第12話:私は変わる
慎悟に家まで送ってもらった。(実際には家の近く)
玄関のドアを開けるとき、さっきまでの幸せが嘘かのように気分は沈んでいた。
時間は21時。母がどんな顔して待っているか…。
『…ただいま』
『あずさ〜っ!ちょっと来なさい』
ほらきた!声で分かるくらい母の怒りは頂点に達していた。
『こんな時間まで何してたの!?』
『…ミホと遊んでて…遅くなった…』
『嘘言わないの!あんたの帰りがあんまり遅いし、連絡とれないし、お母さんミホちゃんに電話したんだから』
ヤバい!今日のことミホに言ってないし、ミホが急に話し作れるはずかない。 ミホと遊んでないことは分かっているんだ。
『あんたいったいこんな時間まで何してたの?』
『…』
言い返せない。
言い返す嘘が思いつかない。
どうしたらいいんだろう。そう思いながらも私の中に母に対する怒りが込み上げてきた。
何故夜遊びに行ったら駄目なの?
何故そんなに縛られなきゃならないの?
私の怒りも頂点に達した。
『どうでもいいじゃん!ほっといてよ!』
そう言って自分の部屋に飛び込んだ。
初めて母に言い返した。
初めて母に反抗した。
今まで母に反抗したくても出来なかった。母が怖くて。
私は母に言い返したことで満足感を感じた。今まで私の前に立ちはだかっていた大きな壁を壊せた感じだ。
母が怖くて私は今まで自分を我慢してたんだ。
こんな意地っ張りになったのも、自分を素直に出せなくなったのも全部母のせいだ。
これからは母に縛られた生活なんか嫌だ。
私はその日から母対して、反抗する気持ちだけしか持たなかった。
慎悟と付き合った喜びを一番に咲美に伝えた。
『梓良かったじゃん!私の言ったとうり男なんてすぐ見つかったでしょ?』
『ですねぇ。』
私の喜びを一緒に感じてくれた。
『咲美はいないの?』
『何が?』
『好きな人とか…』
『…気になる人ならいる』
『本当にぃ〜!?どこの誰?どんな人?連絡とってるの?』
『梓落ちついて!』
最近は私の男話しばかりで、咲美の男ネタはなかった。
昔は良く好きな人の話しをしたけど、付き合うとかいうのはなかったし、考えてもいなかった。好きだけで満足してた。
でも今は、私には慎悟という彼氏がいる。咲美にも早く彼氏が出来てほしいと思う。
『毎朝駅で見かける人なんだ。私服でいるから学校には行ってないと思う。仕事をしてるんじゃないかなぁ。まぁ私の一目惚れだね』
咲美はかなりの面食いだ。咲美が一目惚れするくらいだからカッコイい人だと思う。
『連絡とってるの?』
『そんなっ!話したこともないよ』
『電話番号聞いてみたら?』
『そんな事できないよぉ』
『そんな事言ってたら前に進めないよ!待ってるだけじゃ駄目!自分から行かなきゃ』
私は敬のときに素直になれず後悔した。 もし初めて会ったとき自分の気持ちを素直に言えていたら、敬とあんな終わり方をしなかったんじゃないか・・・と後悔したから、咲美には後悔してほしくなかった。
『断られたらどうしよう』
『自分の気持ち言って断られるのは仕方ない。でも伝えないまま終わるのは後悔するよ。きっと…』
『…だよね。そうだよね!私明日いつもの駅行ってみる!仕事ならいるかもしれないし』
『頑張れ!咲美!』
『ありがとう梓。私頑張るね』
ウジウジしてたって駄目。自分から前に進まなきゃ。咲美に言いながら自分に言ってた。
私は後悔しない。
私はウジウジ考えない。
私は強くなるんだから。
…私は変わった。