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アウラの銀糸

作者: 三俣優哉

初投稿作品なので至らぬ点もあるでしょうが楽しんでいただければ幸いです。


 それは遠い遠い昔、星が空を巡り、大地がまだ平らだった頃。


 人の世に生きる誰にも知られぬ場所に、人間と神様が共に暮らす国がありました。


 人間と神様はとても仲が良く、その国は只の一つも争いが起きることの無い、笑顔と約束された繁栄に満たされた夢のような国でした。


 しかし、世にある物に永遠は在りません。永きに渡る平和は軋轢を生み、何時しか心の停滞を生み出しました。

 人間と神様の間には深い溝が生まれ、触れ合う事を忘れた彼等は互いを嫌うようになりました。


 国は二つに、心は幾億に。

 進む方向を違え、散り散りになったそれは、空に浮かぶ孤独な星の様でした。



 そして時は巡り、大きな力に流されるように二つの国は争いを始めました。

 金属の音が響く度、強い光が瞬く度、多くの命が淡い灯のように消えていきます。


 暗く冷たい、陽の届かないような争い。

 人間と神様の心はその中で光を失い、疲れ果てていきました。


 ですが、全ての者が光を失った訳ではありませんでした。

 争いを遥かな場所から見つめる少女、彼女の瞳には確かな光が映っていたからです。


 少女の名はアウラ、人間と神様の間に生まれた美しい半神です。 

 糸を紡ぎながら小さな家で暮らす彼女はどうすればこの争いを終わらせる事が出来るのかをいつも考えていました。


 しかし、呼び掛ける声は誰の心にも届かず、手を取り合おうにもその手に握られたのは冷たい武器のみ。

 争いを止めるのは空で瞬く星を棒で叩き落とす事以上に無理があることのように思えました。

 そして何も出来ぬまま、ただ時間だけが過ぎていきました。


 そんなある日の事です、疲れ果てた人と神様が三日後に最後の戦いをするという話が二つの国に流れたのは。


 戦いの合図は月が空の頂点に達した時。


 恐らくは二つの国が同じ空を見る最後の時でしょう。


 アウラは深く考えました、人間と神様が同時に空を見る時、同じ場所を見て心が重なる時、二つの心を束ねる事は出来ないか。

 

 孤独になった星々を繋げる事は出来ないか。


 アウラは寝る間も惜しんで悩み、最後の朝に一束の銀糸を紡ぎました。

 美しく淡い、月のような光を放つ銀糸。

 それにはアウラの想いと、星と星を繋げる魔法が込められていました。


 そして戦いの夜、戦いの合図である月が頂点に達しようとした瞬間。

 アウラが想いを託した美しい銀糸は空へ舞い上がり、星と星を繋げ、空を見上げていた人間と神様の心すらも繋げました。

 それは奇跡と呼ぶに相応しい光景。


 彼等は武器を捨てると互いの手を取り合い、笑いあったそうです。


 国は元通りに一つになり、穏やかな平和が戻りました。


 人々は空に浮かび上がった奇跡に名を付け、何時までもこの日の事を忘れないようにと、

様々な物をかたどり星と星を繋ぐ糸に名前を付けました。

 彼等はそれから争う事は無く、今もその国はこの世界のどこかに在り続けているそうです。


 ところで、その国では他の場所では決して見えない星座が在るそうです。


 え?名前?それは……。



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