いてあと二人も私の前に止まった。

私は下を向いていたため足しか見えない。…でも私の前で止まったのは 「敬」

だって分かった。

....私は前を向いた。

敬が奇妙な笑みをしながら私を見てる。

『先行ってて』

あとの二人は駅に向いて歩いて行った。

『梓ちゃん久しぶりだね』

その言い振りは、一時感じた優しい敬ではなかった。

笑ってはいるが、どこか冷たく、私を見下し、嘲笑うような感じだった。

『…久しぶり』

敬が怖い・・・

そんな私の気持ちを感じとり、楽しむかのように話し出した。

『梓ちゃんもしかして処女だったの?』

馬鹿にした言い方・・・

『……』

『梓ちゃん帰っちゃってからシーツに血付いてたから、俺びっくりしたんだけど!』

こんなとこで言わないで!

私は恥ずかしくてまた下を向いた。

『梓ちゃん遊んでる風だから、俺絶対ヤラせてもらえると思ったんだけどなぁ。。。残念だったよ。俺優しくするから、今度ヤラせてよ!?』

敬は笑いながら去って行った。

あの時、私が優しいと感じた敬は嘘だった。

少しでも私の事を好きでいてくれてると思ってた。

それも嘘....

私は悔しくて、髪の毛で顔を隠し下を向いたまま泣いた。

あんな奴のせいで慎悟に嫌な思いをさせてしまった。

敬との事で私達の間に溝が出来たと思った。…でも,一瞬でも敬と私はお互い好きだったんだと思うと ...仕方ない...と思えた時もあった。

でも、それもこれもすべて嘘だったんだ。

私は騙されたんだ。

敬はただ私とヤリたかっただけだったんだ。

…そんな事で慎悟を傷付けたんだ…

悔しくって悔しくって、私は大粒の涙を零した。


もうすぐ慎悟が来る。

泣いてるとこ見られたら、また慎悟に心配かけちゃう。

ハンドタオルを鞄からだし、涙を拭いた。


『梓〜』


『慎悟!』

『ごめん待った?』

敬と会って時間を長く感じたが、実際はそんなに経ってなかった。

『んん。待ってない』

『…ん?梓泣いてた?』

『えっ!?』

バレた?

さっきまで泣いてたんだから目は真っ赤で腫れてる。分かるはずだ。

『泣いてないよ!コンタクトズレて痛くてさぁ』

『そっか大丈夫か?』

『もう大丈夫!』

『ブサイクな顔が一段とブサイクだぞ!梓ちゃん↓』

『もう!うるさい!』


良かった!敬といたとこを見られてなかったんだ。

私達は駅に向かって歩き出した。


 …でも、私は気づかなかったが、敬との一部始終見ていた二人がいた。

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